日本の観光ブームの波に乗る「楽天トラベル」の戦略
※本記事は、以下の「Rakuten.Today(英語版)」で掲載された記事を抄訳したものです。
https://rakuten.today/blog/japans-tourism-boom-how-rakuten-travel-is-riding-the-wave.html
多くの外国人観光客が訪れる日本。2024年の訪日観光客数は2019年の最高値(3,188万人)を上回る見通しで、政府は2030年までに6,000万人の達成を目標に掲げています。
この日本旅行ブームの要因は何でしょうか。そして、このような環境で「楽天トラベル」が果たす役割とはどういったものでしょうか。「楽天トラベル」でグローバル部門のジェネラルマネージャーを務めるJeremyさんが教えてくれました。
ブームの要因:ペントアップ需要と円安
「ブームの要因は、二つほど挙げられると思います。1つ目は、観光客の旅先としてのいわゆる『ペントアップ需要』です。ペントアップ需要とは、一時的な要因で消費や投資が制限された結果、状況が改善したあとに爆発的な需要が喚起される現象です。新型コロナウイルス感染症の流行後、日本は外国人観光客の受け入れ再開が最も遅かった国の一つだったため、2022年10月にようやく門戸が開いた際にはあちらこちらでホテル予約などが急増しました」
「もう1つの要因は 歴史的な円安です。円安効果により、日本は多くの海外旅行者から経済的にも旅行がしやすい国として注目を集めるようになりました。以前は日本への旅行は比較的高価と見られがちでしたが、現在では手頃な価格で行ける旅先の一つとして選ばれています。しかも、商品やサービスの質は高く、文化的にもとても豊かで多彩な体験ができるのも魅力です」
「楽天トラベル」が目指す、グローバルプレーヤー
シンガポール出身のJeremyさんは2018年に楽天グループに入社し、現在は「楽天トラベル」が世界レベルで事業拡大を行うプロジェクトをリードしています。
「『楽天トラベル』は日本最大級のオンライン旅行予約サービスであり、事業全体の大半を日本人向けの国内旅行事業が占めています。一方で海外では『楽天トラベル』の認知度に課題があります。しかし、『楽天トラベル』は世界各地からの訪日旅行商品も提供しています。私のミッションは、海外の旅行市場に『楽天トラベル』のサービスや提供している商品を売り込むことです」
「私はこれまでの仕事において、多くの企業がアジア各地で事業の足場を築いたり、事業を拡大させたりする支援をしてきました」とJeremyさんは話します。「その経験がすべて今の職務にも活きており、国内事業をグローバルでも通用する事業へと成長させることは大きな仕事だと思っています」
この目標の達成に向けて、Jeremyさんのチームは「楽天トラベル」のインバウンドサイト を抜本的に見直す取り組みを始めました。その結果として誕生したのが、より洗練されたデザインでユーザーフレンドリーなページです。海外旅行者向けに8言語にてサービスを展開し、15の通貨での決済に対応しています。
今回のリニューアルで困難だった点の一つは、サイトのデザインをグローバルな観点や嗜好に合わせることだったとJeremyさんは言います。「日本語版とグローバル版のページを比べると、見た目が大きく違うことがお分かりいただけるかと思います」
日本の良質さを売り込む
多くの競合がひしめくOTA(Online Travel Agentの略で、オンライン上で旅行予約を取り扱うサービスの総称)のグローバル市場で、「楽天トラベル」は日本が世界に誇る「質の高さとサービスのレベルの高さ」を前面に押し出しています。
「正直に言えば、『楽天トラベル』はグローバル化競争において他社に追いつくため様々な試行錯誤をしています。真正面から対抗してもかなわない。頭を使って競争を勝ち抜かなくてはなりません。そこで、日本の特長としてよく知られている高品質の商品と質の高いサービスに注力し、独自のセールスポイントにしたのです」
量より質を重視するこのアプローチは、日本の「おもてなし」の精神に深く根付いています。
「質の高い体験とサービスを厳選して提供しています。お客様は休暇を楽しもうと、貴重なお金と時間を掛けていらっしゃるわけですからね」
こうした「良質さにコミットしていく姿勢」は、単なるセールストークとしてではなく、サービスページそのものに組み込まれています。「楽天トラベル」のインバウンドサイトには、”Japan Quality”バッジを導入しています。
「”Japan Quality”のバッジが付いたホテルを絞り込むことができるようになっています。このバッジは、『楽天トラベル』が定める基準を満たす一部のホテルだけに付けられているので、お客様には選んだホテルが高い基準に達していると安心していただけます」
多彩な体験と隠れた名所
ホテル滞在だけにとどまらないサービスを提供している点も、「楽天トラベル」の特長の一つです。伝統的な旅館や温泉からユニークな食体験まで、本格的な日本らしい様々な体験を紹介しています。
「この点は、他のグローバルなOTAにはないものだと思います。まだ日本を訪れたことのない旅行者にとって、豊富な画像とコンテンツでこれほど詳しい情報を得ることができるのは『楽天トラベル』ならではの魅力だと思います」とJeremyさんは語ります。
また、京都など人気の高い観光地でオーバーツーリズムへの懸念が高まる中で、「楽天トラベル」ではまだあまり知られていないスポットも積極的に紹介しています。
「最近になって人気が出始めている比較的小さな都市の情報やコンテンツも豊富に掲載しています。こうした情報提供は、日本国内にある、いわば“隠れた名所”に需要を分散させるのに役立ちます。そういった場所にも、有名どころの観光地と同じくらい、むしろもっと美しいといえる面も多々あります」
テクノロジーを活用してワンランク上の体験を
「楽天トラベル」は最先端のテクノロジーを駆使して、観光ブームがもたらす懸案への対策やワンランク上の旅行体験の創出に取り組んでいます。例えば、AIツールを利用して宿泊施設の効率や生産性向上を支援する取り組みとして、迅速なプラン作成や問い合わせの自動翻訳などを行っています。
さらに、安定したグローバルなカスタマーサービスシステムの構築にも注力しています。
「海外のお客様でも利用しやすいよう、現地の電話番号を使用し、各国の言語に対応したカスタマーサービスを提供しています。この多言語によるサポートは日本のサービスデスクとも連携しており、各宿泊施設とデスクとは日本語でスムーズにコミュニケーションをとることができます。」
「楽天トラベル」が目指す次のステップ
「2024年になってから、訪日旅行者数はすでにコロナ禍以前の数字を上回っています。パンデミックによるペントアップ需要であるかどうかにかかわらず、右肩上がりの傾向が続いています」
「楽天トラベル」が日本の観光ブームの波に乗り続ける中で、Jeremyさんのチームはさらに大きな目標を見据えています。
「現在のところ、『楽天トラベル』は訪日旅行者と日本の国内旅行者向けのサービスです。近い将来には、世界のどこからでも、どこへでも行けるようにすることが目標です」
世界中のあらゆる地点を結ぶ旅行を提供するというビジョンは、「楽天トラベル」が次に目指す領域です。「それが実現すれば、本当の意味でどこにも引けをとらないグローバルなOTAになれると考えています」