楽天のユニークなフィンテック経済圏と進化するキャッシュレス決済
今年10月に2日間にわたって、楽天グループとして最大規模のイベント「Rakuten Optimism 2021」を開催しました。
多くの方にとって新たな発見や喜びのきっかけとなる場を提供することを目的に、有力企業のCEOやクリエイターなど総勢51名による全25のトークセッションを実施。今回は、コロナ禍のため、完全オンライン形式(参加費無料)で行いました。
本記事では、これらセッションのうち、フィンテック市場の潮流と、その中で楽天が牽引するフィンテックサービスについて語られた2つのセッションをご紹介します。
加速するキャッシュレス化。フィンテック企業が牽引する金融業界
はじめにご紹介するのは、楽天グループ株式会社 代表取締役副会長執行役員の穂坂 雅之による講演「より身近な金融サービスに – ユニークな楽天フィンテック経済圏 -」。
穂坂はまず、キャッシュレス社会の広がりについて次のように話しました。
「日常生活で現金を使わない生活、キャッシュレス社会が世界的に広がっています。しかしながら、日本のキャッシュレス比率は2018年に24.2%、 2020年でも29.7%程度です。政府は2025年に40%を目標にキャッシュレス化を促進していますが、韓国・中国はもちろん、欧米と比べても、日本のキャッシュレス市場はまだまだ拡大の余地があると言えます。
こうした中で、日本を有望市場とみて、大きな資本力を持つ海外企業が日本の決済市場へ本格参入する動きもみられており、今後、日本のキャッシュレス化は一段と加速していくと考えています」
こうした世界的なキャッシュレス化の背景について穂坂は、「金融業界の牽引役がフィンテック企業へシフトしたこと」を挙げています。
「インターネットを中心としたテクノロジーの発展により、スマートフォンといった高性能な機器を常に持ち歩くライフスタイルに変化が生じ、金融のプレイヤーも、大手銀行や証券会社から、ネット銀行やネット証券、モバイルペイメント、ネオバンキングなどのサービスを提供する新興のフィンテック企業にシフトするというトレンドがグローバルに進行しています」
楽天のフィンテック事業の歩み
楽天は、2003年にオンライン証券へ参入、2005年にクレジットカード、2009年にはオンライン銀行、電子マネーなどの事業へ参入を果たしています。「これらの事業への参画を契機に、金融ビジネスの分野に本格的に乗り出しました」と穂坂は楽天のフィンテック事業の歴史を振り返ります。
また、その後についても「お客様が希望するあらゆる決済手段や金融サービスを提供するとともに、各サービス間において連携を強化しました」と話します。実際、2013年には生命保険、2014年にポイント事業、2016年にスマホ決済サービス、2018年に損害保険、ペット保険などを開始し、商品ラインアップを拡大してきました。
最も身近で利用頻度の高い「カード決済」を中心に据えたフィンテック経済圏
楽天のフィンテック経済圏の特徴について、穂坂は「『楽天カード』という最も身近で、利用頻度の高い『カード決済』を中心に据えて、『楽天カード』の拡大・成長により、経済圏が大きく成長している」ことだと話します。
「楽天カード」の累計発行枚数は2,300万枚(2021年6月時点)。穂坂は急成長の鍵となった3つのマーケティング施策を紹介しました。
1つ目に挙げたのは「楽天カードマン」。はじめはテレビCMを中心とした広告展開をしました。2018年にはYouTubeとInstagram、2019年にTwitter、2020年にAbemaTVなど、Webやソーシャルメディアを活用した手法を取り入れました。「環境に応じて、積極的に新しいメディアを活用していく方針」と話します。
2つ目は「CLOビジネス」。これは「Card Linked Offer」の略で、クレジットカード利用者の属性や決済履歴に基づいて、カード会社のWebやアプリの利用明細画面上などで、クーポンや特典を表示させる仕組みのこと。「加盟店様とカード会員様をつなぐマーケティングパートナーになるため、加盟店様へ決済機能を超えた価値を提供しています」と言います。
3つ目は今後の成長にも大きくつながる「2枚目のカード」発行。「利用シーンに合わせてカードを使い分けたい」、「異なる国際ブランドを持って使う機会を増やしたい」、「好きなデザインのカードを持ちたい」などのニーズに応えるものだと説明し、「サービス開始から3カ月間でカード発行枚数は50万枚を超え、取扱高も順調に増加しています」と語りました。
「楽天カード」の中期目標は「トリプル3」
「カード決済」を中心に据える楽天フィンテック経済圏。穂坂は、「カード発行枚数3,000万枚/ショッピング取扱高30兆円/取扱高シェア30%の『トリプル3』(注)を、これからの中期目標といたします」と、「楽天カード」の次なる成長を見据えて宣言しました。
(注)2021年6月時点の楽天カード発行枚数2,300万枚/2020年ショッピング取扱高は11.6兆円/取扱高シェアは2021年5月時点で21.1%。
中期目標について穂坂は次のように話し、スピーチを締め括りました。
「『トリプル3』の達成によって、米国の4大銀行に割って入る大きさとなり、グローバルで見ても、存在感のある規模に成長することを確信しています。これは『楽天カード』がグローバルな展開を行って達成する目標ではなく、国内市場を押さえるだけで達成できる目標です。それだけ日本のマーケットにはポテンシャルがあるということです。
数年内に『トリプル3』を達成し、『楽天カード』がさらに拡大・成長することによって、フィンテックを含めた楽天経済圏をさらに成長させ、より強固な顧客基盤、収益基盤を形成していきます」
キャッシュレス決済市場の拡大のために
続いて、楽天グループ株式会社 常務執行役員兼楽天ペイメント株式会社 代表取締役社長の中村 晃一による講演「進化、浸透する楽天のキャッシュレス決済」をご紹介。
中村は冒頭、直近でキャッシュレス比率が30%近くまで拡大してきた日本の決済市場について、「政府主導のキャッシュレス・消費者還元事業が行われたことや、コロナ禍における意識の変化がキャッシュレス浸透の要因となった一方で、キャッシュレスよりまだ現金のほうがよいと考えられている店舗さんもいらっしゃいます。より簡便で、コストよりもメリットのほうが大きいと感じられるサービス提供を行っていくことが、我々事業者としての課題です」と説明しました。
そして、店舗におけるキャッシュレス導入のメリットのひとつと考える「楽天ポイント」について、次のように説明します。
「『楽天ポイント』というのは、活発な消費行動の結果獲得されるポイントです。例えば、『楽天市場』でのショッピング、『楽天トラベル』で国内・海外の旅行の予約、『楽天カード』を使ってお気に入りのお店での買い物、はたまた『楽天証券』での金融商品購入など、非常に豊かな消費行動を、より活発に行う方ほど『楽天ポイント』を多くお持ちになります」
また、「『楽天ペイ』は幅広いお客様にご利用いただいており、実際の利用状況を楽天会員ランク別に分けますと、64%はダイヤモンド会員様によるものですので、サービスを導入した加盟店さんからみれば、ぜひ来店してもらいたい購買意欲の高いお客様ということになります」と話しました。
矢野経済研究所が今年9月に発表した調査では、2020年度のコード決済取扱高シェアは、 「楽天ペイ」は21.2%で第2位となっています。市場そのものの規模はクレジットカードや電子マネーに比較するとまだ小さく、「複数プレイヤーが競争しながらマーケットを広げている黎明期にある」と説明しました。
フルラインアップで提供する楽天のキャッシュレス決済サービス
そうした黎明期のマーケットの中で楽天は、スマホ決済、電子マネー、ポイントカード、クレジットカード、銀行、それから暗号資産の取引所までフルラインアップのキャッシュレス決済サービスを提供。「国内・海外を見ましても最もカバー範囲の広いフィンテックプレイヤーの1社といえると思います」と中村は話します。
「楽天ペイ」は、これらグループのフィンテック基盤を生かして多種多様な決済サービスをひとつのアプリに集約。さらには、「楽天ペイ」アプリ内から「楽天ポイント運用」や「Rakuten Pasha」、「楽天GORA」など、決済に限らない他サービスにスムーズにアクセスできる動線を設けることで、「決済アプリとしてのシンプルさを保ちつつ、利便性を向上させ、豊かな消費を賢くスマートに行なう多くのお客様から支持されています」と説明しました。
日常的に親しみやすいキャッシュレス決済サービスを
最後に中村は、「ご利用いただく皆様に『なかなかいいね!』と言っていただけるような、日常的に親しみやすいキャッシュレスサービスの実現に向けて、サービスの進化と加盟店網の拡大を続けていきます」と、キャッシュレス決済サービス事業者としての意気込みを語り、スピーチを締め括りました。
それぞれの講演の動画全編は、以下からご覧いただけます。