楽天のダイバーシティ&インクルージョン促進への取り組み ー開発部門での事例ー
楽天では「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というミッションを成すために、より多くの人々がイノベーションの恩恵を受けることができるよう、あらゆる場面で多様な人々のニーズや視点を考慮に入れる「インクルーシブ」なアプローチを大切にしています。そんな職場づくりのために、従業員に能力開発を通じた成長の機会、公正な賃金、キャリアの形成において平等な機会などの提供に取り組んでいます。今回はその一環として、技術部門に所属するDeveloper Relations Office (以下DRO)でのダイバーシティ&インクルージョン促進の取り組みをご紹介します。
DROは2022年10月に出来た新しいチームで、エンジニアの採用戦略の策定や、採用プロセスの改善、社内外に向けたブランディング活動に取り組んでいます。社外へのブランディング活動の一例として、大学を中心とした各教育機関と関係構築し、情報工学分野の授業などを提供することによって、学生達にエンジニアとして働く楽しさや楽天で働く魅力を伝えています。最近では「Women’s empowerment」に力を入れており、テクノロジー領域で働く社内の有志メンバーと一緒にジェンダー・ダイバーシティについて考えるトークセッションを企画しています。また社内に限らず、会社として社会全体のジェンダー・ダイバーシティについての理解促進にも取り組んでいます。
2021年の経済協力開発機構(OECD)の調査(注1)によると、日本ではSTEM教育(注2)を専攻する女性比率が特に低いことが指摘されており、OECD加盟国全体ではSTEM教育分野を卒業した女子学生は33%に対して、日本は17.5%にとどまっているそうです。これまでも、DROでは大学生に対して「AI」や「Data Science」をテーマに授業を提供していましたが、このような背景を踏まえて今年は新たなチャレンジとして、大学への進学を考える前の高校生に対して「Data Science」の授業を実施することにしました。これにより、STEM教育分野に興味を持つ女子学生が少しでも増えることに貢献できればと思っています。
また、先日2024年3月23日(土)には「LCL-Japan」(注3)のイベントを楽天本社で開催し、DROも、サイバーセキュリティ領域で働く楽天のエンジニアと共にイベントをサポートしました。今回は、サイバーセキュリティに関心のある女性達による短い発表「ライトニングトーク」をメインとしたイベントを開催しました。当日は社会人の方だけでなく、学生の方々も含めて計25名の方にご参加いただき、 サイバーセキュリティ領域でのキャリアや働き方、女性として働く上で感じている課題などについて、立場や年代の垣根を越え、活発な議論が行われました。
このようなインクルーシブやダイバーシティの取り組みを推進するDROのSakiさんとサイバーセキュリティディフェンス部のYukakoさんにお話をお伺いしました。
――DROが発足した背景や理由はどういったものですか?
Sakiさん: 主な背景としては、2つあります。まず、エンジニアの採用市場はとても競争率が高く、優秀なエンジニアを世界中から獲得するためには、社内の採用プロセスを見直し、新たな採用チャネルを拡大する必要がありました。そこでオペレーション改善と採用チャネルの拡大を推進するチームとしてDROは立ち上がりました。もう一つは、エンジニアやエンジニアを目指す方々に、「キャリアを形成する場」としての楽天の魅力を伝えるためです。楽天は国内外で70以上のサービスを展開し、国内の楽天ID数は1億以上あり、扱うデータ規模も大きいです。最新のテクノロジーに常に触れながら社会に大きなインパクトを与えるサービスの開発・運用に携わることができるため、楽天の技術部門はエンジニアとして成長できる環境です。その魅力を社内外に伝えるために、楽天の技術部門のブランディングを担うミッションもDROは担っています。
――DROの活動の中で感じた気づきは、どういったものがありましたか?
Sakiさん:「Women’s empowerment」をテーマにした企画を、多国籍なメンバー達と一緒に検討していると、女性の社会進出の在り方に関して、国によって捉え方や感じ方は様々だということに気づかされました。また、「キャリアは”はしご”ではなく”ジャングルジム”のようなもの」という言葉が私は好きなのですが、その言葉にあるように、単純にキャリアは上に登るだけではなく、横に進んでみたり、一度降りて違う登り方を試してみたりすることができます。はしごでは上にいる人ほどが遠くまで広い景色を見ることができますが、ジャングルジムだと各々が違う角度から、それぞれの景色を見ることができます。従業員一人ひとりが、どのような文化圏から来ていても、また”ジャングルジム”のどこにいても、それぞれの価値観や働き方が認められ、尊重される職場を目指していきたいと思っています。
――今回『LCL-Tokyo』のイベント開催に携わった感想はいかがでしたか?
Yukakoさん: 私たちは LCL–Tokyo の活動理念に共感し、楽天グループのダイバーシティ&インクルージョンの課題解決の取り組みともマッチすることから、自分たちのオフィスを LCL-Tokyo のイベント会場として提供し、運営をサポートしました。 サイバーセキュリティ領域においても、ジェンダーの非対称性はまだまだ顕著です。セキュリティ業界で働き始めて間も無く参加したコミュニティー活動の中では、女性エンジニアはまだとても少なく、テクノロジー分野への男女の関心の差を感じざるを得ない状況がありました。そのため、女性セキュリティエンジニアである私自身が、もっと女性が積極的に参加しやすい業界になるよう、DROと共に大学での授業提供や、外部コミュニティーの支援に携わってきました。
今回のイベント全体を通して感じたことは、参加者の皆様それぞれに異なったバックグラウンドがあり、携わっている仕事内容もまた多種多様である、ということです。セキュリティ業界だけに限らず、エンジニアとしてのキャリアを歩む方にはSTEM教育を専攻していない方も多く、元々異なる分野からキャリアチェンジをして働いている方もいます。ダイバーシティの実現には、異なるバックグラウンドや考え方を持つ人々と、どのようにお互いを尊重し、理解し合いながら共通の目的を達成するかという考え方を持つことが大切です。そのために、まず多様な人々の意見を取り入れることがファーストステップであり、様々な意見やアイデアを発信することもまた重要だと考えています。LCL–Tokyoはそういった価値観や課題が、誰でも積極的に共有できるコミュニティーであり、社外の方々の経験や知識についてお話を伺うことができたのはとても多くの学びがありましたし、この取り組みの支援を行えたことはとても良い機会でした。今後も、こうしたコミュニティー活動や学生に向けた施策で、継続的に自身の経験やアイデア、課題感を共有し、誰かの気づきや行動につなげることができたら良いなと思っています。
――テクノロジー業界を目指す女性に一言メッセージをお願いします。
Yukakoさん: テクノロジーの世界は変化が激しく、新しい技術や課題に挑戦する機会は十二分にあります。その中で、自分が持つ固有の経験やスキルを活かしつつ、新たなプロフェッショナリティを築き上げることで成長できる環境だと思います。また、エンジニアと一口に言っても、多くの場合異なるバックグラウンドや専門性を持つメンバーとのコラボレーションを通じて業務を行います。そのため、専門的なスキルや知識だけでなく、ダイバーシティ&インクルージョンへの意識も働くうえでの大事な観点となります。それぞれのバックグラウンドに応じた強みを発揮できる環境は、仕組みや制度面だけでなく、個々人の持つ意識の高まりで築き上げられるもののだと思います。私たちのいる、セキュリティ業界では「Open by Default 」の考え方があり、発信した人のところに情報が集まる傾向にあると言われています。テクノロジー業界には多くのコミュニティー活動や業界団体があり、他のエンジニアとの交流に加わり、新たな気づきやアイデアを発信したり傾聴することで、ブラッシュアップができます。また、このように学びを共有し合うことがコミュニティーの活性化につながり、自身の学びを深めるだけでなく誰かの気づきやインスピレーションにつながります。
テクノロジーの世界は日々新しい知識や考え方を学ぶ機会が多くあります。どんなバックグラウンドの方も、持っている専門性や経験は独自の強みとなり、必ず活かすことができると思います。またテクノロジー業界に限らず、多様な人々が働く中でも、個々の能力や強みを最大限に発揮できるよう、今後も楽天グループでは、ダイバーシティ&インクルージョン促進に注力し、活動を続けていきます。
(注1)参考: OECD iLibrary logo ( https://www.oecd-ilibrary.org/education/education-at-a-glance-2023_e13bef63-en )
(注2)STEM教育とは、“Science, Technology, Engineering, Mathematics”=科学、技術、工学、数学の教育分野を総称する語
(注3)サイバーセキュリティ分野の女性を応援するネットワークコミュニティー。サイバーセキュリティ領域に興味がある女性をイベントやネットワーキングを通じてインスパイアし、ダイバーシティ、レプレゼンテーション(再表現)、対等を拡大していくことをゴールに掲げています。