【解説】1日5,000人規模の大規模ワクチン接種を実現。楽天の地域合同職域接種のギモンに答えます!

楽天が地域合同で大規模な職域接種を実施してるのをご存知でしょうか。

職域接種と聞くと、自社企業の従業員とその家族だけが対象と思われる方も多いかもしれません。しかし、国の方針では、実施企業が条件を整えれば、関係する企業の従業員・家族や近隣住民へも合同で接種機会を提供することを可能としています。

本記事では、なぜ楽天が運営主体となり、自社だけでなく近隣住民や何千もの中小企業等も含めて合同で職域接種を実施しているのか?どうやってそれを実現しているのか?そういったギモンにお答えしていきたいと思います!

そもそも、なぜ職域接種が始まったのか?

まず、職域接種が始まる6月21日以前のワクチン接種状況について振り返ってみましょう。4月下旬の頃、政府では7月末までに高齢者への接種を完了するため「1日100万回接種」を目標として掲げていました。ただ、その頃の接種ペースからすれば、到底間に合わないと思った人も多かったのではないでしょうか。

当時は、地域自治体だけでは、高齢者はもちろん他の世代への接種も進んでおらず、国が自衛隊による大規模接種会場を設けるなどしていました。それでも、都心部まで足を運ぶことに躊躇されている高齢者の方々もいました。また働き盛りなどの世代となると、接種券も届いていない方が多く、接種券が届いていたとしても予約がとてもとりづらい状況でした。

コロナ禍の終息は高齢者の接種完了だけでは達成しえず、変異株の急拡大や若年層の重症化など、ウイルスは年代を超えて脅威となっており、一刻も早い、一人でも多くの国民へのワクチン接種実現が求められます。また、ワクチン接種は、自分の感染だけでなく周囲の人への感染も防ぐことにもなるため、先に接種する人だけが利益を得るわけではありません。

そこで、年齢順や公平分配というより、接種券がなくても(※)、企業や大学でワクチンを打てる場所や能力を持つところが一人でも多く打てるようにし、「集団免疫の獲得」を早期化させる、という方向に舵が切られ、職域接種が始まりました。

(※職域接種では、企業・接種医療機関等が本人確認をすることや、予診票を保管しておき被接種者から後日接種券を受け取り予診票に貼り付けるといった管理を行うことで、接種券がまだ届いてないタイミングでも接種実施を可能にしています)

当時は、ワクチン自体は十分に供給される見込みがあるとされていた一方で、ワクチンはあるのに大規模に接種できる場所や打ち手が圧倒的に足りないと言われていました。「集団免疫の獲得」という本質的な目標に向けて、ひとつでも多くの接種会場を設置することが求められ、企業や大学に広く協力が呼び掛けられたのです。

1会場1日5,000人規模のワクチン接種実現に向けて

前述の通り、国の職域接種方針では、対応できる企業に、自社の従業員やその家族だけでなく、近隣住民や関係する企業含め接種機会を広く提供可能にしています。それにより、ひいては自治体での接種も受けやすくなり、接種が加速化することが期待されました。

しかし、職域接種は、企業や大学が自前で医療従事者や会場・運営人員等を確保し、1,000人以上に2回目接種も含めて実施できる体制を整えることが実施条件とされていました。そのため、この条件を早期に満たすことのできる企業は限られていました。

そこで楽天では、自社以外にも接種機会を提供することを目指し、自前で用意可能な会場規模や運営人員、ご協力いただける医療法人等の体制、関係各所からの要望状況を踏まえ、対応可能な接種数を試算しました。

シミュレーションをしたところ、ひとつの会場で1日あたり5,000人規模に接種できるオペレーションを構築することが可能という判断をしました。5月に楽天が運営支援を開始していた神戸市が実施するノエビアスタジアム神戸での大規模接種オペレーション「神戸モデル」で培ったノウハウもあったため、正確な試算を迅速に出すことができたのです。シミュレーションでは、1日5,000回接種を前提とした場合、予診担当の医師約8人(うち2人はオンライン予診)、接種担当および事前予診・経過観察等の看護師約45人、ワクチン分注担当の薬剤師約24人、その他、社員を中心とするオペレーション運営スタッフ約155人の計約230人体制で実現できるということが分かりました。また、これだけの接種回数においても、2回目を含めて継続的に数カ月の間、安全に接種を行うことのできる会場も調整しました。

楽天の職域接種は、この1日5,000回という接種能力のもと、自社の従業員やその家族だけでなく、当初より近隣住民や自治体のエッセンシャルワーカー、単独で実施困難な1,000人未満の中小企業等の数千社にもご参加いただける地域包括的な合同接種を計画のうえ試算・申請し、承認を受けて順次供給されるワクチン量に応じて実施することにしたのです。

ワクチンを無駄にしないオペレーション

ワクチンは十分に供給される見込みがあるとされ、会場や打ち手が足りないと言われて始まった職域接種ですが、始まってみると企業・大学からの応募が想定以上に多くありました。また、職域接種用のモデルナ製ワクチンの輸入が遅れていることも明らかにされました。

そうした状況の中、職域接種向けのワクチンはいっきに供給されるわけではなく、実施企業・大学がVRSという政府の登録システムへ入力するその接種実績に基づいてワクチン供給量が順次調整・確定され、週単位で順次供給されることとなっています。

楽天では、ワクチンが接種されないままに在庫が貯まっていっているということはありません。1日5,000回以上の接種可能数という、民間だからこそできる効率的なオペレーション体制のもと、供給されたワクチンは当初より速やかに無駄なく接種を進めてきています。

ワクチンは実績に応じて週単位で順次供給されるため、どれだけ実際に届けられたかを確認してから、ようやく予約枠を設定することができます。予約から実施までの期間が限られてしまうことから、予約されなかった分が発生した場合は、他の期間や対象に分配するなどして、無駄なく接種されるように調整しています。


他の企業や近隣自治体・エッセンシャルワーカーも含めて計画

楽天では、当初から他の企業や近隣自治体へも地域包括的に合同でワクチン接種機会を提供できるよう準備を進めてきました。

職域接種への申し込みが開始される6月8日に先立って、6月4日にまず新型コロナウイルスの「職域接種」対応方針を発表。これと6月18日の発表の中で、今後、関係各所のご要望をうかがい条件が整えば、近隣住民や接客を要する事業者等を中心とした取引先・関連企業を対象としたワクチン接種機会の提供も検討するとしていました。その発表方針の通り準備を進め、7月26日の発表で正式に実施のアナウンスをしています。

申請に向けた事前ヒアリングでは、「楽天市場」や「楽天トラベル」といったサービスの取引先企業から、自前で医療従事者や会場・運営人員等を確保し、1,000人以上に2回目接種も含めて実施できる体制を整えることは困難との声が多く聞かれました。そのため、楽天の職域接種には、単独で実施困難な中小企業をはじめとする数多くの企業にも参加いただけるように、楽天が代表して申請・会場用意や運営を担うことで、他のそうした企業にも配分できるようにすることを目指しました。

これまでに、東京・楽天本社に加え、仙台・楽天生命パーク宮城マリンメッセ福岡でも大規模接種会場を設け、各会場1日5,000回という接種能力で、順次、供給されるワクチンを無駄なく速やかに接種してきています。

(左)楽天生命パーク宮城接種会場/(右)マリンメッセ福岡接種会場

なお、職域接種開始後に、政府からのワクチンの安定供給が不確実ともいえる情勢にもなっていましたので、最初は当社従業員(直接雇用の契約社員・アルバイト、間接雇用の派遣社員・パートナースタッフ・業務委託者含む)とその家族(配偶者・事実婚・同性パートナー、およびその二親等までの家族含む)の約6万人から開始しました。例えば1日5,000人規模で打ったとしたら、6万人(2回目含め12万回分)だと12日×2回で終わる計算です。この枠組みを活用して他にも接種機会を提供する形となります。

並行して、予約システムや適正な接種者の名簿管理の運用等を協議のもと、諸条件や週単位で供給されるワクチン量に見通しが立ったところから順次、合同接種対象の中小企業等の数千社や近隣住民(2回目予定分含め世田谷区約7万5千回、川崎市約1万4千回、横浜市約3万4千回)にも配分し、1日5,000人規模で接種を進めてきました。

また、楽天の職域接種では、例えば会場のひとつである東京本社近隣の世田谷区において、区との協議・連携のもと、区内保育施設・幼稚園、高齢者・障害者施設の職員、区立小中学校教職員といったエッセンシャルワーカーや、職域接種の実施を予定していない区内大学の教職員・学生等が早期に接種できる機会を提供しました。仙台市においても市との協議・連携のもと、市内の消防団員や公共サービスに従事するエッセンシャルワーカーに接種機会を提供しました。

これにより、9月7日までに2回目分の接種も含め、楽天本社で26.8万回、楽天生命パークで7.5万回、マリンメッセ福岡で4万回を接種し終えています。

なお、基本的に自治体の接種用はファイザー製ですが、職域接種用はモデルナ製となります(ワクチンごとに接種間隔や管理方法等が異なるため、ひとつの接種実施会場で2種類のワクチンを取り扱うことは、原則難しいとされています)。また、自治体が実施する大規模接種でモデルナ製を扱うところもありますが、大規模接種用と職域接種用のワクチンを相互に融通することは認められていません。楽天が近隣住民にも大規模接種機会を提供することで、地域自治体が行う接種の枠にも余裕が生まれることが期待されます。

職域接種で企業に求められること

会場や運営に関わる人員・その他管理費用等で楽天が提供しているものは楽天で基本的に負担しています。接種に必要な医師や看護師等の人員の確保、-20℃冷蔵庫とワクチンの保管場所・管理体制の確保、VRSへの登録も企業側ですることとなっています(なお、ワクチン接種に要する費用の一部は、職域接種にご協力いただける医療法人・医療従事者へ国から支払われ、楽天が医療報酬として受け取るものではありません)。

また、近隣住民も接種対象に含める場合、①企業・大学等が個人情報を管理する必要があること、②企業・大学等が接種対象者の2回目接種までを実施できる体制を整備する必要があること、などを踏まえて接種対象者について慎重に検討することとされています。そのため、自治体と共に協議の上、条件が整えられたところにおいて実施しています。

1日5,000人規模の接種を、6月21日からお盆や連休含め、平日・土日祝日と毎日10時~19時(内1時間は休憩時間)で実施を続けてきており、回数を重ねるほど当社での費用負担が増えることは事実です。しかし、楽天グループでは、日本全体での集団免疫の早期獲得・経済活動の再開への貢献に向けて一人でも多くの方にワクチン接種を速やかに受けていただけるように、社会貢献として取り組んでいます。

民間だからこその工夫とは?「楽天モデル」を全国に展開

「きっかけは、5月8日土曜日だったと思いますが、楽天グループ株式会社、三木谷 浩史会長兼社長から、メールをいただいたことです。ノエスタ(ノエビアスタジアム神戸)に接種会場をつくりませんか?というご提案でした。すぐに、土日の間に三木谷会長と意見交換を行いまして、極めて短期間の内に準備をし、協議を行い、そして今日の発表の日を迎えることになりました」

5月21日、神戸市にて開かれた臨時記者会見の冒頭、三木谷からのメールについて神戸市の久元 喜造市長が紹介しました。

楽天グループでは、本年5月から国内初の産学官連携により、「ノエビアスタジアム神戸」において自治体実施主体向けの1日7,000回以上の接種を可能とする大規模接種オペレーション「神戸モデル」を設営・運営しています。これは神戸市が実施主体となり、神戸大学や神戸大学医学部附属病院、東京慈恵会医科大学外科学講座、SBCメディカルグループなどの協力のもと、楽天グループが運営面で支援しているものです。これまでに、累計約21.6万回の接種を積み重ねてきています。


接種オペレーションの構築や会場運営は、わずか2週間ほど。ノエビアスタジアム神戸でコロナウイルスワクチンの大規模接種をスタート!

また、楽天が実施主体となる地域包括的職域接種オペレーションとしては「楽天モデル」を設計・構築し、東京・二子玉川の本社オフィス「楽天クリムゾンハウス」で実施。さらに、前述の通り、「楽天生命パーク宮城」および福岡市のコンベンションセンター「マリンメッセ福岡」における職域接種の合同実施でも展開しています。

「楽天生命パーク宮城」では、楽天野球団や仙台商工会議所等とも連携し、7月25日から(毎週日曜日~火曜日に実施)1日約5,000回で10月まで続ける予定で、これまでに約7.5万回の接種を実施しています。この会場では、楽天グループとしては初めて、車内で座ったままワクチン接種が受けられるドライブスルー方式も取り入れ、利便性を高めました。


仙台における大規模ワクチン接種プロジェクトの挑戦

「マリンメッセ福岡」は、福岡市と福岡地域戦略推進協議室と福岡商工会議所等と連携し、1日約3,000回で7月と8月に各10日で2回目までの接種を約4万回の接種を行いました。会場の関係もあり日程が分かれていたため、この会場では計4回の設営をしました。

新型コロナウイルスワクチンの職域接種、福岡での舞台裏

いずれも、受付の段階で予診票の重要項目を確認し、各被接種者の予診にかかる時間を予測した上で、手持ちファイルの色や進むレーンを分けて案内することで、対象者をファイルの色で視覚的に把握して最適な誘導方法と導線を確保。在庫がなくなったブースに対して連絡をしなくても新たなワクチンが供給されるカンバン方式や、接種者側が衝立を挟んで2つのブースに入れる構造も取り入れるなど、最少人数で安全かつ迅速に接種できる工夫をしています。これにより、受付から接種までの所要時間を約3分半まで短縮できるオペレーションを実現しました。

また、「ノエビアスタジアム神戸」では、本番前シミュレーションの実施2日前に、厚労省がワクチン接種でもオンライン予診を可能とする旨の発表をしたことから、急遽スタッフが家電量販店に機材を買いに走りました。これにより、ワクチン接種会場で国内初となるオンライン予診も導入されることとなりました。その後、職域接種会場でもオンライン予診を導入し、遠方にいる医師が移動の手間なく接種業務を担える体制を整備することで、安定的な医師の確保を可能としています。

会場の各チェックポイントでは、ストップウォッチで作業時間を計測するなど、楽天でのビジネスと同様に日々のオペレーションの中で効率化のための検証・改善作業を重ね、「仕組み化」をしていきました。


(左)オンライン予診も活用し、遠方にいる医師も移動の手間なく対応できることで、安定的な医療従事者の確保とオペレーションの運用を実現。(右)作業の迅速化を図るため、ひとつのワクチン接種エリアに2人の接種者が衝立を挟んで入室。

ちなみに、これらノウハウについては、とりわけ「楽天トラベル」へ全国の自治体や観光地の温泉組合等から多数のお問い合わせが寄せられました。「楽天モデル」を含め、各企業の職域接種や自治体による集団接種にご活用いただくべく、汎用的なガイドラインやマニュアルとしてまとめ、全国約30の観光地の温泉組合・自治体・企業等に対して提供しています。

運営ガイドラインイメージ

ワクチン職域接種の運営スタッフに届いた声

以上、楽天による大規模な地域合同職域接種の舞台裏をご紹介させていただきました。

楽天グループは今後も、一日も早いコロナ禍の終息に向けて、できる限りの協力を進めてまいります!

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