“Rakuten Social Accelerator”成果発表会レポート(後編) ~社会、そして人々をエンパワーメントする楽天の試み~

2018年7月からはじまった「Rakuten Social Accelerator(楽天ソーシャル・アクセラレーター)」プログラム。楽天のテクノロジーやビジネスアセットを使い、様々なバックグラウンドをもつ楽天社員が集まり社会起業家と共に社会課題の解決に取り組むというもの。

教育、地方創生、障がい者の就職支援や途上国支援事業など、社会課題の解決に取り組む社会起業家6団体と楽天の有志社員による6チームが組成され、半年間に渡る協働作業が昨年スタートしました。

数々の熱い意見交換と試行錯誤を重ねた末、それぞれのチームが生み出した社会課題解決のカタチ。前編に続き、その集大成となる成果発表会「Rakuten Social Accelerator DEMO DAY」後半3団体の様子をお伝えします。

新しい学びのカタチ

「G-experience」代表の松浦 真氏(右から4番目と楽天チームメンバーたち)

「日本の小中学生で、年間30日以上登校していない子どもたちの数はおよそ10万人。欠席数が年に30日に満たない不登校傾向にある小中学生の数はおよそ33万人もいます。この子たちが『学校に行く』ことが解決策なのでしょうか」と、プレゼンの最初に子どもの不登校について問題提起したのは、「G-experience」代表の松浦 真氏。

「G-experience」 は2016年に設立され、秋田県五城目町にある廃校を拠点に新しい学びの場を提供しています。松浦氏が団体のミッションとして掲げるのは、子どもたちが場所、時間を問わず主体的に学ぶことができる「Learning & Working Anywhere, Anytime(LWAA)」を実現すること。学校以外に子どもが学ぶ選択肢が少ない現状を社会課題と捉え、学校以外で学ぶことのできる新しい学びの場と学び方を提唱し、学習する選択肢を増やすための活動をしています。

「ハイブリッドスクーリング」*と呼ばれる「遊ぶとき」と「学ぶとき」がミックスされた学習環境で、子どもの興味関心を大人がサポートして伸ばす新しい学び方があります。

*ハイブリッドスクーリング:年間30日以上、学校以外の地域やコミュニティなどで、 子どもたち一人ひとりがその興味や関心に応じて探究する新しい学び方(HPより抜粋)

今回の協働プログラムでは、「ハイブリッドスクーリング」のような「新しい学びの選択肢を増やす」という社会課題をテーマに共感した総勢11名の楽天社員によるチームが結成。一丸となって松浦氏の情熱を受け止め、共に解決策を考えました。

チームが注力したことは、「ハイブリッドスクーリング」を実践している人たちや興味のある人たちをつなげるコミュニティづくりでした。メンバーは秋田県五城目町にある校舎を訪れ、学習内容や環境などを現地で調査。楽天本社にて「ハイブリッドスクーリング」実践者同士が実際に会うことを目的としたタウンミーティングを開催し、各地に散らばる実践者同士のコミュニティづくりに尽力しました。

楽天本社で行われたタウンミーティングの様子

松浦氏は、協働期間の学びを生かして「ハイブリッドスクーリング」に対する理解をさらに広めるために、現在、学びの記録を共有する取り組みがスタートさせています。さらに多くの人たちが見ることができるように、家族全員が実践者である松浦氏の4年間、学校外1,400日分もの学びの記録を有料で公開するオンラインサロンをクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」内に開設しています

松浦氏は、「学校以外での学びの場を探している家庭に見ていただきたいです」と今後の期待を述べました。

食べて、読んで、生産者とつながる

「日本食べる通信リーグ」専務理事である江守 敦史氏(右から3番目)と楽天チームメンバーたち

私たちが日々食べる食材をつくる人たちのことを、私たちはどれだけ知っているでしょうか。

98.6%の消費者に対して、1.4%の農業、漁業、畜産業などの第一次産業に従事する生産者という割合を、「日本食べる通信リーグ」の代表理事である高橋 博之氏は最初に紹介しました。

高齢化により、農家や漁師の後継者不足の問題を抱える日本では、年金をつぎ込んで農業や漁業を行う高齢者も少なくないそうです。生産者の数が減少しているうえ、生産者と離れた都心に住む人たちは関わりが希薄なため他人事として捉えてしまう、と高橋氏は指摘。

「この両者に関わりが生まれ、食べ物をつくっているストーリーを知ることができれば人は動きます。食べ物をつくる素晴らしさ、美しさ、苦しさ、厳しさ、ストーリーに人は共感して動きます。他人事でなく、自分事として考えられるようになります」と同氏は語りました。

「日本食べる通信リーグ」の代表理事である高橋 博之氏

「日本食べる通信リーグ」は全国各地に編集長をたて、現地から生産者の生活や思い、地域の魅力を食べもの付き情報誌「食べる通信」として全国の読者に届ける事業を行っています。

「日本食べる通信リーグ」の専務理事江守氏は協働のテーマについて、「関心をもたず他人事と考える人たちに、興味をもってもらい、自分事として考えてもらうこと」と説明しました。

協働チームでは、市場調査・マーケティングリサーチサービスを提供する「楽天インサイト」の協力を得て、潜在的な購読者調査を実施。購読していない人にとって何がハードルとなっているのかの調査を実施した結果、「日本食べる通信リーグ」の認知と理解の不足、読者予備軍として農業に興味がある女性や食育に関心のある母親をターゲットとできる可能性を発見。

その解決策として、「食べる通信」で紹介された農家や漁師がつくる食材を使用しているレストランなどの飲食店にQRコード付きステッカーを店舗に貼ってもらうようにプロモーション活動を展開しました。その結果、新規ユーザーの9割がQRコードから流入するという効果が得られました。

(左上、左下)「食べる通信」で紹介された食材を扱うお店にはられたQRコード付きステッカー、(右上)全国各地の「食べる通信」、(右下)地域の食べ物や魅力を伝える動画コンテストを開催時のページ

さらに、Eコマースを強みとする楽天のノウハウを参考に、ウェブサイトを改修。旧サイトの流入経路は複雑であったため、購読への流れを簡単にするために商品選択、購入ページをよりシンプル化。ウェブサイトを、ユーザーにとってわかりやすいデザインにすることでUX(ユーザーエクスペリエンス:顧客体験)を高めることに成功しています。

最後に、半年にわたる協働作業について楽天社員でチームリーダーの奥野は、「食べる通信の人たちは思いがアツく、お互いぶつかり合うことが多くありましたが、そのおかげで生まれたアイデアがありました」と感慨深く振り返りました。

アフリカの未来を灯す

現在アフリカには54の国が存在し、一人当たり国民総所得であるGNI(Gross National Income)を比較した世界ランキング(2017年時点)では、その底辺をアフリカの多くの国が占めています。

「WASSHA株式会社」のCEO秋田 智史氏(前列左から2番目)と楽天チームメンバーたち

一方で、「アフリカにおいてインターネット利用率は劇的に増加しており、SNSやアプリによるシェアリングサービスが日常的に使われ、アプリによる送金サービスも一般的に利用されています。アフリカではモバイルによって様々なサービスが実現され、今までとは別の経済が発生しています」と紹介するのは、「WASSHA」のCEO秋田 智史氏。

世界には電気が通っていない未電化地域に住む人たちの数は約10億人いるといわれ、そのうち6割を占めるのはアフリカの国々なのだそう。携帯電話を利用する人は充電をするために、電気ステーションのある町まで徒歩で長時間移動する必要があるという、日本とはかけ離れた現実について秋田氏は語りました。

「WASSHA」は、タンザニアを中心に未電化地域に対して小規模な電気を販売するサービスを提供しています。村々にあるKIOSKと呼ばれる小さな売店に充電、LED電灯機材をレンタルすることで、最低限の電力を供給。現在、タンザニアを中心に1,000店舗(チャージステーション)があり、150万人ものユーザーに電気が届けられています。

「夜に光が使えることで出店などの商売が(夜でも)行えます。そうすれば新しい職と雇用が生まれるだろうという考えを持っていました。さらに何か始めたいと思っていたときにこのプログラムに出会いました」と参加の経緯について話す秋田氏

楽天チームとの協働テーマは、現在あるKIOSKを利用して様々なサービスを提供するサービスの土台をつくること。

「楽天市場」「楽天カード」をはじめ、モバイルやコンテンツ事業など70以上の様々なサービスを展開し、各サービス間のシナジーを生み出している「楽天エコシステム(経済圏)」を参考に、タンザニアを中心とした東アフリカ市場に「WASSHAエコシステム(経済圏)」を実現し、人々の生活水準向上に貢献するための土台を築くことを目標に掲げました。

日本とはかけ離れた市場とビジネスのあり方。その実態を知るために「楽天インサイト」のリサーチのノウハウが活かされ、現地の中心産業となる農業や漁業を営む人たちやKIOSKのオーナー、そしてタンザニア生活経験者などから、「物流網の非効率改善に着目した集中購買ビジネスモデルの実態調査」を行いました。

消費者の生活向上に貢献する経済圏構想として、現在チャージステーションとして利用されえているKIOSKを活用して、機材レンタルや充電サービスだけでなく、より効率化された物流や在庫管理のテクノロジーを提供し、現地消費者の必要とする生活品を豊富に販売するビジネスの可能性を検討しました。

楽天の多様な社員からは決済、法務、フィンテック、Eコマース、物流など、楽天の知を結集したモデル構築のコンサルティング支援が行われ、プロモーション用動画も作成されました!


楽天役員による総括

全6チームの発表が終わり、楽天技術研究所所長である森 正弥は「世の中を、社会を変えていこうという気持ちだけでなく、本当に問題解決のためにコミットするという覚悟、変えなければいけないという信念を感じました。企業が参加してテクノロジーを結集させることで、社会課題の解決に貢献ができると思います」とプログラム継続の必要性を語りました。

最後に、楽天のサステナビリティ部門を統括するCPO(チーフピープルズオフィサー)である小林 正忠は、「世の中を変えるには、結局、お金ではなくて人の想いがないと変わりません。想いをもった人が集まれば何かが始まる、しかし、その人たちが活躍するステージが必要です」と当プログラムの可能性を強調し、発表会の最後を締めくくりました。

Rakuten Social Acceleratorプログラムの詳細は、以下ページにてご覧いただけます!

https://corp.rakuten.co.jp/sustainability/social-accelerator/

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