都内を走れ!「楽天無人配送」の新たな一歩
2024年11月6日、東京都中央区の晴海周辺エリアで、楽天の新しい挑戦が始まりました。小売店や飲食店の商品を地域住民のもとへ届ける「楽天無人配送」です。自動配送ロボットによる配送サービスを都内で提供することは楽天としても初の取り組みで、地域住民や業界内外から大きな注目を集めています。
サービス開始日に報道陣向けに実施した事業説明会とデモンストレーションでは、街中で配送ロボットが走る姿を披露。迅速な配送を実現しつつ、横断歩道や障害物での一時停止といった細やかな安全対策を徹底する様子は、未来の物流の可能性を感じさせる一幕となりました。
Rakuten.Todayの取材チームもこの日の説明会とデモに参加し、近未来のロボット稼働を間近で体感。楽天が描く無人配送の挑戦、そのワクワクする全貌を、レポートでご紹介します。
「楽天無人配送」デモンストレーション: 楽天が提供する新たな日常
2024年11月6日、東京都中央区の晴海周辺エリアで、「楽天無人配送」のサービスがスタートしました。サービス初日には、報道陣に向けた説明会とデモンストレーションを実施。都内での無人配送サービスの提供は楽天グループにとって初の試みということもあり、会場に展示された自動配送ロボットには報道陣からの熱い視線が注がれます。ロボット自体のサイズ感はスーパーの買い物かごと同じくらいありますが、曲線の柔らかいフォルムが人々に親近感を与えているようでした。
公道である歩道で実施したデモンストレーションは、提携店舗から商品を配送し、住民が受け取るシーンを想定して行われました。まず、担当スタッフがロボットの上部にある格納庫を開扉。荷物を収めて扉を閉めると、自動的にロックがかかり、「ロボットが動きます、ご注意ください」と言うアナウンスが流れて静かに動き出し、歩道を進み始めます。
スタート地点を出発してすぐに報道陣を驚かせたのは、その走行スピードです。法定内の最高時速5.4kmで颯爽と走る姿に、思わず「速い、速い!」と方々から声があがります。人間の徒歩のスピードが時速約4kmといわれているので、早歩きに近いスピードです。小走りで後ろから追いかける報道陣たちを尻目に、ロボットは駐車場の出入り口に差しかかると一時停止。車の出入りがなければ、再び走り始めます。
直進するロボットは、横断歩道に差しかかると少し手前から減速。搭載されているカメラで赤信号を確認すると静かに停止しました。横断歩道の横断は、遠隔監視をしているスタッフが周囲の安全を確認して、進行指示を出しています。あえて人による目視や判断を介入させることによって、安全性を確保しているところに高い安心感が持てました。
走行中には、ロボットの進路を担当スタッフが横切るという緊急停止を想定したデモンストレーションも行われました。ロボットは、飛び出してきたスタッフを瞬時に感知すると急ブレーキをかけて停車。歩行者検知センサーによるこの機能は、人混みの中でも自律的に走行できる未来の配送サービスを強く印象づけていました。
片道約510メートルの距離で行われたデモンストレーションは、地域住民のご家族が商品を受け取ることで締め括られます。スマートフォンに表示された暗証番号をお子様が入力すると、格納庫の扉が開いて商品を受け取って無事に配送完了。細かな動きの一つ一つが人への配慮を感じさせた本デモンストレーションにより、人や車が多く行き交う地域での利用でも安全な運行を心がけていることが分かりました。
約1万4,000戸の生活に変革をもたらす、充実のサービス内容
楽天グループが展開する「楽天無人配送」は、同社の無人ソリューション事業部によって実現したプロジェクトです。専用サイトから簡単に利用することが可能で、商品を選んで受け取り場所と時間を指定するだけで、自動配送ロボットが商品を届けてくれます。現在の配送エリアは、東京都中央区晴海1〜5丁目、月島や勝どきの一部地域となりますが、いつか自分の街でも未来の配送が実現するのだろうかと期待が募りました。
ロボットは決められたルートを通り、安全な指定地点でのみ受け渡しを行っています。例えば、マンションやオフィスのエントランス、地域の公園周辺など、安全性とアクセスの良さを考慮した62カ所におよぶ受け取り場所を指定可能。配送可能な商品は、カフェ、スーパーマーケット、飲食店の3店舗。温かい料理や冷たいドリンク、生鮮食品、日用品まで5,300点以上のアイテムを日々配送しているのです。
注目すべきは、受け取り時間を細かく指定できる点でしょう。注文から最短30分後から最長6日後まで、15分刻みで配送時間を選ぶことが可能で、都市生活者に嬉しい柔軟なサービス設計が魅力的です。ロボットは地域内のオペレーション拠点で待機しており、現在は4台を配備。利用者増加に伴い台数を増やすことも検討しています。
楽天が自動配送ロボットによる無人配送の分野に着手したのは、遡ること2019年。これまで神奈川県横須賀市や茨城県つくば市など多数の実証実験や定常サービスを行い、その経験を生かしてサービス改善を進めてきました。つくば市では、約3,000戸に1年以上にわたる定常サービスを提供し、住民からも高い評価を得たといいます。今回の晴海では、つくば市での取り組みを基に、対象世帯を大幅に拡大し、約1万4,000戸に向けてサービスを提供中。楽天では、晴海エリアの成功をバネにして他の地域への展開も視野に入れており、将来的には全国での無人配送サービス提供を目指します。
無人配送で描く未来図: 楽天が挑むラストワンマイルの最前線
楽天が無人配送の導入に取り組む背景には、社会が抱える物流業界の人手不足が大きく影響しています。今回スタートした「楽天無人配送」はこうした問題の解決策の1つとして生まれたサービスです。同日の説明会に登壇した、無人ソリューション事業部の牛嶋は、物流の最終拠点からお客様に商品が届くまでの「ラストワンマイル配送」の効率化が求められる中、無人配送技術によってその需要に応えていきたいという決意を示しました。
さらに牛嶋は、「当社の技術と経験で物流の課題に応え、便利で安全な無人配送サービスを届けたい」と、意気込みを語ります。無人配送技術の進化が地域住民の生活に新たな可能性をもたらし、今後は住民の日常に根付くインフラとしての普及も目指すその眼差しには、熱い情熱が感じられました。
サービスの実用性や利便性を体感したこの日、楽天グループは未来の配送に向けた新たな一歩を踏み出し、走りだしたのです。