学びを止めるな!「完全オンライン」新卒研修の舞台裏をレポート~HRテクノロジー大賞・特別賞受賞~

2020年4月、約700名の新卒社員が楽天に入社しました。

例年であれば、新卒社員は本社の楽天クリムゾンハウスで数カ月、楽天が創業から培ってきた文化やビジネスのノウハウから、データ・AI、コーディングに関するスキルまで、講習や実践研修などを通じて学びます。

しかし、今年の新卒社員の研修は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、楽天史上初めてとなる「完全オンライン」で実施することに。研修プログラムは、全編オンライン実施に向けて再構築することが求められ、新卒社員全員分のパソコンも急遽各自宅に郵送しました。

今回は、そんな楽天の「完全オンライン」新卒社員研修において、約2カ月間の準備と4月から3カ月間の研修実施から見えてきた課題と成果について、研修を担当するグループ人事部人材開発課のメンバーへのインタビューを通じてレポートします。


グループ人事部人材開発課より、(左)Yunjieさん、(中)Cerezo さん、(右)Prestonさん。
インタビューも「完全オンライン」で実施しました。

――今年は、新型コロナウイルスの影響を受け、新卒社員研修を「完全オンライン」で実施しました。実施形式については、2月末に最終決定したそうですが、どのような課題があり、その解決に向けてどのように準備していったのでしょうか。

Yunjie: 「完全オンライン」での研修は楽天としても初の取り組みだったので、まずはオフラインでできていたことを、どのようにオンラインで代替するかという課題について考える必要がありました。

例えば、オフラインであれば、出社時に個々のカードをタッチしてもらい勤怠管理を行っていましたが、オンラインではどうするか、このようなご時世ですので日々の体調確認も大切になってきます。また、学習の進捗管理や新卒社員同士の交流方法についても、検討が必要でした。

そのため、準備にあたり研修チームも、①勤怠管理、②受講管理、③新卒社員同士のエンゲージメント(信頼や相互貢献関係、チームワークなど)構築と、役割別に大きく3つに分け、並行して準備を進めていきました。

情報を一元データ管理・可視化できるツールを開発

――勤怠管理や受講管理などオンラインで研修を実施するには、様々なICTシステムも必要になるかと思います。そのあたりは、どのように準備されましたか?

Cerezo: 準備期間の短さから、必要なツールをすべてゼロから開発するのは難しいと考えていました。また、初めて全編オンラインで研修するということもあり、すべてのシステムを一新したり、不慣れなツールを使ったりするのも望ましくありません。

そこで、これまでの研修や業務でも使っている使い慣れたツールを複数活用しつつ、それらのツールから得られるデータを一元的に管理し可視化できるプラットフォームツールのみ新たに構築することにしました。

オンラインで研修を実施するにあたり、一番大切になってくるのは、情報の管理です。社員一人ひとりはきちんと始業しているか、体調に問題はないか、講義についていけているかなど、オフラインであれば目で見てわかる情報も、オンラインではデータから読み取るしかありません。そういった意味で、様々な情報を一元的にデータ管理して、自動的に集計→瞬時に研修チームが把握できる仕組みを構築した効果は大きかったと思います。

新卒社員の日報や理解度に関するテスト、研修に関するアンケートの結果は、
リアルタイムに集計され、可視化される。

データを自動集計し、見える化したメリットは他にもあります。集計したデータは、毎昼に研修チームで確認します。すると、「新卒社員の集中力が下がってきているから講義方法を見直した方が良さそうだ」とか、「進度が遅れている人がいるから個別にフォローアップした方が良さそうだ」といったことがわかってくる。そこで得られた気づきは当日中に実践し、翌朝のミーティングで結果を共有し合います。このサイクルを毎日回していけるので、日々改善していくことができます。こうした点は、今後オフラインになっても生かしていけると思います。

社長も参加!?オンライン研修の副次的効果とは

――オンラインだからこそ得られた気づきがあったのですね。他に、オンラインであることの効果を実感したことはありましたか?

Cerezo: 毎日30分ほど、三木谷社長も参加する読書会を実施することができました。本の内容を通じて今社長が何を考えているかを話してもらったり、おすすめの本を紹介してもらったりしました。出社していないと、どうしても会社への帰属意識が薄まりがちですが、社長と毎日コミュニケーションをとることで、新卒社員たちが「楽天に入社したんだ」ということを意識し、モチベーションが高まっていくのを感じました。

Preston: また、研修内の講義やレクチャーはすべて録画し、新卒社員がアクセスできるサイトにアップロードしたのですが、ここでも効果を実感しました。元は、接続が不安定で視聴できなかった人や欠勤者用のバックアップとして用意したのですが、結果的に復習用としての機能も発揮しました。例えば、コーディングの研修において、初めにレクチャーを受けたものの、いざ自分でコードを書いてみると行き詰ってしまったと。こうした時に、レクチャーの録画を見れば、すぐに手順を復習することができます。これは、今後も活用していきたいと思いました。

オンラインでエンゲージメントが高まった!?

――確かに講義の内容を振り返れるのは有難いですね。新卒社員同士のエンゲージメント構築という点ではいかがでしょうか。そもそもオンライン同士だとお互いの顔を覚えるのが難しかったりするものでしょうか。

Yunjie: 意外に思うかもしれませんが、オンラインの方が覚えやすいという声もありました。みなさんも、顔は分かるものの、名前が出てこず、ちらっと社員証を見て確認しようとしたら目があって気まずい思いをしたなんていう経験はあるのではないでしょうか(笑)。オンラインだと、ビデオ会議システム上に常に顔と名前が映っているので確認もしやすく、覚えやすいようです。

Preston: エンゲージメント構築という点では、研修の割と初期段階に、新卒社員同士でミュージックビデオを制作するというプログラムを実施しました。それぞれのチームで話し合って決めた楽曲に合わせて動きやダンスを決め、撮影するというものです。研修初期は、新卒社員同士の横のつながりを意識することが難しいのですが、こういった「一緒に何かを成し遂げる」体験を、プログラムとして初期段階で組み込んでいったことで、チームワークの醸成につながりました。

Preston: 研修チームやトレーナーが投げかけた質問に対する新卒社員の回答をリアルタイムに可視化するツールというのも活用しました。オフラインだと、質問に対して挙手してもらい、何名かに回答してもらうということが多いですが、時間も限られているので、全員に回答してもらうことはできません。しかし、こうしたツールを活用することで、全員分の回答を共有することができ、他のみんなはこんなことを考えているんだということがわかります。

研修チームやトレーナーが投げかけた質問に対して新卒社員が送信した回答を一覧表示。
回答数が多かったものは、大きく表示される。

「完全オンライン」研修で心掛けたこと

――ありがとうございます。エンゲージメントの観点でもオンラインならではの体験があるのですね。最後に「完全オンライン」研修を通じて心掛けたことと次につなげたいことについて教えてください。

Cerezo: 準備から研修期間を通して、「不測の事態だから仕方ない」ではなく「こうした時だからこその体験」を提供できるように心掛けました。

この体験を作り出すには、様々なツールを活用したプログラムやサポートを実施することだけでなく、研修を行う側と受ける側の信頼関係も重要です。普段であれば、研修中に巡回し、こちらから声を掛けるということもありますが、オンラインだとひとつの画面ですべての新卒社員の様子を見るということはできません。そのため、新卒社員自ら積極的に動き、声を掛けてもらうということを促進しましたし、実際にそのような意識を持って研修に取り組んでもらうことができました。

そういった意味では、「完全オンラインだからこそできたこと」もありましたし、「こうした時だからこそより一緒に頑張ろう」というムードが強まり、新卒社員の自律性も育まれたのではないかと思います。

次につなげたいことというと、ここまでお話してきたようにレポートの自動化や講義の録画活用など、オンラインだからこそ気づいたこと・学べたことが多くあります。これらは、オフラインでの研修であっても生かしていける点なので、より改善しながら活用していきたいと考えています。


研修チームと新卒社員が一丸となって取り組んだ今回の研修は、「第5回 HRテクノロジー大賞」の特別賞を受賞。システム面やチームワーク面含め、「ニューノーマル」の制約を超えた研修の仕組みを構築したとして評価されました。

また、本記事では紹介しきれなかったものの、他にも、約100チームに分かれた新卒社員が研修で学んだコーディング技術を用いて新しいサービスを開発し、最後に投票で良くできていたサービスを選出する「ハッカソン」と呼ばれるプログラム実施についてなど、オンラインならではの工夫が感じられるたくさんのエピソードを聞くことができました。

すでに次の新卒社員研修に取り組んでいるCerezo さん、Yunjieさん、Prestonさんをはじめとした研修チーム。今後どのような体験が生み出されていくのか、Rakuten.Today編集チームでも引き続き注目していきたいと思います!

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