国内 No.1のデジタルバンク社長が考える世の中に求められる銀行の姿とは?

インターネットの普及でデジタルバンクが登場したことにより、居住地の垣根を越えて銀行や銀行サービスを自由に選べる現代。そのような中、楽天銀行は、便利でお得なサービスの拡充に力を入れ、今や1,400万口座を超える日本最大級のインターネット銀行に成長しました。8月に開催した楽天グループ最大級の体験イベント「Rakuten Optimism 2023」では、楽天銀行株式会社 代表取締役社長の永井啓之が登壇。「銀行はサービス業」という観点から「これからの世の中に求められる銀行の姿」を語りました。

本記事では、「最も多くのお客様に利用されている国内No.1のデジタルバンク社長が考える世の中に求められる銀行の姿とは」の内容を、ダイジェスト版としてご紹介します。こちらより動画のアーカイブ版もご覧いただくことができます(要無料登録)。


楽天銀行の強みとは?

――はじめに、楽天銀行についてのご紹介をお願いします。

永井: 楽天銀行は2000年に設立されました。品川に本社があり、現在約1,000人の従業員がいます。他の拠点は、国内に福岡、海外では台湾に子会社の銀行があります。
歴史を遡りますと、2001年にイーバンク銀行株式会社として開業し、2008年に楽天株式会社(現 楽天グループ株式会社)と資本・業務提携を行ったことをきっかけに楽天グループ入りし、その後、名称を楽天銀行に変更しました。2021年には国内のデジタルバンクで初めて口座数が1,000万に到達、 そして2023年4月、東京証券取引所プライム市場への上場を果たしました。口座数は今現在1,400万を超え、預金残高については、2023年3月時点で9兆1,000億円となっています。

――どうして、口座数と預金残高が右肩上がりに成長しているのでしょう?

永井: 大きく分けて2つの要因があると思っています。 1つ目は、サービスが便利でお得であること。楽天銀行は支店を構えないインターネット上の銀行ですので、24時間365日どこにいてもサービスを利用できますし、操作方法やテクノロジーに詳しくない人でも簡単に使えるのが特長です。加えて、サービスを使うごとに「楽天ポイント」が貯まる仕組みになっているので、「便利かつポイントがもらえてお得」であることが、お客様に支持していただいていると思っています。

2つ目は、楽天独自の経済圏「楽天エコシステム」を活用できる立場にあることです。「楽天エコシステム」の巨大な顧客基盤、加えて楽天グループの信用と信頼を活用して新しいお客様を獲得しています。これは、楽天グループに属しているからこそ享受できるメリットと言えます。

この2つの要因があるからこそ、事業が伸びていると考えています。


お客様視点を重視したサービス業へ

――次に、永井社長が考える「今、世の中に求められる銀行の姿」を教えてください。

永井: 銀行は、お客様の大事なお金をお預かりしますので、安心安全なサービスであることが大前提です。そのうえで、 銀行は一般的には金融業ですが、お客様に目に見えないサービスを提供するという意味で、私たちはサービス業だと捉えています。サービス業であれば、お客様に自社のサービスを選んでいただくための競争が起きるのが本来の姿。しかしながら免許事業という特性上、良くも悪くもプレイヤーが限られているため、結果的に厳しい競争が起こる土壌にはなっていません。そのため、どの銀行も類似のサービスを展開しているのが現状です。
自行のサービスを磨いて、より便利なもの、よりお得なものを作って、お客様に我々をぜひ選んでくださいという競争が行われて然るべきだというふうに私は考えています。

――今後はレストランなど飲食店のようなサービス業さながらの激しいサービス競争が、銀行でも行われる時代になるということでしょうか。

永井: 個人的にはそうあってほしいですね。銀行が本来のサービス業に変わっていくためにはまだ時間が必要だと思いますが、少しずつ競争が行われるような環境に変わりつつあるように感じています。かつてはお客様が銀行に出向き、窓口でサービスを受けるのが主流でした。その場合は、北海道にお住まいのお客様にとっては、大阪にある銀行がどんなに魅力的なサービスを提供していても、大阪の銀行の支店に出向いてサービスを受けることは現実的ではありませんでした。しかし、今はインターネットで銀行サービスが提供されているので、例えば、北海道の方が大阪に拠点を置く銀行を選べる時代です。

逆に事業者側の銀行の立場では、北海道の銀行にとっては、北海道内の銀行だけでなく全国の銀行と競争しなければなりません。インターネットでのサービス提供が普及するにつれて、地域を問わず多くの銀行間でサービスの質や価格で競争せざるを得なくなっています。

――インターネットが普及したおかげで、私たち消費者は豊富なサービスの中から自由に選び、簡単に利用できるようになりました。永井社長から見て、銀行がサービス業としてお客様の支持を獲得するためにどのような姿であるべきと考えますか?

永井: 銀行には銀行法という法律をもとにして業務を行うといった事業の前提があります。しかし、お客様は銀行に対して様々なサービスを求めていらっしゃいます。例えば、給料が銀行口座に振り込まれ、そこから生活費の支払いや将来のための貯金もします。貯金だけでなく、株や保険で将来の資金を貯める方もいらっしゃいます。しかし、法律では預金は銀行しか受け入れることができないと決まっているわけです。一方、法律で、銀行は株式を販売したり、保険を作って販売したりすることはできないことになっています。そうすると、銀行は、お客様から将来のために資金を貯めたいと言われても、預金であれば取り扱いますが、株式や保険と言われると、証券会社や保険会社に行ってくださいということになります。

しかし、お客様は、少なくとも金融サービスについては銀行が幅広く手掛けてほしい、かつ使いやすく便利なものを作ってほしいと感じていると思います。法律は守ったうえで、銀行が、証券会社や生命保険会社、損害保険会社などと連携して、それぞれの会社のサービスと銀行サービスを組み合わせた金融サービスを作る。なおかつ、それらの提携のサービスが、別の会社のサービスを組み合わせたものでありながら、あたかも1つのサービスのように見える。こういった世界を作っていくことが求められていると思います。


異業種との連携で生まれる、新しい価値の創造

――楽天銀行は、すでに他の金融事業を営む会社と連携したサービスを提供していますか?

永井: はい、たくさん取り扱っています。一例では、「楽天証券」と連携して「マネーブリッジ」というサービスに取り組んでいます。「楽天証券」で取り扱う金融商品を、インターネット上にある「楽天銀行」の口座を経由してシームレスに取引できるサービスです。
これまでは株や投資信託を購入しようとすると、まず自分がお金を預けている銀行に連絡し、証券会社の自分の口座に振込依頼をしなければなりませんでした。その後、証券会社の口座への振込資金が到着したことを確認してはじめて、株や投資信託の注文ができるという流れでした。
しかし、「楽天証券」と連携した「マネーブリッジ」では、銀行口座から証券会社口座に振り込む手続きをスキップできます。お客様は、インターネット上で「楽天証券」に株や投資信託の注文をするだけです。あとは、購入資金は楽天銀行の口座から楽天証券に自動的に資金が送られますので、お客様は手間をかける必要がないという仕組みになっています。

――つまり、お客様からすると従来の面倒な手続きが省略できて、より効率的になったと。さらには、株の値動きに合わせたタイミングで売買できるなど、メリットが大きいですね。

永井: はい、そういうことです。多くのお客様にご好評いただいています。

――マネーブリッジ以外で他の企業と連携したサービスはあるのでしょうか。

永井: もう1つ面白い取り組みとして、銀行サービスのインフラを事業会社などに提供する 「Baas(バース/Banking as a Service)」があります。今年から第一生命さんと提携してBaaSサービスを開始しておりますし、2024年春からはJR東日本さん、ビューカードさんとご一緒する予定で準備を進めています。これは、第一生命さんやJR東日本さん、ビューカードさんに、「自分たちのお客様にどういうサービスを提供したいか」をちゃんとデザインしてもらったうえで、楽天銀行を所属銀行とする銀行代理業の許可を当局から得ることにより、我々が一緒に実現しますよというサービスです。

銀行をわざわざ作らなくても銀行サービスを自社の顧客に提供できるという意味で、いろいろな企業にとって可能性のあるサービスだと思います。我々にとっては異業種のお客様のアセットやノウハウと銀行サービスを組み合わせたサービスを提供できるということです。生命保険や鉄道と銀行サービスといった今までになかった新しい組み合わせが生まれることで、お客様の選択肢が増え、新たな可能性や楽しみを体験していただけるという意味で重要なサービスと思っています。

一方で、サービスメニューが広がっていくと、自分に合ったサービスを選ぶこと自体が複雑で大変だという問題が生じます。そこで必要なのが、銀行としてAIをどう活用するかといった視点です。具体的には、お客様の家族構成やサービスの利用パターンをAIが分析したうえでより最適なサービスをお薦めしたり、お薦めしたサービスをすぐに利用できるようAIがわかりやすくアシストする仕組みを設計するなどが挙げられます。

提携先様と新しいサービスを作って、お客様に選択肢を提供する。それをわかりやすく簡単に使えるようにAIがアシストするような仕組みを導入する。これによって「真のサービス業」になっていかなければいけないと思っています。

――これからの世の中が求める理想の銀行という意味では、今「楽天銀行」はどのフェーズにあるのでしょうか。

永井: 常により良いサービスを提供するという高い意識で取り組んでいるものの、山登りに例えるとまだ3合目ぐらいかもしれません。従来のサービスをより良いものに改善し、お客様のお悩みを解決するサービス開発を重ね、お客様に価値を提供することで「楽天銀行」ってすごいねと言っていただける銀行になれるよう、今後も努力を続けていきます。楽天銀行の進化に期待してください。

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