共にECの未来を。「楽天EXPO 2021」三木谷基調講演レポート

「楽天市場」出店店舗さんに向けに毎夏開催しているイベント「楽天EXPO」。楽天のビジョンや戦略について、店舗さんと共有させていただくとともに、店舗さん同士が出会い、学び合い、つながりを深めていただくことを目的に実施しています。

今夏は、昨年に続きオンラインでの開催でしたが、約3万人もの店舗さんにご視聴(ご参加)いただくことができました。本記事では、社長の三木谷による基調講演の内容をご紹介します。


皆さんこんにちは。今年の「楽天EXPO」こそは、リアルで皆さんにお会いできるかなと思っていたのですが、新型コロナウイルスがなかなか手ごわいということもあり、オンラインでの開催となりました。しかし、本日2万5000人以上の方が参加してくださり、これこそがオンラインとオフラインの融合なのかなと思っております。

楽天の創業は1997年。今年で25年目になります。もともと「楽天市場」は、「地域の小さな店舗さんや様々な企業さんを助けたい」「日本を元気にしたい!」という思いを持った若者が集まりつくった会社です。当時は、とにかく「自由にいろんなことができたらいいな」と始めたのですが、やはり消費者目線で見ると「安心して買える」とか、あるいは「買いたい商品をより見つけやすい」ということが重要だったりします。その中で、ある程度のルールを作らせていただき、ご不便もあろうかと思いますが、皆さんにご協力をいただけたことで、ここまで来られたのかなというふうに思っています。

例えば過去を振り返ると、二重価格表示や決済方法の統一など様々な改善を重ねることによって、より店舗さんの特長が生かせるという結果につながりましたし、一緒に取り組むことでサイバー犯罪を防止できました。

急加速するECの成長

2021年度、楽天の国内EC流通総額の目標は約5兆円。上半期の国内EC流通総額は2.3兆円ということで、前年同期比で+17%成長、2年間の平均成長率(ショッピングEC流通総額)をみても+23.6%と伸びています。「新型コロナウイルスの影響でこの期間だけ伸びたんじゃないか?」と思われがちですが、実際はコロナによって増えたユーザーが定着し、引き続きユーザー数も拡大しています。

「楽天市場」の一番の特長は何といっても店舗さんです。店舗さんが元気で、そして本当にお客様のことを思ってご商売されています。その結果、この1年半でNPS(注1)が9ポイント上昇し、「Webブランド指数総合ランキング」(注2)では、「楽天市場」が1位を獲得しております。この結果は、店舗の皆さんの努力と、そして「楽天市場」に関わる様々な企業さん、あるいは我々のスタッフが一致団結して品質の向上にこだわってきたからかなと思っております。

モバイルがもたらす急速なユーザー・利用拡大

「楽天市場」では、モバイル経由の流通が、いわゆるデスクトップやラップトップのパソコン経由をはるかに上回っており、モバイルが今後の成長の源泉であると思っています。モバイルの普及により、例えば今まで家にインターネット回線がなかった人もインターネットを使えるようになりましたし、これからは高齢者の方々の利用も増えていくだろうと思っております。

では、そのモバイルにおける楽天の戦略はどうなのかということですが、楽天のモバイル事業の大きな戦略は3つあります。1つ目は「MNOの単独事業としての成長」、2つ目は「エコシステムとの連携」そして3つ目が「グローバル展開」です。

携帯電話のデータ利用量は年々増加しています。今後ますます私たちの行動の中心がモバイルになってくるだろうと思っています。つまりは、単なる通話やインターネットを閲覧する機器ということではなく、テレビやラジオになり、財布にもなり、また将来的には、皆さんの健康管理をするパーソナルドクターにもなる…。このモバイル端末が世の中に与える社会的影響は非常に大きくなっていくということです。

そんな中、ひとつ大きな問題が出てきたわけです。それはデータ利用量が大きくなることにより、携帯料金の負担も大きくなるということ。2020年の東京都のスマートフォン利用料金は、8,715円/月。4人家族であれば1カ月3万円以上、年間で30万円以上、10年間で400万円近くかかってしまうわけです。モバイル料金のウォレットシェアを下げる/適正料金に近づけることで、買い物や旅行など、その他娯楽に向けてもらおうと、「楽天モバイル」は、「Rakuten UNLIMIT VI」という料金プランを実現したわけです。1GBまでは0円、3GBまでは980円、20GB1,980円、20GB以上は無制限で2,980円/月。おかげさまで、すでに「楽天モバイル」の契約数(MNOとMVNOの合計)は、500万回線を突破しました。楽天モバイルユーザーを早期に2,000万~3,000万規模へと拡大したいと思っております。

それが「楽天市場」や店舗さんにとってどんないいことがあるのか?ということですが、実際に「楽天市場」の流通拡大に大きく貢献をしています。

「楽天モバイル」ユーザーにおける楽天の新規ユーザー比率は19%、「楽天モバイル」契約以前に「楽天市場」の利用経験がなかったユーザーのうち、3人に1人が、契約後半年~1年以内に「楽天市場」を利用されています。また、「楽天モバイル」契約の前と後で、「楽天市場」における年間のお買い物金額が77%も増加。また、「楽天モバイル」契約後、半年でダイヤモンド会員の比率が10ポイント増加。いわゆる顧客ロイヤリティーを高めるという意味においても、このモバイルのサービスは極めてパワフルであるということが言えるのではないかなと思います。 

繰り返しになりますが、「楽天市場」と「楽天モバイル」とは非常に親和性が高い。これからは、「楽天市場」だけをプロモーションするのではなく、総合的なサービスを提供することによって、「じゃあショッピングを楽天でしましょう」というふうになってくのではないかなと思っています。

きめ細やかな改善による「楽天市場」のさらなる進化

我々は、店舗さん、お客様、楽天グループが三位一体となり、より便利でより楽しくて、より安全なショッピングプラットホームを実現していきたいと思っております。

共通の送料込みライン

皆さんのご協力もありまして、7月時点で9割以上の店舗さんに、共通の送料込みラインを導入いただいております。これは「楽天市場」の堅調な成長のひとつの大きな要因であり、皆さんのご理解に感謝しております。そして、まだ導入されていない店舗さんは、ぜひご参加いただければと思っております。

配送の効率化

ひとつ、今年の大きなアナウンスメントとして、物流領域において、日本郵便株式会社さんと共同でJP楽天ロジスティクス株式会社を設立させていただきました。

自社グループおよび提携企業によって、既存物流拠点のシームレス化、新規共同物流拠点の構築、新たな物流DXプラットフォームの構築を目指します。やはり、全国津々浦々ユニバーサルサービスとして、統一された料金で配送を迅速に実現していくということであれば、すでにネットワークを持っている日本郵便さんと組ませていただくことで、さらに効率化され、便利で、経済性の高いロジスティックサービスを皆さんに提供できるだろうと思っております。

ポイント利用の一層の拡大

ポイント利用の一層の拡大ということですが、スマートフォンユーザーに使われているポイントを見ると「楽天ポイント」が圧倒的ナンバーワンで、全体の42.4%が利用、そして累計発行数は2.5兆ポイントを突破しました。発行ポイントは、店舗さんにご負担いただいているもの以外にも、「楽天カード」「楽天銀行」「楽天トラベル」など、様々なところでポイントが発行されております。使い勝手もいいし、どこでも使えるし、そして楽しいというポイントにしていきたいと思っております。

楽天グループの様々なサービスを使っていただくとますますお得になるという「SPU」(スーパーポイントアッププログラム)により、サービスの複数利用が増加しています。1人あたりが使っているサービス利用数の年平均成長率は+25%でした。この数字は、例えば、3つのサービスを使っていれば次の年には4つぐらいのサービスを利用するということになります。

そして、ポイント運用の累計利用者数は500万人を突破しました。ポイント運用において、「貯める」、「殖やす」、「使う」の循環モデルができあがっており、ポイントというものは、単純にお金がキャッシュバックされた以上の感覚があるのではないかなというふうに思っています。「楽天PointClub」のアプリダウンロード数も1,500万を突破しました。「楽天ポイント」のロイヤルカスタマーがどんどん増えているということです。

店舗さんからすると、「楽天市場」でユーザーに付与されたポイントが他で使われているんじゃないかと心配される声もあるかもしれませんが、「楽天市場」における「楽天ポイント」の利用額は、「楽天市場」で発行したポイントの1.6倍。つまりは、エコシステムの一番のメリット享受者が「楽天市場」なのではないかなというふうに思ってます。

エコシステムを拡大することができれば、2030年ぐらいには、楽天グループの国内EC流通総額を10兆円規模へと成長させることも可能だと思っております。脱コロナへ向けて 楽天グループでは、「楽天市場」の店舗さんを中心に、日本の新しい経済の形をつくろうということで一緒にやらせていただいているわけですが、喫緊の課題は、やはりこのコロナの状況からいかに脱却するかだと思っております。確かにEコマースという意味においては、短期的にはポジティブだったのかもしれません。ただし、中長期的に見ると、日本の経済が発展していく、日本の消費マーケットの拡大こそが、「楽天市場」にとっても、店舗さんにとっても、そして楽天グループにとっても極めて重要だと感じております。

我々も、ソーシャルディスタンスの啓発活動や、政府への呼びかけなども行いながら、いわゆるコロナ危機からの脱却に向けて努力をしてまいりました。この危機を脱却するには単純に政府に任せるだけではなく、5月の頭に私も総理と面会し、「ワクチンなくしては考えられない」と職域接種の重要性についてお話しさせていただきました。結果、楽天グループの「ヴィッセル神戸」が管理している「ノエビアスタジアム神戸」を利用した神戸市民の方への接種機会の提供をはじめ、店舗さんを含む職域接種の実施などを通じて、大きく寄与できたのかなと自負しております。

共にECの未来を

我々は、店舗さん、社会、楽天グループ、これらが三位一体となって共に進んでいくという未来を心に描きながらやってきております。共存・共栄しているからこそ、楽天グループというのは世界に類を見ない発展を遂げていけるのではないかと思っております。単純に儲かるだけではなくて、皆さんの笑顔というものをこれからも大切にしながら、楽天グループ一丸となってがんばっていきたいというふうに思っておりますので、これからもよろしくお願いします。本日はご清聴いただき、ありがとうございました。

(注1):NPS(Net Promoter Score=NPS®)は、ユーザーロイヤルティを測る指標であり、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリクス・システムズの登録商標。
(注2):出典  日経BPコンサルティング「Webブランド調査2021-春夏」

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