「IDRユーザフォーラム2024」レポート:次世代のAIイノベーションを促進


※本記事は、以下の「Rakuten.Today(英語版)」で掲載された記事を抄訳したものです。
https://rakuten.today/blog/rakuten-at-the-idr-user-forum-2024.html

国立情報学研究所(NII)が主催する「IDRユーザフォーラム 2024」が、12月13日に東京にて開催されました。楽天は、AIなどを活用した未来の発展に向けた産学連携の取り組みのひとつとして、イベントに参加しました。このフォーラムは、研究者や学生、民間企業が連携し、アイデアや革新的なプロジェクトを紹介し合う場となっています。楽天は、国立情報学研究所の「情報学研究データリポジトリ(IDR)」を通じてデータセットを提供している他、長年にわたって本イベントを支援しています。専門知識やデータセット(注 1)を関連学会において共有するなど、次世代AI研究者の研究意欲を高める上で中心的な役割を果たしています。

データを通じた学生のエンパワーメント

楽天が「IDRユーザフォーラム」に参加している理由のひとつは、最先端のツールやデータ活用の利点を誰もが享受できるようにすることで、楽天グループ全体で取り組んでいる「AI の民主化」を実現するためです。NII内の情報学研究データレポジトリ(IDR)とも連携し、日本全国の200を超える大学の研究室といった学術機関にデータセットを提供するなどの取り組みをしています。カスタマーレビューや商品説明を含む楽天グループのデータセットは、IDRの中でも特にニーズの高い学術研究用のリソースとなっています。

楽天の提供するデータセットを活用することで、研究者たちは、実社会の課題解決を目指した革新的なAIソリューションの開発に取り組んでいます。「IDRユーザフォーラム」は、 こうした研究者が研究成果を発表する場であるとともに、各産業界における専門家と関係性を築き、研究が実社会においてどのように応用できるかを探ることができる、またとない機会ともなっています。

AIを活用したユーザ体験の向上

今年のフォーラムでは、楽天グループのAI & Dataディビジョンユーザデマンド解析チームに所属するリサーチサイエンティストである中山祐輝が、楽天を代表して参加し、研究事例の発表や、ブース展示などを行いました。実は中山は、学生時代に、「IDRプログラム」を通じて、楽天のデータセットを利用した自然言語処理(NLP)の研究を行っており、学生研究者を経て研究者として楽天に入社しています。

データを提供することで、企業は学生研究者が実社会での活用に直結するようなAI研究に取り組むことを後押しするだけでなく、将来的にその経験を生かした仕事に関わる機会創出にも貢献することができます。

楽天の実社会 AI プロジェクトを学生たちに紹介するようす
楽天の実社会 AI プロジェクトを学生たちに紹介する様子

中山は、「楽天グループにおける研究事例と公開データセットの紹介」と題して、楽天のNLP技術を活用したサービス改善の事例などについて発表しました。具体的には、有害なテキストのフィルタリングや、大規模言語モデル(LLM)の構築、アスペクトベース意見分析など、ユーザ体験の向上を目的とした楽天のAI 活用事例を紹介しました。

また、「ポスターセッション」と呼ばれる楽天グループの取り組みを紹介するブース展示では、学生や研究者の方々と交流し、それぞれの研究プロジェクトについて議論をしたり、楽天のデータセットをインパクトのある研究にどのように活用できるかについてアドバイスをしたりしました。さらにデータ提供者セッションにも参加し、AI研究分野における楽天グループの産学連携の取り組みについてなどを詳しく解説しました。

楽天グループのブースでは、立ち寄った学生たちに楽天の AI 研究について紹介
楽天グループのブースでは、立ち寄った学生たちに楽天のAI研究について紹介

レコメンデーションのための「説明可能な AI」開発

本イベントの最後には、表彰式や情報交換会が行われました。表彰式では、楽天のデータセットを活用した研究に取り組んだ東京科学大学工学院・市瀬研究室の修士課程2年の安田大輝さんに対して、優れた発表に贈られるDBSJ(日本データベース学会)特別賞が贈られました。イベント終了後、安田さんにお話しを伺いました。

安田さんは、「説明可能なAI(XAI)」を活用したホテル推薦システムの研究について、本イベントにて発表しました。指導教官である市瀬教授に「IDRユーザフォーラム」を紹介され、楽天トラベルのレビューデータを活用した研究に取り組んだそうです。アスペクトベース(注 2)のカスタマーレビューデータを活用することで、既存の推薦システムによく見られる課題の解決を目指し、ホテルを推薦するだけでなく、ユーザーのニーズに合わせたわかりやすい説明を提供できるシステムを開発しました。安田さんは、「今回の研究での経験を通じて、データ分析のスキルを向上することができた。今後はデータサイエンスの道に進むことを予定しているが、研究で得たスキルも応用して、実社会でユーザーや企業に価値をもたらす仕事をしたいという意欲が高まった」と話しました。

権威ある DBSJ 特別賞を受賞した安田大輝さん(右)。
権威あるDBSJ特別賞を受賞した安田大輝さん(右)。

産学の架け橋として

楽天がNIIとの連携を強化し、「IDRユーザフォーラム」に積極的に参加している背景には、産学連携を推進することでイノベーションを促進したいという楽天グループとしての考えがあります。また、データセットや専門知識の共有を通じて、自社のAI能力向上が期待できるだけでなく、学生たちの革新的な研究意欲を刺激することで、AI分野の発展への貢献を目指しています。楽天は、「AIの民主化」を目指し、学術研究を積極的に支援することも含めて、AI分野での先駆者のひとつとして、あらゆる人がAIのメリットを享受できる社会の実現を推進していきます。

(注 1)本記事で言及しているデータセットはすべて、研究目的に限って大学研究室に公開されているもので、秘密情報や個人を特定できるユーザ情報は一切含まれていません。

(注 2)アスペクトベースとは、文章中の特定の単語などを抽出し、感情を予測するデータ分析手法

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