2017年が始まりました。去年は「Pokemon Go」により、AR(拡張現実)技術を活用したサービスの体験が、世界中に広がった年になりました。今年はどのようなテクノロジーが広がっていくのでしょうか?

2016年10月に行われた「楽天テクノロジーカンファレンス」では、世界の様々な企業や組織のエンジニアや研究者、イノベーターなどの登壇者から、チャットボットやディープラーニング(深層学習)、オートメーション(自動化)など、2017年のテクノロジートレンドを予測する声が聞かれました。今回は、その概要をご紹介します。

ARVR

AI(人工知能)の活用について講演した、オンラインコミュニティーの心理研究を専門とするサイバー人類学者、メアリー・レイゼル(Mary Reisel)氏は、ARとVR(仮想現実)についても、次のように予測しました。

「ARとVRは、(2017年はゲームなどのほかに医療などの技術分野でも)さらに様々な場面で使われるようになると思います。ロボットも、社会の中でより活用されるようになり、社会や職場において徐々に受け入れられる存在になっていくかもしれません」

ソニー・インタラクティブエンタテインメント社のグローバル商品企画部担当課長で、昨年発売された「PlayStation VR」の開発を率いた高橋泰生氏も、VRは将来、テレビのように一般的なものになるかもしれないとコメントしました。

「ユーザーにとって、VRのヘッドセットを装着するハードルはまだかなり高いかと思いますが、装着すれば新しく素晴らしい世界を体験することができます。VRは、テレビやラジオのような一般消費者向けの新しい技術となる可能性を秘めていると思います」

ARやVRの今後に対する期待は高いものの、レイゼル氏は、2017年は新たな技術の開発が減速するかもしれない、とも発言しました。

「一部の分野における研究は、『新しさ』よりも『安全さ』を求める方向に進んでいくように思えます。企業間の競争は激しくなっているにも関わらず、テクノロジー業界の減速化とサイバー犯罪に対する懸念の広がりから、多くの企業がより慎重にならざるを得なくなっています。そのような状況を踏まえると、(スマートフォンなどで使われる)現在すでに一般的になっている技術や確実に来るとみられる技術を高めるための投資に、より力を入れることが必要となってくるでしょう」

「楽天テクノロジーカンファレンス2016」の会場で、VRを体験する参加者

「楽天テクノロジーカンファレンス2016」の会場で、VRを体験する参加者

ディープラーニング

東京工業大学の教授で、ヒューマン・コンピューター・インタラクション(HCI)について講演した小池英樹氏は、ディープラーニングのような技術は、ハードウェアの進化により2017年も引き続き進展していくと予測しました。

「色々なところで活用されるようになってきたディープラーニングは、将来的にさらなる汎用が見込める技術です。画像処理だけでなく、音声認識やサイバーセキュリティーなど、様々な分野で活用されるようになると思います。ディープラーニングは将来有望な技術ではあるものの基本的な技術は、私が学生時代に学んだことから、そう大きくは変わっていません。(現在)活用が広がっているのは、CPU(中央演算処理装置)の高速化やデータ保存容量の増加など、ハードウェアの進化に寄るところが大きいのです」

チャットボット

ボットは長年にわたりあちこちで使われてきた技術でしたが、ここ数年のメッセージングアプリの急速な普及により、ユーザー対応に適した技術活用として、昨年再び関心を集めることになりました。エンジニア経験がなくてもチャットボットを作れるツールをライターや企業に提供するDexter社の創業者でCEOのダニエル・イルコヴィッチ(Daniel Ilkovich)氏は、チャットボットに対する関心の高まりについて、自身の考えを述べました。

「コンピューターに、本当に人間のことを理解するよう教えることはできませんが、どんな反応が返ってくるかであれば、それなりの確実性をもって予測するように教えられます」

イルコヴィッチ氏は、業界の競争により今後、「自然言語」での命令を処理する能力を持つチャットボットは急速に次のレベルへ進むと予測しています。

「特にフェイスブックやグーグルは、自然言語でしのぎを削ることになると思います。グーグルはAPI.AIを、フェイスブックはWit.aiを買収しました。テクノロジー業界全般に言えることですが、競争によりチャットボット業界はより良くなるでしょう。自然言語処理にとっては素晴らしいことです」

音声コマンド起動端末

チャットボットだけでなく、イルコヴィッチ氏は音声コマンドのテクノロジーにとって、大きな年になると予測しています。

「音声コマンドで起動する端末は、品質と普及において実質的な拡大を迎えると思います。すでに人気ではありますが、(日本国外で販売されている、音声で起動するホームアシスタント端末の)EchoやHomeを持つ人は飛躍的に増加するでしょう」

オートメーション

オートメーションに関する専門家で、Chef社でプロダクトマーケティングのディレクターを務めるマイケル・ダシー(Michael Ducy)氏は、オートメーションが情報技術(IT)の世界をどのように変えるかを説明しました。

「ITの観点に立つと、現在のオートメーションのスタイルは、あと数年もすればもう古いものになると思います。オートメーションはOS(オペレーティング・システム)の複雑さを減らすためにますます使われ、最終的には方程式からそれらを除くことになるでしょう」

クラウド技術

ダシー氏はまた、クラウド技術とITにおけるリスクマネジメントについても自身の見解を述べました。

「組織はクラウド活用に大きくシフトしていくでしょうが、それにはリスクも伴います。企業は、データ漏えいは避けられないもので、クラウド技術を避けるよりも、ヘッジファンド投資のように、リスクも一部織り込んだ上でクラウドを構築することを受け入れるようになるでしょう」

「楽天テクノロジーカンファレンス2016」での講演

「楽天テクノロジーカンファレンス2016」での講演