職場環境や組織にいま必要なのは「感謝」。「Project ARIGATO」をレポート!
日頃のビジネスの現場で、誰かとコミュニケーションをとる際に、目的や依頼だけを端的に伝えることが日常茶飯事になっていませんか?
また、ここ数年の新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークの導入も進み、オフィス内のコミュニケーションの見直しに着手されている企業も少なくないかと思います。
楽天では、社内コミュニケーションの中でも「感謝」の重要性に着目し、2022年12月に「Project ARIGATO」と呼ばれる、横断型の社内プロジェクトを立ち上げ、グループ全社が1カ月間ほど実践をしました。その取り組みの内容や結果を、今回ご紹介します!
「Project ARIGATO」は、従業員同士で「ありがとう」を伝え合う取り組みです。楽天独自で開発したプラットフォーム「R-Star」を利用して、従業員同士で「ありがとう」のメッセージとともに社内用ポイントを送ることができるというもの。送られた相手は、メッセージとポイントを受け取り、もらったポイントを商品等に交換できるという仕組みです。
ポイントというインセンティブが、他者に感謝することへのきっかけづくりや、行動に移すハードルを下げる仕掛けとなっています。
この「感謝」に着目した取り組みは、プロジェクトとして楽天内にある企業文化や組織開発に特化した研究機関「楽天ピープル&カルチャー研究所」も関わっており、その効果は同研究所によるリサーチでも裏付けられています。ありがとうを伝えることで、伝えられる側ももちろんですが、伝える側にも心理的な効果があると彼らは言います(効果についての同研究所による解説はこちら)。
また「Project ARIGATO」は、<承認><気づき><触発>の3つの仕組みを念頭に設計していると、同研究所のYutakaさんは次のように語ります。
「まず感謝をされることで<承認>され、肯定感や充実感が得られるのは、皆さんも想像されることかと思います。しかし他の人への感謝をいざ綴ろうと思うと、そこには大きな感謝だけでなく、日々のささやかな行動がもたらす、小さな感謝があることにも気づきます、これが<気づき>です。
普段、他者が何気なくしていることにも、褒めるべき、感謝するべきポイントがあるという発見を実感する機会が生まれます。また、プラットフォーム上では、感謝する・感謝される二者間だけでなく、その二者と同じ部署や近い関係の方も、その感謝のメッセージが閲覧できるような形になっています。この感謝の可視化により、”この人は日頃見えないところでこんなことをしているんだ”という新たな発見もありますし、”彼らがしているなら、私も誰かに感謝をしてみよう”という<触発>が生まれる仕組みになっています」
「Project ARIGATO」の実施後には調査を行い、そこでは「組織内でのポジティブな感情の醸成に効果があることが明らかになりました。以下でいくつかの項目に関する結果をご紹介します(調査は5段階評価でアンケートを行い、以下の結果数字(%)は5段階のうち、ポジティブな評価「非常にそう思う」と「ややそう思う」と回答された方の割合の合計値です)。
まず、感謝を送ると「ポジティブな感情になった」(93%)、「素晴らしい仲間と仕事ができていると感じた」(92%)というように、ほとんどの人が感謝を送ることで「直接的に」幸福感を得ていることが確認できました。
また、感謝を送られた時には、感謝を送ってくれた人に「良い印象を持った」(94%)、そして「今後も協力したいと思った」(94%)と多くの人が回答しています。仲間へのポジティブな感情を呼び起こすと同時に、感謝を送った人にとって「間接的に」良いことが起こっているともいえるでしょう。
さらに、感謝を送られると「自分も誰かに感謝を送ろう」という気持ちになるようです (91%)。この結果から「より多くの感謝を送り合う組織では、より多くの感謝の連鎖が起きやすいであろう」と推測できます。
たくさんの感謝の交換が行われている組織では、自分や仲間へのポジティブな感情や仲間と協力し合おうという意欲が高まるため、ワンチームとして持続的に力が発揮できる、強い組織になりやすいのではないかと思われます。
今回の反響の高さや結果を受けた振り返りとして、同研究所のDoraさんは、次のように語ってくれました。
「この『Project ARIGATO』は、楽天グループ25周年のコンセプト「感謝と挑戦」にもつながるものにしたいと考えていました。これまでの25周年を支えてくださった、お客様やパートナー企業の皆様への感謝も当然ではありますが、それだけでなく、ミッションに向かって日々ともに働いている仲間と感謝を伝え合い、次の25年をともに築いていくような取り組みに出来ればという思いを込めていました。
実施後の反響がとても良かったことも喜ばしいのですが、準備段階でも思い出深いものがあります。これを開始するにあたって、社内横断型のプロジェクトチームの一翼として、私たち、研究所のメンバーも参加し、推進の後押しをさせていただきました。そこで、事前に各部署に協力のお願いをさせていただいた際に、取り組みの背景や仕組みをご説明差し上げると、どこの部署も賛同してくださって、とても好意的に協力してくれたのが嬉しかったです。
このプロジェクトに参加してくれた従業員の皆さんはもちろん、事前準備にお付き合いいただいた関係者の皆様には、この場をお借りして”ありがとう”とお伝えしたいですし、「感謝と挑戦」に対しての一つのきっかけになれればいいなと思います」
この「Project ARIGATO」の成果をもとに、今後も同様の活動を継続すべく計画中とのことです。
慌ただしいビジネスの現場では、どうしても感謝を忘れてしまうことが多いかもしれません。しかし普段から感謝すること、またそれを言葉にして伝えることを忘れないようにしたいですね。