楽天創業メンバートークイベント!【後編】~楽天は、“課題”先進企業である!? ~

社会起業家と楽天の有志社員による6カ月間のアクセラレータープログラム「Rakuten Social Accelerator」成果発表会と同日に行われた、楽天創業メンバー3人によるトークショー。当時の熱い思いを語り、今も互いに刺激を与えあう3人。前編に続き、それぞれの進む未来、そして今後の楽天に対する期待を語ったトークショー後編をお伝えします。


藤村氏(司会):これから10年、20年という中で、「楽天という存在はどんな輝きを放ってくのか」というのは、僕もすごく楽しみにしています。楽天の外に出られている方もいますので、そうした視点も含めてお聞かせください。

本城氏:やっぱり幸せになってほしいという言葉に尽きるなと、僕は思います。いかに幸せに関わるかということなのかな。一人ひとりが幸せになってほしいし、幸せな社会のつくり手になってほしいっていうことは感じます。ただ、その幸せのあり方というのは人それぞれ違うと思います。

(楽天には)その一人ひとり違う幸せというのをサポートできるような会社であってほしいし、社員やその家族が幸せを感じて日々生活できるための挑戦を繰り返し試せる環境であってほしいと思います。みんなが同じような方向や形で幸せを実現するのではなく、様々なスタイルを試せるかどうかが大事だと思います。

楽天の創業メンバーの一人であり、現在は軽井沢に、幼稚園と義務教育学校からなる12年間の幼小中混在校「学校法人軽井沢風越学園」の開校準備を進める本城 慎之介氏。

そのための余力とか余白があって欲しい、そんな会社になってほしいと思います。OBの一人として、僕もその仲間です。僕は学校教育という現場で、それを実現しようと、今一緒にいる仲間と共に取り組んでいますので、会社の中だけでなく他の人とも一緒にできることなんじゃないかなと思っています。

杉原氏:今、「ぐるなび」という会社の社長をやらせてもらっています。行って驚いたのは「楽天市場」そのものなんです。ビジネスモデルとかコンセプトとか、中小の正直な商売人さんたちを助ける、「一緒にやっていこう!」という感じが「楽天市場」と似ていました。一つひとつの味を大事に、おいしさでお客さんを笑顔にしようと思っているレストランさんをサポートしたいというビジネスモデルなんです。中小レストランさんの一つひとつが、もう一度活性できるようにそのサポートすることに全力を注ぐと、きっとその差別化もできる、復活もできると思い、飲食店経営支援事業に取り組んでいます。

楽天創業メンバーの一人であり、昨年「株式会社ぐるなび」の代表取締役社長に就任した杉原 章郎氏。(写真中央)

その上で楽天に対して思うのは、一歩二歩先を行ってほしい。目指すものがあったほうが私が楽なので(笑)。創業当時の「楽天市場」のように、社会を変え、動かすということを真似ていける業界は沢山あると思います。当然ながら、人々のインターネットに対するリテラシーは以前より上がっているので状況は違いますが、そういう高リテラシーな皆さんの中でも、楽天の仕組みでその業態をアクセラレートすることができると面白いなと思います。

楽天には、一歩二歩先を行っていてほしいです、そうでないと目標ができないですからね。

小林:ずっと思っているのが、普通は、◯◯先進国って、何かが進んでいるポジティブな意味合いで使うじゃないですか。例えば、IT先進国やインターネット先進国とか。私が思っているのは、楽天は“課題”先進企業ですね。どこの企業よりも先に課題にぶち当たる(笑)。なぜかというと、僕らはスピード経営をしているので、二十世紀の終わりに、二十一世紀に他の企業がぶつかるだろう課題にいろいろぶつかってきました。

2010年に社内公用語を英語化しましたが、三木谷さんは、日本企業がこれから国際社会と共に事業をしていかなければいけないのに、英語が喋れないなんて、どれだけ損するんだろう、日本人だってやればできるのにと誰よりも信じていました。結果、本当に英語でやっているんですけど、これも“課題”先進企業ならではだなと。

今日はIDO(インパクト・デイズ・オブ・オプティミスツ)というイベントをやっていますが、これも、日本企業というかグローバル企業として、もっともっと社会を良くしていくという一つの企画です。

企業は、単なる利益だけを追求する、時価総額を追求する、株価を引き上げるとかではなく、社会に対して自分たちがどんな意義で存在しているか?ということを問われていると思います。その問いに対して、我々はこういうアプローチをしていますとちゃんと提示していかなきゃいけないと思います。

今回のイベントに先立って、ステークホルダーの方々、つまり事業者の方、メディアの方、お客様、社員たちを呼んで、私たちが2019年にソーシャルの分野やサステナビリティの分野で何をしてきたか、ということをお話しました。まさにこういうことを、どんどんやっていくことで、結果的に他の日本企業がまだできていないところに取り組める、背中を見せることができるかなと信じています。

本城氏:追いかけるものというか、楽天に一歩二歩先に、というのは本当にそうだなと思います。それと同時に一番進んでいるのはどこかというと、やっぱり現場だと思うんですよね。企業や団体は、現場を後から追いかけていって、お手伝いをしているというところがあると思うので、現場の感覚っていうのは大切にし続けてほしいと、そこが最先端の場所なのだろうと思います。

藤村氏:最後に、次の一歩として、社会をどう変えていきたいかをお聞きかせください。

杉原氏:最近、「俺は古い」と感じることがよくあります。若い人達と話していたり、何かを追いかけている人たちと話をしたりすると、自分の知らないことやアップデートし遅れていることが、すごいあると思って。そう思うことが本当に多いので、応援する側に回るべきだと実感しています。

幸いにもいろいろなことを経験させてもらって、応援するということには多分長けている、長け始めているので、その人が何かを実現しようって思うことを聞いてると、「こうやればいいじゃん」、「こうやると進むよね」と思うようなことが出てきます。

(自分は)0から1にするのが割と得意だと思っていたのですが、1から10とか、10から100ほどではないかもしれませんが、それをアクセラレートする、後押しする方がいい年代にもなっているんだと思います。俺はもうそっちに回れっていうふうに自分に言い聞かせています。あまり自分で前に出ないようにしているつもりですが、全体的な機械を歯車として、しっかり動かす役割になっていきたいと思っています。

小林:これからやっていこうと思っているのはWell-being(ウェルビーイング)。この会場でウェルビーイングという言葉を聞いたことある人はどのぐらいいます?(多くの人が挙手)ありがとうございます。こんなに手が挙がる会場は見たことありませんでした。ウェルビーイングには、いろいろな定義があり、世界でもまだ定義が固まっていないと理解していますが、一般的には、身体的にも精神的にも、社会的にも非常に良好な状態を指すと定義されています。

楽天創業メンバーの一人であり、現在も楽天で常務執行役員CWO(チーフウェルビーイングオフィサー)を務める小林 正忠。(右から1番目)

私はChief Well-Being Officer(チーフウェルビーイングオフィサー)という肩書がついていますが、まず個人のウェルビーイングを実現するために、会社の中でウエルネス部という組織をつくり、社員の、例えば食事や運動の改善などに取り組んでいたりします。さらにはエンプロイーエンゲージメントという部署において、社員と社員、社員と会社、社員と社会の関係性みたいなものを良くしていく、組織のウェルビーイングを担当しています。そして、社会のウェルビーイングを考えるサステナビリティ部。今、まさにこのイベントをやってくれているチームですが、彼らと共に社会のウェルビーイングを実現していきます。これらが実現すると、先程本城が言っていた一人ひとりが幸せだと思える社会をつくる担い手として、楽天がもっともっと存在意義、存在価値を出せるのかなと信じていますし、それをリードしようと思っています。

本城氏:(社会をどう変えていきたいかという質問について)僕自身はこの3人の中で一番若いので、まだまだやんちゃでいたいなとは思います(笑)。ずっと挑戦する、同時にたくさん失敗して、その姿を見せていく、恥をかいていくということは、自分でやりたいですね。失敗を恐れず失敗し続けることを通じて、何か伝わっていくものや、伝えていきたいものが出てくるのかなと思っています。それが、社会を良い方向に変えるかどうかはわかりませんが、僕自身はそうすることで、よりタフになったり、優しくなったりするんじゃないかなと思います。なので、致命傷にならない程度に、まだまだ失敗し続けたいなと思います。

小林:致命傷にならないのは大事です。三木谷 浩史がずっと言い続けていたのは、とにかく早くミスをしろと。でもその時に、「命だけはなくすな、命をなくすような挑戦、それはまずい。それ以外は何だってもう一回やり直せる」と言っていました。極端な話ですけど。今でも覚えているのが三木谷から、「6人で金出して会社が潰れたって、借金してるわけじゃないんだ」と言われたことです。「ゼロになるだけだから、また新しいことやればいいじゃん」と言っていて、それから2003年まで一回も借金せずにやってきました。

まさに、致命傷以外はかすり傷なので。幸いにして、我々はよくも悪くも本当にリーダーが常識にとらわれない人なので(笑)。いろいろなことをやると言っちゃうから、否が応にもチャレンジしなければいけない。英語が全然できないのに、アメリカに行くよう言われ、アメリカに行くとか。そうすると、本当にそれで困っている背中を、他の人たちが見る。最初に働いていた仲間たちからすると、いつの間にか「せいちゅう(小林のニックネーム)が英語を喋ってるよ」みたいになっていたのかなと思います。

まさに本城の言う通り、新しいことにどんどんチャレンジしていくということは、楽天全体でやっていかなければいけないと思います。

藤村氏:ありがとうございました。それぞれ、すごく温かくてポジティブな言葉もそうですし、何か3人が織り成す雰囲気にすごく癒される、勇気づけられるものがあり、本当に素敵な時間でした。ありがとうございました。

司会を務めた「特定非営利活動法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京」代表理事 藤村 隆氏(一番左)と創業メンバー3人。
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