10兆円への道。「楽天新春カンファレンス2022」三木谷基調講演レポート

「楽天市場」出店店舗さん向けに毎年開催しているイベント「楽天新春カンファレンス」。楽天のビジョンや戦略について、店舗さんと共有させていただくとともに、店舗さん同士が出会い、学び合い、つながりを深めていただくことを目的に2003年から実施しています。

今年は、リアル会場とオンラインを組み合わせたハイブリット形式で開催。過去最多となる約3万人の店舗さんにご視聴(ご参加)いただきました。本記事では、社長の三木谷による基調講演の内容をご紹介します。


「水は高きから低きに流れる」

今年は楽天創業25周年の年でございます。思い起こせば、1997年「インターネットで人はモノを買わない」と言われていた時代にサービスをスタートしたわけですが、今ではインターネットは生活に欠かせないインフラとなりました。

私のセオリーは、「水は高いところから低いところに必ず流れる」ということです。実際、この25年間で、流通がインターネットショッピング中心になりつつあるだけでなく、例えばスマホ決済であったり、金融からレストランの予約・注文、働き方、あるいはエンターテインメント、コミュニケーションであったり、あらゆるものがデジタル化しました。

楽天の国内EC流通総額は5兆円を突破

昨年「楽天市場」を中心とする楽天の国内Eコマース流通総額が5兆円を突破しました。1997年にサービスを開始し、そして1兆円を達成するまでに、2009年ですから12年ぐらいかかっているんですね。そこから2兆円、3兆円、4兆円へと成長し、そして4兆円から5兆円までは1年間で達成したということで、成長速度はどんどん加速をしているわけです。

ただマーケットを見てみると、世界の物販におけるインターネットショッピングのシェア、いわゆるEC化率というのは、2020年の段階で17.8%、中国はすでに40%というデータも出てきております。これに比べて日本は、2017年の5.8%から2020年は8.1%ということでだいぶキャッチアップしてきてはいますが、少し差が開いてしまっています。

この倍以上ある差が埋まるのかというと、冒頭「水は低い方に流れる」と申し上げました通り、インターネットショッピングの高い利便性はもちろん、今後都心部でなくて地方で働く人もどんどん増えてくることも考慮すると、日本のEC化率もいずれ20%に到達するだろうと。20%、すなわち今のマーケットサイズの2倍超になると考えれば、現在の国内EC流通総額5兆円を倍の10兆円にするという目標も実現できるんじゃないかなと考えています。

本日は、この10兆円に向けた楽天としての取り組みについて、少しお話をさせていただきたいと思います。

モバイル・エコシステムからの還流

まず1つ目に、「楽天モバイル」から「楽天市場」への還流についてお話しさせていただきますと、「楽天モバイル」を契約いただいた方は、「楽天市場」における月間の購入額が大体1.7倍増えるというデータがでています。「最初は契約時の進呈ポイントで普段より購入されているのかな?」とも思っていたんですけど、そうではなく変化が恒常的に続いているんですね。

それから「楽天モバイル」ユーザーの約60%が「楽天市場」をクロスユースしているという調査結果も出ています。これは他の携帯キャリアさんに比べて圧倒的に高い割合です。なので「楽天モバイル」の契約数が今500万くらいですけども、これが1,000万、2,000万、3,000万と増えていけば、自ずと店舗さんの流通総額は爆発的に伸びていくと考えていただいていいかなと思っています。

このモバイルを中心としたプラットフォームに、ECもフィンテックも、デジタルコンテンツも乗っかっている、このエコシステムをより潤滑なものにしていくことで、各サービス間のクロスユースがさらに活性化していきます。例えば「楽天西友ネットスーパー」から「楽天市場」に入ってきたり、「楽天市場」から「楽天ファッション」に行って、また「楽天市場」に戻ってきたり、様々な形でエコシステムが拡大しています。

また、フィンテック、これも「楽天カード」だけではなくて、「楽天銀行」や「楽天証券」、「楽天ペイ」、「楽天Edy」、「楽天生命」、「楽天損保」と、様々なデータを活用しながら、より利便性を高めていくと、よりエコシステムが強固になっていくわけです。

よって、先ほど申し上げました全体的なEコマースのマーケットサイズ自体が2倍3倍になりますよという話に加えて、「楽天エコシステム」をフルに活用しながら、10兆円達成にもっていきますので、これはもう絵空事ではなくて、実現可能な目標だということです。

原点の追求「Shopping is Entertainment!

10兆円に向けて、2つ目のポイントは、「Shopping is Entertainment!」。原点を大切にしていきたいなと思っております。「楽天市場」はとにかく、「店舗さんのお役に立ちたい」、「お客さんに楽しんでいただきたい」という想いから、「Shopping is Entertainment!」というコンセプトでやってきました。

ショッピングをより楽しくお得なものにしていくための代表的な施策「スーパーポイントアッププログラム」は、年平均28%(SPUの利用者数×一人当たりのサービス利用数)ずつ成長しています。

「楽天ポイント」も、エンターテインメント性を上げていくアセットの一つです。昨年は「5,300億」ポイント発行しました。使い方も様々で、ポイント投資ができたり、最近であれば、私もやっていますけども、ビットコインにも交換できたり、「楽天キャッシュ」であれば人に送ることもできるというわけで、一番もらって嬉しい、最も貯めている、一番貯まりやすいという評価をいただいております。

皆さんの利用デバイスも大きく変化しました。2006年夏の「楽天EXPO」で、私は「モバイル!! モバイル!! モバイル!!」という話をさせていただきました。「楽天市場」も将来的にはモバイル経由の流通が70%ぐらい行きますと話した際、多くの方に「そんなことはないだろう」と言われました。それが今年の元旦には、約90%がモバイル経由でした。

そういう中で、いかにユニークなエクスペリエンスを提供するかということで、例えば、ショッピングSNSの「ROOM」では、自分が買ったものとか、使ったもの、見て良いと思ったものを投稿できる。そしてそれがアフィリエイトになるというサービス。これも飛躍的に増加しておりまして、「ROOM」経由の購入者数は、2年間で2.5倍になりました。

それからライブコマースにも、どんどん力を入れていきます。CtoC市場も大きくなっていますし、商品のプロモーションも今までのようなマス広告以外に、ライブビデオを使ったプロモーションというのが、これから大きくなっていくだろうと思っております。中国に加えてアメリカでも、もう4兆円ぐらいのマーケットになってきて急成長していますので、日本でも普及していくだろうというふうに考えております。

そしてもう一つ、「楽しいお買い物体験」に欠かせないのが、「わかりやすく快適である」ということで、皆さんと一緒に取り組んでまいりました「共通の送料込みライン」の導入。これも皆さんのおかげで92%の店舗さんに導入いただけました。今までは、「楽天市場」は「いろんなお店があって楽しいんだけど、送料がバラバラなんだよね」と敬遠してしまうお客さんもいたわけですけど、送料のわかりやすさに関する評価も、導入前と比べて14.9ポイント増加しまして、「楽天市場」は送料がわかりにくいという声も、ほとんどなくなってきました。

また、配送においても、この後もお話しますけど環境問題について考えていかないといけないと。私も「楽天スーパーSALE」で何でも買っちゃうもんですから、1週間ぐらいずっとピンポンピンポンと鳴りまくりでして。これをですね、複数のショップで購入した商品を取りまとめて、一括で持っていこうというアプリを日本郵便さんと連携して作りまして、運用を開始しております。

このような改善を繰り返すことによって、「楽天市場」のNPS(Net Promoter Score:顧客推奨意向度)スコアも、この5年間でなんと9ポイントも向上しました。引き続き、品質の向上、サービスの向上に向けて、皆さんと一緒に頑張っていけたらと思っています。

テクノロジー活用

3つ目は、テクノロジーの話でございます。やはりインターネットショッピングも、より合理的な仕組みでスケーラブルにやっていこうということで、「PIOP」という価格と在庫の最適化エンジンを開発しました。どれくらい在庫を入れたらいいか、どのくらいの価格にしたらいいか、AIが自動的に算出してくれるというものです。当然属人的にやっていくというやり方もあると思いますが、うまくAIを活用していくことによって、皆さんのビジネスをより大きくするサポートができるのではないかと思っております。

配送面におきましては、人口も減ってくるということもあり、物を運ぶ、あるいは過疎地、遠隔地にどうやって効率的に商品を運ぶか考えていかないと、ということで、ドローンやUGV(自動配送ロボット)による配送サービスというものを始めています。今まで色々な規制があったんですけども、国も、かなり前向きにやっていこうとしていますので、コスト的にも実現可能性が出てきたのかなと思っています。

グリーン!! グリーン!! グリーン!!

最後に、「グリーン!! グリーン!! グリーン!!」ということについてお話しさせてください。2015年に採択された「パリ協定」で「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度におさえる努力をする」という話が出ました。ところが、ここ10年間ですでに1度以上、世界の平均気温が上がってしまいました。これが2度上がると、例えば、ロシアの永久凍土が溶けて、そこに眠っているメタンガスが排出されると言われています。もうこの問題を避けては通れない。国民一人ひとり、あるいは一つひとつの企業が、責任感を持って取り組んでいくことが求められる時代に入ったと思っています。

楽天グループとしても、「RE100」(ビジネスで使用する電力をすべて再利用可能なエネルギーに切り替えるという国際的なイニシアティブ)に加盟して、2025年までに楽天グループ株式会社で使うエネルギーの再エネ利用率を100%にしようやってきたのですが、2021年に前倒しで達成(見込み)することができました。これに加えて、連結子会社を加えたグループ全体でも早期に達成していきたいと考えております。

消費者におけるサステナブルへの関心も非常に高まっています。すでに購入経験があって今後も購入したい人、または購入経験はないけど今後買ってみたいという人を合わせると計81%でした。これを考えると、極論言えば、多少価格がアップしたとしても、販売する商品をサステナブルなものにしていこうとする姿勢が、店舗さんあるいは商品のファンを増やしていくという時代に突入したんだなと思っています。

「楽天市場」にも、「EARTH MALL with Rakuten」というサステナブルに特化した売り場を設けておりますが、流通総額も前年同期比+290%、サイトアクセス数も前年同期比約4.5倍ということで非常に好評です。掲載商品数、今は12.7万点ですが、おそらく将来的には、「楽天市場」で売っているすべての商品がサステナブルな商品にならざるを得なくなるのではないかとすら考えております。

ならざるを得ないのであれば、率先してやった方がいいと思うんですね。こういうものに、いかに前向きに取り組んでいくかということが、さらなるファンを増やし、商売を大きくしていく一つの大きなポイントなのかなと思っております。

実は今年、創業25周年にあたって、記念ロゴを作りました。赤い楽天からグリーンの楽天へと、「Green Business with Red Heart」じゃないですけど、そのような想いを込めております。

2022年、コロナ禍も3年目に突入しました。本当に早く抜けて欲しいと切に思っていますけども、その間に、グリーン、サステナブルな社会をどうやって実現していくか、皆さんと一緒に考えていくことが極めて重要だと考えています。今日はそのようなグリーンに向けた所信表明という風に受け取っていただいてもいいのかなと思っております。

以上で25周年、記念すべき新春カンファレンスですけれども、皆さんの今年一年の益々の商売のご発展を祈念させていただきまして、私の講演を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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