楽天が手掛ける実写版ドラマの“包括的”プロデュースとは? (前編)

インターネットサービスを軸とする楽天が、ドラマをプロデュースすると聞くと「え、どういうこと?」と驚かれる方も多いのではないでしょうか。先日、楽天は人気コミックス『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』の実写版ドラマのプロデュースを、制作から、配信、マーチャンダイジングまで“包括的”に行うことを発表しました。

本記事では、今回そのドラマのプロデュースを手掛けるIP(知的財産)コンテンツ事業について、実際にプロデューサーを務める稲熊さんへのインタビューを通じてご紹介します!

IPコンテンツ事業 
稲熊さん

世界中の人々に愛されるIP・コンテンツ創出を目指す事業

――楽天のIPコンテンツ事業のミッションや仕事内容について教えてください。

組織のミッションは、大きく3つです。まず、IPやコンテンツを通じて「楽天エコシステム(経済圏)」を活性化させること。次に、楽天のサービスとそれ以外での体験も含めて、ユーザーとの接点やマネタイズポイントを拡大していくこと。そして、そうした展開や価値の源泉となるIPやコンテンツを保有すべく、開発・獲得を行っていくことになります。

つまり我々は、コンテンツの元となる原作獲得やオリジナル企画の開発から、映像化・ゲーム化・グッズ化・イベント化・・・などのように一つのIP・コンテンツを育て、多角的な拡がりを作っていくところまで、トータルでプロデュースしていくことを目指しています。そしてその結果として、世界中の人々に愛されるIPやコンテンツを生み出し、保有していくことが、私たちの大きなミッションになります

その中でも、私がいるIPコンテンツプロデュース課は、IP展開の中心となる映像などのコンテンツ製作(プロデュース)を担っています。今回のような実写ドラマのほか、アニメ作品や映画・舞台作品などについて、楽天主導での開発・製作や、他社が主導する製作委員会への参画を通じて、各種展開の源泉となるIPの保有・拡大につながる活動をしています。

事業部内には、IPを拡げてマネタイズにつなげていくことをミッションとするチームもあります。IPの商品化・販売(マーチャンダイジング)担当チームや、企業タイアップやスポンサーシップ営業を担当するチーム、国内外への映像販売・配給を担うチームがあります。

――楽天で実写版ドラマの製作を手掛けることになったきっかけとは?

IPやコンテンツには、様々なサービスへ人を呼び込む力や、派生的な体験を生み出していく力があると考えています。楽天がコンテンツ開発に乗り出したのは、そうした力に着目したところが発端となります。

我々の事業部が目指すのは「メディアフランチャイズ」や「メディアミックス」と呼ばれる、多角的な展開が可能なIPやコンテンツの開発・保有です。当初は、キャラクタービジネスの展開がイメージしやすいアニメの開発を主眼に置いていましたが、実写コンテンツには、出演者のライブイベントやステージショーなどの展開が検討可能であり、「楽天チケット」でのチケット販売や「Rakuten TV」でのライブ配信といった楽天のサービスとも相性が良い部分があると考え、アニメの開発・製作と並行して実写ドラマの製作を手掛けることになりました。

――楽天が実現を目指す多角的なドラマ体験とは?

「放送して終わり」、「視聴して終わり」ではなく、作品中に登場するものを実際にグッズとして手に取れたり、ドラマの体験を実際にリアルでも楽しむことができるようなイベントを設計したり、ファン体験の幅を広げたいと思っています。スピンオフやグッズ展開などは、すでに一般的に行われていることではありますが、企画選定の段階から、こうした展開と作品本編の連動性が高くなるようなコンテンツ製作を目指していきたいです。

今回の『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』についても、主人公が作品オリジナルキャラクターの洋服を着ていたり、オリジナルのアイドルグループに絡めたグッズ展開やイベント展開ができたりすればという思いで企画しています。楽天のサービスに「楽天ブックス」や「楽天Kobo」もあるので、原作と連動したキャンペーン展開なども考えられますね。

主演二人のシーンを撮影している際のオフショット
(C)ミナモトカズキ・徳間書店/2022「壁こじ」製作委員会

――実際にはどのような関わり方をして、ドラマ製作が進んでいくのでしょうか?

楽天が製作委員会幹事として主導していく場合と、他社様が主導される作品に参画させていただく場合とで異なりますが、幹事として主導していく場合には、ドラマ製作のほぼすべてのプロセスに関わっていくことになります。

撮影前の脚本作りやキャスティング、実際の撮影への立会い、編集のチェックなどを通じて、作品としてはもちろん、事業としての観点からも企画時の意図とブレない形で完成させていくためです。ドラマ製作は多くの方々の力を借りないといけないので、キャストや脚本家、演出家、テレビ局・制作会社のプロデューサー、現場のスタッフの方々と協議をしながら進めています。

これは一般的なプロデュース業務とさほど変わらないと思うのですが、そこに加えて、ドラマの本編と販売グッズの連動性を高めるために現場のスタッフと楽天の商品化チームをつないだり、イベントへの誘導や派生コンテンツを含む体験設計を行ったりするなど、事業の狙いも含めてトータルでプロデュースする視点で関わろうとしています。

撮影期間は、私も現場に足を運んで現場の進行をサポートしつつ、作品としての方向性や、企画の意図がブレないよう立ち会っています。撮影を終えたら、編集やMA(注)を経て2022年10月から放送・配信を開始する予定です。

後編に続く

(注)「Multi Audio」の略称。映像制作において、ナレーションやセリフ、効果音、音楽などを入れて音の最終調整を行う作業

(C)ミナモトカズキ/徳間書店
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