「Rakuten AI Platform」導入から1年。 楽天のAI活用最前線

現在、世界中でビジネスへのAI(人工知能)の活用が注目されていますが、楽天でも昨年の4月26日に「Rakuten AI Platform(楽天AIプラットフォーム)」が誕生して以来、本格的な活用を加速しています。今回は、楽天の執行役員であり、AI推進部を統括する茶谷 公之(ちゃたに まさゆき)へのインタビューをもとに、同プラットフォーム導入から1年を経て、楽天が取り組むAI活用についてご紹介します。

AI推進部が立ち上がったのは、2016年8月。当初2名体制でスタートしたのが、今では30名程のチームになっています。7割のスタッフがエンジニアで、13の国と地域出身という多様性に富んだチームは、楽天グループ全体でAIを商用利用できるよう導入することを目的としています。AI化のレベルについては3つのフェーズに分けられています。まずは、AIで「単純作業を自動化する」フェーズ。二つ目が、AIが社員やユーザーの「意思決定のサポートをする」フェーズ、そして三つ目が「コラボレーションをAI化する」フェーズです。

一つ目の「単純作業を自動化する」フェーズでは、汎用性の高いAIプラットフォームを創り、楽天グループ内で横展開できるようにしました。代表的なのが、楽天グループ内でもすでに「楽天市場」や「楽天モバイル」、「ケンコーコム」、「楽天トラベル」などで運用している、よくある問い合わせに対応する「Chatbot(チャットボット)」です。ログイン方法を教えて欲しい、配送状況の確認をしたい、ポイントについて確認したい、あるいは会員ランクを教えて欲しいなどといった質問に対してはチャットボットが自動回答します。

ユーザーのカスタマーサポートに対する期待値は高く、営業時間外の問い合わせのニーズも多いようです。しかし、人間は24時間働き続けることはできません。チャットボットであれば、単純な質問への回答に対して24時間365日即座に対応することができます。

チャットボットによるサービス利便性の向上

1年経った現在では、ユーザーが知りたい問い合わせの多くにチャットボットが回答できるようになり、ユーザーの利便性も大きく向上させることができました。代表的な例として、「楽天市場」の自動チャット対応機能「楽天市場お客様サポートセンター自動応答サービス」(以下、「自動応答サービス」)は、順次配送状況や楽天スーパーポイント等のお客様個々のお問い合わせに対応範囲を拡大しつつも正答率8割を維持しています。こうした「自動応答サービス」の正確性、効率性により、カスタマーサポート全体に対する「自動応答サービス」による問い合わせ対応率は、導入初期の約25%から3ヵ月後には5割以上となりました。

楽天執行役員、AI推進部ゼネラルマネージャーである茶谷 公之(ちゃたに まさゆき)

現在提供しているチャットボットは、FAQを情報源として、その中から一番近い答えを返しています。ユーザーの自然言語入力を分析、理解するための自然言語処理(NLPまたはNatural Language Processing)、対話制御が主に使われており、これらを支える技術として機械学習などが使われています。

次のフェーズでは、店頭販売員向けの教育マニュアルにあるような商品オススメの手順をAIに学習させることで、チャットボットが実際の販売員のような会話をし、ユーザーにオススメの端末やプランを提案できるようにします。二つ目のフェーズでは、このようにAIが顧客に勧める端末の選択などの意思決定のサポートをしてもらいながら、人はより戦略的な営業であったり、おもてなしの気持ちがこもったサービスをしたり、コンピューターでは識別できないようなユーザーからの要望を汲み取る仕事を担うことができるようにします。

そして、今後多くのAIが利用されていくと、複数のAIたちが協調してヒトのニーズを満たしていくということを想定し、三つ目の「コラボレーションをAI化する」の実現に向けた開発・検討も進行しています。

今後ますますAIが発展する中、楽天では、コンピューターが得意な単純作業などの部分はコンピューターを最大限活用しつつ、ヒトにしかできない創造性が求められるような部分はヒトの持つノウハウを最大限生かせるような開発が進められています。

2017年4月以降、AI(人工知能)が30以上の楽天サービスで活用されている

 

 

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