楽天が手掛ける実写版ドラマの“包括的”プロデュースとは? (後編)

先日、楽天が人気コミックス『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』の実写版ドラマを、制作から配信、マーチャンダイジングまで“包括的”にプロデュースすることを発表しました。本記事は、今回そのドラマのプロデュースを手掛けるIP(知的財産)コンテンツ事業について、実際にプロデューサーを務める 稲熊さんへのインタビューを通じてご紹介する後編です!

前編をご覧になっていない方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。

IPコンテンツ事業部 
稲熊さん

ファンの需要を一元化されたIDを通じて深掘り

――IPコンテンツ事業における楽天の独自性について教えてください。

コンテンツに対するファン層の消費傾向データを高い精度で探ることができる点だと思います。一般的に、テレビや動画配信サービスの視聴においても、ユーザーが何を見ているのかという単体での視聴傾向データは取れると思います。しかし楽天なら、その視聴傾向に加えて、“どんなユーザー層なのか”という点を、「楽天市場」をはじめとする「楽天エコシステム」内での利用データを用いて、セグメント単位でのユーザー層のライフスタイル傾向まで分析することができます。

加えて、メディアフランチャイズ展開を実施した際に、映像を視聴するだけのファンなのか、関連グッズを購入したりイベントに参加したりするような深いファンなのか、というファン度合いを測ることも可能だと考えています。どのような人が、どのような楽しみ方でファンになっていただけているのかを深掘りできるというところが、楽天の強みになり得る独自性といえます。これによりファンの方に適切なサービスを届けることが可能になり、それがパートナー企業の方々からも一定の評価を得られるアピールポイントにつながっています。

例えば、「Rakuten TV」で配信したドラマのオーケストラコンサートのイベントを「楽天チケット」で販売した事例では、配信でその作品を見たり、関連フォトブックを買ったりしているユーザーの年齢層は40代、30代、20代の順で多かったのに対し、実際にコンサートに足を運んでいたのは逆に20代、30代、40代の順に多く、視聴層やフォトブック購入層とは異なっているというデータが出ました。楽天のサービスの使い方に差異があるように、一つのコンテンツの楽しみ方にも差異があります。「楽天エコシステム」の一元化されたIDを通じ、ファンの皆様が、そのIPやコンテンツに対してどのような関わり方をしたいのかという一歩踏み込んだ需要を可視化できることは、提供するサービス向上のための大きな強みといえると考えています。

ドラマ内のアイドルグループ「SHINY SMILE」が立ったステージ
(C)ミナモトカズキ・徳間書店/2022「壁こじ」製作委員会

楽天が参画することで、コンテンツビジネスの可能性を広げたい

――新たな挑戦への意気込みや難しさについて教えてください。

今、実写のコンテンツを作るというビジネスそのものが、製作費の回収をなかなか果たせないという厳しい状況に置かれていると感じています。なので、あくまで“意気込み”ですが、この業界に楽天という新たなプレイヤーが入って、楽天なりのコンセプトで事業化を図ることによって、業界に新しい風を吹かせ、可能性を広げることができればと期待を込めて挑戦しています。私個人としても、そこに楽しさとやりがいを感じています。

難しさで言うと、すでにテレビ局や配信プラットフォーム、映画会社や制作会社などの強いプレイヤーがたくさんいる業界に、「楽天ならではと呼べるようなコンテンツビジネスを手掛ける」という命題で事業を設計し、それに即した企画を立ち上げるということは、かつてテレビ局にいた頃とはまた違った視点が必要になり、やはり難しさはありました。

加えて楽天は、元々コンテンツを作ってきた会社ではないうえに、コンテンツをただ作るだけでなくビジネスとして成立させるということに初めて挑戦しているので、手探りな場面は多いですね。例えば、社内の関連部署に協力を仰ぐ際にも、コンテンツビジネスを全く知らない人に事業の構造をイチから説明したうえで交渉が必要になることがあるなど、単純に物作りをするという仕事以外の部分でやらなきゃいけないこともあります。

ですが、きちんとビジネスの内容と利益の見込みを説明すれば、楽天という会社は、色々なことに挑戦できる会社だということは改めて感じています。もちろん、自分のやりたいことをただやりたいと言って通るわけではありませんが、『それをやることによって、世の中に、会社に対してどういった利益をもたらすことができるのか』ということを突き詰めて考えられたことは、個人的にも良い経験になっていると思います。

撮影に使用した主人公のデスク
(C)ミナモトカズキ・徳間書店/2022「壁こじ」製作委員会

――IPコンテンツ事業に携わることの魅力とは?

我々の目指す事業を実現するためには、IPやコンテンツの持つ可能性について突き詰めて考えながら企画を考える必要があります。逆に言えば、そうした新しい可能性についてしっかりと考えることができる環境があるとも言え、私としてはそこに魅力を感じています。もし、今までコンテンツビジネスに関わってきた方々の中で、「ずっとこのままでいいのかな」、「もっとやれることや可能性があるんじゃないのかな」と感じられている方がいらっしゃったら、楽天のIPコンテンツ事業で働き、新しい可能性をもたらすようなコンテンツ製作に挑戦できることに対して魅力を感じられるんじゃないかなと思います。

――今回手掛ける、実写版ドラマの見どころをあらためて教えてください

初めて「壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている」の原作を読んだ時、「自分の好きなことや夢を諦めずに追いかけていいんだ」と、そんな気持ちになりました。本作はボーイズラブというジャンルの作品でもあり、恋愛でも、目指す夢でも、趣味でも、「“好き”に一生懸命なことは素敵だ」というのがこの作品の大きなテーマです。このドラマに登場する、好きなことや夢に向かって一生懸命な若者たちの、爽やかでピュアな姿を応援しながら楽しんでいただければと思います。

主人公猫屋敷くんの同人誌や、幼なじみの一星くんが所属する作品オリジナルのアイドルグループの活動も、ドラマ本編やその他様々な方法で楽しめるようにしていきたいと思っていますので、ぜひ注目していただきたいです!

(C)ミナモトカズキ/徳間書店
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