1996年にヤフー日本法人に第一号社員として入社し、ネット広告事業を立ち上げ常務取締役を務めた有馬誠。その後、グーグル日本法人の代表取締役も務め、ネット広告分野で長年の経験を持つ。現在は楽天の副社長執行役員CRO(Chief Revenue Officer)、および電通と共同で設立した新会社である楽天データマーケティング代表取締役社長として、楽天広告事業の変革・拡大を強力に進めている。そんな有馬が、楽天の広告事業の可能性と企業内チームコミュニケーションの重要性を語る社員向けイベントが初開催されました。

多くの社員が参加した講演で、有馬が語った楽天の広告事業やビッグデータとAI(人工知能)活用について、そして成長を促すチーム作りに対する考え方をご紹介します。

 

楽天のビッグデータを活用した広告配信

国内最大規模といわれる楽天のビッグデータ。有馬曰く、それは約9,900万(20189月時点)の楽天IDとそれに基づく分析データ、そして、「楽天市場」や「楽天トラベル」といった70以上ある楽天サービスのウェブサイトなどへのアクセス数といいます。国内における年間の総合ページビュー(PV)だけでも、世界的な検索エンジンや人気ポータルサイトなどに次ぐ規模であり、広告メディア媒体としても大きく成長しています。また、オンライン・オフラインのコマースに関わる、IDに基づく膨大な消費行動分析データは、世界的に見てもユニークで大規模なものとなっています。

楽天グループのビッグデータはどのように活用されるのでしょうか?有馬は、次のようにシンプルな例を用いて説明しました。「例えば、検索エンジンで“ペットフード”と検索するとします。検索連動型の広告は、その言葉を入力したユーザーに対してドッグフードやキャットフードの宣伝を表示します。しかし、楽天のデータが活用されると、そのユーザーが過去にどんな動物のペットフードを購入していたかなどの過去データを参照し、そのユーザーが必要とするペットフードの広告を効果的に表示することができます」

誘導先がより正確になることで広告効果は上がり、ユーザーにとってより有益な広告を提供することが可能となるのです。

楽天独自のSEM(Search Engine Marketing、検索エンジンマーケティングの略)のイメージ図。過去にユーザーがドッグフードを購入していた閲覧データをもとに、「ペットフード」という検索ワードに対しても、関連のある「ドッグフード」の広告が表示され、ユーザーが本当に欲しい情報を広告として表示する

 

楽天のビッグデータから、AIが広告を求める人を効果的に予測

楽天にしかできないデータ活用の効果的な例として、有馬はAIを活用した広告配信を紹介しました。

「2018年5月から始まった『Rakuten AIris(楽天アイリス)』は、楽天の約9,900万の楽天IDとそれに基づく消費行動分析データを活かし、対象商品の購買実績があるユーザー層の “購買傾向”、“価格趣向”、“楽天グループサービス利用傾向”など920項目にのぼるデータをAIが分析することで、今までその商品を購買したことのないユーザー層の中から購買の可能性のあるユーザーを抽出し、広告配信においてより精度の高い拡張ターゲティングを行うことができる『Target Prospecting機能』を有しています。

 

楽天が蓄積する膨大なデータから、920にも及ぶ項目を分析し、潜在的な「見込み顧客」を人工知能により予測する「Rakuten AIris」

また、この機能を活用して実際にユーザーに広告を配信する広告商品『RMP – Customer Expansion』を提供しています。従来の拡張ターゲティング配信のようなオンラインのディスプレイ広告だけでなく、メール型広告やオフラインにおけるダイレクトメールの郵送、サンプリング施策など、様々なチャネル(流入経路)を活用することができます」

楽天の広告事業の広告取扱高は2017年で約790億。楽天サービス内だけの広告のみならず外部への広告配信にもさらに力を入れ、「広告取扱高を2021年には2,000億にまで引き上げる」という事業目標を示しながら、有馬は楽天広告事業の特徴とポテンシャルについて語りました。

 

データよりも重要なのがチームの育成、「マネージしないマネージャー」が人を育てる

講演の後半には、様々な大企業で組織をつくり、人やチームを育ててきた有馬自身の経験を話しました。社内において役員であるにも関わらず、自分のチームや部署の社員とは定期的に昼食を社内食堂で共にしたり、“雑談会”と呼ばれるカジュアルなミーティングしたりしているのだそう。「普段、一緒に働いている仲間でも、仕事以外のことを何も知らないこともあります。忙しくとも、なるべくチームで互いを知る機会をもっと持ってほしい。タレントマネージメント、タレントを発掘できるようなインターナルコミュニケーションが大事です」と有馬は日常のコミュニケーションの必要性を強調しています。

「企業文化を育成することはビジネス戦略の一つです。人を育てることに関しては、マネージャーがマネージメントしてはいけません。マネージャーの仕事とは、周りの人間をサポートすることです。優秀な人材のアイデアを聞き、本人の自発性にまかせて仕事が進められるようにサポートする。そして、実現のための予算やリソースを持ってきたり、チーム内のコミュニケーションを円滑にしたりする。『あなたはどうしたいの?』と聞いてコーチングすることが、上司がとる理想的なコミュニケーションなのです。部下が自分で解決できるようにしてあげることが大事です」と社内チーム育成の鍵を語った後、有馬は参加した社員の一人ひとりに向けて以下のような激励を送り、スピーチを終えました。

「自分のやりたいこと、自分ができること、会社があなたにやってもらいたいことの3つの円を想像してください。この3つの円が重なるところで仕事をするのが一番ハッピーですよね。キャリアアップとは、この3つの円の重なる部分をより大きくしていくことです。そのためには、それぞれの円を大きくしていく必要がありますが、まずは『できること』を増やすことが最初です、やっぱり!」