No AI, No Future but No Human, No Future. ―「楽天新春カンファレンス2024」のテーマはAI!
2024年1月25日、毎年恒例となっている「楽天市場」の一大イベント「楽天新春カンファレンス2024」を開催しました。
楽天新春カンファレンスは、「楽天市場」出店店舗の皆様に向けて、楽天としての今後の方針や戦略を共有させていただくとともに、店舗さん同士の交流や店舗運営の新たな学びを得る機会として毎年開催し、皆様にご活用いただいているイベントです。会場内の商談ブースや、チャット機能を使ったオンラインでの質疑応答などを通じて、店舗さんとのコミュニケーションも活発に行われ、今年も大盛況となりました。今回の記事では、三木谷 浩史による基調講演や戦略共有会の模様をお届けします。
三木谷による基調講演 ダイジェスト
オープニングを飾ったのは、三木谷による基調講演です。今回のテーマは、何と言っても「AI」。以下は、講演内容をダイジェスト版でお送りします。
大きなテーマとして、これから楽天は「AI Empowerment Company」へと進化していくということをお話しできればと思います。インターネットが出現してから今までの間に、皆さんのご商売も、今までリアルでモノを売っていたり、あるいは通信販売で売っていたものがインターネット上で売れるというように変わってきたと思います。その後、クラウドが出現したり、あるいはスマートフォンが出現したりと様々な大きなイベントがありました。そして、AIの登場というのは、販売手段としてだけではなく、企業や社会の在り方、マネジメント、マーケティングの考え方などのすべてに関わってくる、インターネット以上の大きな革命なのではないかと思います。
楽天は、1997年5月に「楽天市場」をオープンし、様々な店舗さんが集まって楽しく商売していただくというところから始まりました。それからトラベルであったり、クレジットカードであったり、最近ではモバイルなどへ事業を拡大して「楽天エコシステム」を大きくすることで皆様のお役に立てるよう発展してきました。
「楽天エコシステム」の中でも大きな存在となっているのがスマートフォンです。令和6年能登半島地震でも、一番のニーズは「携帯がつながるようにしてほしい」ということでした。若い人に人生の選択肢として、自動車を持てるか、スマホを持てるかのどちらかを問うと、おそらく97%ぐらいの人はスマホを選ぶと思います。いまやスマートフォンは、人々にとってデパート・旅行代理店・学校・本屋・病院・銀行など様々な役割を果たします。つまり、スマホがない生活は考えられないわけです。
楽天がなぜ携帯キャリア事業に参入したか?それは、そんなスマートフォンを誰もが手軽に、そして自由に楽しめる社会を作りたい、つまり「携帯市場の民主化」をしたいと考えたからです。私どもの様々な取り組みをご評価いただき、「楽天モバイル」は顧客満足度も高く、加入者数も600万回線を超えました。
また、楽天が参入したことで、様々な物がインフレとなる中、携帯料金だけが下がっています。毎月の固定費として掛かる携帯料金を低価格にすることで、合計でおよそ4兆円、家計の負担軽減に貢献しました。
そして「楽天モバイル」を使っている方のうち約60%が「楽天市場」も使ってくれているという高いシナジー効果が出ており、それが「楽天市場」の流通総額を押し上げにつながっています。つまり、「楽天モバイル」はエコシステムの大きなアンカーであり、モバイルでの成功が、私どもが目標としている国内EC流通総額10兆円へとつながっているのです。
では、AIはここにどう関わってくるか?
AIは、世の中の在り方を根本的に変えるものです。商品構成や人材雇用、組織マネジメントなど、すべてがAIによって進化していきます。2023年のキーワードは「生成AI」でした。生成AIは、過去のデータに基づいて同じ解を出すような従来のAIとは異なり、人間のように”考えることができる”という点が大きな違いだと思っています。「新しいコンテンツを作る」など、人間にしかできないと思われていたことが、AIでもできるようになっていくのです。
ただし、AIはあくまでもツールに過ぎません。楽天としては、AIをどうやって皆様に使いやすく、わかりやすくしていくかということが大きなポイントです。オペレーション効率、マーケティング効率、クライアント効率といった3つの観点からAIを活用していただけるように「楽天市場」をパワーアップしていくことで、皆様のビジネス拡大につなげていきたいと思います。
2024年は、楽天が「AI Empowerment Company」として進化を進める最初の年です。楽天がAIに取り組むことにおける強みは3点あると考えています。まず、楽天は世界中でも類を見ない、リッチなデータを有しています。1億を超える楽天IDと、年間ポイン発行が6,600億円にも上る取引数に加えて、ショッピング・トラベル・銀行・証券・クレジットカード・モバイルなど、複数のサービスのデータが一つの楽天IDに紐づいています。
また、AI分野における戦略的パートナーとして、世界をリードしているOpen AI社と協業して、皆様に簡単にAIをご利用いただける「Rakuten AI for Business」という新たなプラットフォームを発表しました。
さらに、楽天では国内だけではなくグローバル展開も加速しており、現在従業員は100を超える国・地域から集まっています。そのなかでもエンジニアと研究者は世界で約6,000人、研究開発拠点も7カ国9都市に展開しており、優秀な人材を確保しています。
こうした強みを生かしながら、楽天グループ内ではAIの活用により、「トリプル20」、つまりオペレーション効率、マーケティング効率、クライアント効率、これらすべてにおいて20%の向上を目標として掲げています。
また、AIに適合するデザインへ進化させることで、人間にとってより直感的で優しく使えるサービスとなるように取り組んでいます。
たとえば「楽天トラベル」では、宿探しから予約後のカスタマーサポートまで、ユーザーのやりたいことをベースとしてAIコンシェルジュに相談できるサービスの導入を検討しています。また、宿泊施設様向けには、宿泊プランページの作成もAIでサポートしていく準備を行っています。簡単なプラン内容や部屋の情報を入力するだけで、ユーザー向けの宿泊プラン名の作成や、掲載画像の最適化ができるようになる予定です。ほかにも「楽天ラクマ」「楽天生命」「楽天証券」「楽天モバイル」など各サービスでAIの導入実績を積み重ねています。
では「楽天市場」ではどのようにAIを役立てていくのか?例えば「セマンティック検索(意味検索)」の実装です。「オフィスで使えるバッグ」と調べると、AIが商品の意味を画像も含めて認識したうえで検索して結果を提示してくれます。これにより、商品転換率が向上したというデータも出ています。
そのほかにも、商品登録における商品情報の入力や画像編集のサポートをしたり、お客様からの問い合わせ対応、店舗の分析をサポートしたりするなど、店舗オペレーション業務における様々な場面で支援していきます。一方で、私どものほうでも、ECC側で行う業務、マーケティングデータ活用、物流の効率化なども、AIを使ってさらに強化していきます。
楽天は2030年までに国内流通総額10兆円の実現を目指しています。そのためにAIの活用が極めて重要だと思っています。一方で、「楽天市場」は、人と人との有機的なつながりも大切にしています。私どもの原点というのは、店舗の皆様に元気になっていただく。そして、消費者の方々からも、「楽天市場」ってやっぱりいいよねと思っていただけることだと思います。そういった想いを込め、“No AI, No Future but No Human, No Future”というテーマを掲げていきたいと思っています。
以上、三木谷の講演のダイジェスト版でのご紹介でした。
講演後、ご来場いただいた店舗さんからは、「普通の店舗だとAIを使うのは難しいが、楽天が挑戦しているのは、店舗にとっては嬉しい限りなので、自分の店舗にうまく落とし込みたい」などの感想をいただきました。
2024年上期戦略共有会
基調講演の後は、「楽天市場2024年上期戦略共有会」へと続きます。
戦略共有会では、「楽天市場」における今後のマーケティング戦略や店舗コミュニケーション、物流の強化・AIの活用などについての具体的な説明に加え、「楽天市場」の役員より「店舗の皆様とより密接にコミュニケーションを取り、さらなるEコマースの発展に寄与できるように『楽天市場』をアップデートしていきたい」という強い思いが語られました。
今回も大盛況で幕を閉じた、楽天新春カンファレンス2024。「楽天市場」は、今後も店舗さんとの絆を大切にし、グループの総力を結集して皆様の成長を後押ししていきます。本イベントにご来場の皆様、またオンラインでご参加の皆様も、誠にありがとうございました。
※本イベントのダイジェスト動画はこちらからご覧ください。