テーマは「Tech&Green」。Rakuten Optimism 2022で三木谷が語った未来への挑戦とは?
昨年に引き続きオンライン開催となった、楽天グループ最大規模のイベント「Rakuten Optimism(楽天オプティミズム)」。2019年から実施している本イベントは、楽天グループによる「楽天エコシステム(経済圏)」の概念とサービスへの理解促進を図るとともに、新たな発見のきっかけとなる場を提供することを目的としています。2022年9月28日(水)・29日(木)の2日間で行われた「Rakuten Optimism 2022」では、昨年の実績を超える約11.4万の方が参加登録し、会期中に約28.6万回の動画総視聴回数を記録しました。
創業25周年という節目のなか迎えた本年のテーマは、楽天グループが今年のテーマとして掲げている「Tech&Green」。喫緊の環境問題を中心に、多様に変化する世界や人々の暮らし、直面する社会課題、デジタル化によってもたらされる未来の可能性などについて、国内外から集結した幅広い業界のリーダーたちと様々な角度から考えました。
本記事では、会期初日に行われた三木谷浩史によるメインキーノートの内容を、ダイジェスト版でお届けします。
(キーノートの完全版は、本記事文末のリンク先よりアーカイブ動画にてご覧いただけます)
テクノロジー×多様な人材で支える、楽天のエコシステム
いま、世の中は大きく変わろうとしています。情報革命によるイノベーションの急加速、インドなどにみられる人口爆発、そして環境破壊による自然災害の増加。デジタルテクノロジーだけに注目しても、インターネットはもちろんのこと、AI(人工知能)や5G、クラウド化、ブロックチェーンなど、様々な技術が飛躍的に発展しています。
この変化の時代において、楽天は今年のテーマとして、「Tech & Green」を掲げています。限りある資源を保全してサステナブルな社会を実現するためにテクノロジーが不可欠であることはいうまでもなく、楽天グループとして大きな貢献をしたいと考えています。
今年で創業25周年を迎えた楽天の歩みは、常にテクノロジーと共にありました。それは挑戦の歴史でもあります。
1997年。誰もインターネットでモノを買わなかった時代に、インターネット・ショッピングモールとして「楽天市場」をオープンしました。成長速度は年々加速し、国内のEC流通総額は5兆円を突破しています(図1)。現在、楽天グループで提供しているサービスのデータ量は150PB(ペタバイト/=150億GB(ギガバイト))に及び、平常時の約50倍に膨らむ「楽天スーパーSALE」時の流通にも遅延なく対応できるように、基礎技術を含めて大幅な投資をこれまで行ってきました。
「楽天市場」はもちろん、「楽天トラベル」などの旅行・レジャー事業や「楽天モバイル」の携帯電話事業、「楽天カード」を中心とする金融事業などによって形成される「楽天エコシステム(経済圏)」は年々規模を拡大させ、大きな存在感を示しています。楽天IDや「楽天ポイント」を通じてつながっている(図2)世界有数の回遊性の高いエコシステムを、これからは社外にオープンにしていくことで、さらなるエコシステムの拡大を図ります。
しかし、サービスの開発や提供を日本人だけで対応することは限界があり、日本が持続的に成長していくうえでもダイバーシティは極めて重要だと考えています。楽天グループでは3万人超える従業員を擁していますが、うち20パーセント以上は外国籍です。楽天は、多様な人材によって支えられていることがお分かりいただけるでしょう。
挑戦をやめない楽天:携帯電話、衛星通信、そして医療へ
たとえ無謀だと思われても常に新しいことに挑戦するのが、楽天です。「楽天モバイル」への挑戦もその一つです。携帯電話はもはや社会のインフラですから、通信料が高止まりしていた日本の携帯市場の民主化は極めて重要な課題だと考えました。完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークによる携帯キャリア事業への参入を発表した際には、国内外の通信業界からは「絵に描いた餅」などと非難を受けましたが、今では契約回線数も546万回線にまで達し、ネットワークは順調に稼働しています。
さらに「スペースモバイル」プロジェクトによって、まだどの通信会社もなし得ていない「日本国土の面積カバー率」100パーセントを実現しようとしています。9月11日(現地時間9月10日)には、楽天が出資している米「AST SpaceMobile」社が試験衛星の打ち上げに成功しました(図3)。専用の機材などを用いることなく、人工衛星から携帯電話に直接電波を届け、データ通信サービスの実現も図る取り組みは前例がありません。これが世界でも実現すれば、基地局の建設が難しいアフリカのサバンナでも電波が入るようになるでしょう。
こうした前人未到の夢の実現に向けて中核をなすのは、グローバル通信プラットフォーム事業を手掛ける技術会社の楽天シンフォニーです。5G向けの「Open RAN」(※)の技術は高く評価され、世界最大のモバイル見本市「MWC(Mobile World Congress)」で栄誉ある賞を受賞し、大きな注目を集めました。
※「Open RAN」……モバイルネットワーク技術の一つ。無線の送受信装置などの各種機器の仕様をオープンにすることによって、異なるメーカーなどの製品を組み合わせて使用することができるため機器調達に自由度があり、ネットワークの構築コスト削減も可能に。また、オープンな規格に準拠しているため、安全性や透明性の高いRANの構築を実現できると考えられている。
また、テクノロジーを用いた私たちの挑戦は、病気の治療にまで及びます。楽天が出資を行っている楽天メディカルでは、薬を投与し、光を照射することでがん細胞を壊死させる、今までにない治療法「アルミノックス治療(光免疫療法)」を開発しています(図4)。世界に先駆けて日本で、本治療に用いる薬と医療機器の承認を取得し、要件を満たした医療機関において認定された医師によって、本治療が提供されています。この画期的な治療法を未来のスタンダードながん治療の一つにすべく、全国の医師を訪ねてフィードバックを得ることで、さらなる開発を進めています。楽天メディカルのこれからにますますご期待ください。
「Go Green Together」プロジェクトで、グリーンをリードする企業へ
では、いよいよ今年のテーマであるグリーンについてお話しします。皆様もご存知のとおり、パキスタンでは今年6月以降の豪雨によって国土の3分の1が水没し、甚大な被害がもたらされています。世界では、2000年頃から自然災害が急増し、100年前に比べるとその数は76倍に膨れ上がっています。環境問題は差し迫った危機であり、いち企業やいち個人が自分ごととして向き合わなくてはいけません。
この至上命題に対して私たち楽天グループでは、テクノロジーや人材を活用することで積極的に環境問題に取り組んでいます。「Go Green Together(ゴー・グリーン・トゥギャザー)」というスロ―ガンを設け、2023年までに楽天グループ全体としてカーボンニュートラルの達成を推し進めています(図5)。現在の楽天グループによるCO2の排出量は、一般家庭に換算すると5〜6万戸分に当たりますが(図6)、エネルギーの効率化や再生可能エネルギーへの切り替えなどにより、温室効果ガス排出量の実質ゼロを実現することを宣言します。
すでに、プロ野球チーム「東北楽天ゴールデンイーグルス」やプロサッカークラブ「ヴィッセル神戸」の各ホームスタジアムにおいて、再生可能エネルギー由来の電力への切り替えが完了しています。今後、データセンターで消費する電力を再生可能エネルギー由来のものに切り替えていったり、AIを活用してネットワーク設備の電力消費を最適化したりすることで、サービスレベルを下げることなく電力消費量を削減していきたいと考えています。また、お客様には、「楽天ポイント」なども活用しながら、環境に配慮した行動を提案するように努め、店舗さんも巻き込んで大きなムーブメントを生み出すために力を尽くします。
楽天グループはこれからも“テクノロジー”によって常に世界挑戦していくとともに、“テクノロジー”で“グリーン”をリードし、よりよい未来の実現に向けて貢献していきます。
本日はありがとうございました。
「Rakuten Optimism 2022」のアーカイブ映像はこちらよりご覧いただけます。視聴には登録(無料)が必要となります。