地域課題と向き合う、楽天のソーシャルイノベーションプログラム成果報告会をレポート!
SDGs目標達成のための活動が各国で取り組まれ、世界規模で未来をより良くするための活動が活性化しています。
日本においても様々な社会課題の解決に取り組む人や団体が各地域に存在します。楽天は、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というミッションのもと、創業以来、地域社会のエンパワーメントに取り組んでいます。その取り組みの一つに、社会課題が存在する現場で活躍する様々なステークホルダーと、楽天の従業員たちが協働するプログラム「Rakuten Social Accelerator」(読み:楽天ソーシャルアクセラレーター)があります。
2018年に、楽天のテクノロジーやアセットを活用し、社会課題や地域課題に取り組む多様なステークホルダーと様々な分野の経験を持つ楽天の従業員が協働して社会課題の解決を目指すソーシャルイノベーションプログラムとして始まりました。本プログラムは今回で第4期目の開催となります。
本記事では、第4期目のオンライン成果報告会「Rakuten Social Accelerator 2021 Wrap-up Meetup」の様子をレポートします!
回を重ねるごとに進化する協働スタイル
2020年に行われた第3期プログラム「RSA Online 2020」は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、オンラインコミュニケーションを軸に3団体と協働プログラムを行いました。2021年の第4期目はオンラインとオフラインのハイブリッド形式で、オンラインコミュニケーションを軸に協働プロジェクトが進められました。8団体と参加団体数も増え、楽天従業員からの参加者は、職種、役職、年齢など多様なスキルと背景を持つ86名が参加しました。団体ごとの各チームに分かれ、フラットな関係で行う協働スタイルは「Rakuten Social Accelerator」の特徴の一つです。
コロナ禍以前の対面で行っていた協働の様子と比べると、今回の形式では、都市と地域が空間を超えてつながり、学び合い、支え合うような新しい形が生まれ始めているようでした。
ここからは、3つのセッションに分けて開催された今年の成果報告会について、各セッションから1チームずつ、計3団体の協働内容と成果をご紹介します。
震災伝承事業のオンラインコンテンツ化に挑戦:「おらが大槌夢広場」
岩手県大槌町を拠点とする「おらが大槌夢広場」は、2011年11月に設立され、大槌町在住のメンバーにより“町を創る、町を彩る、町を育てる”様々な町づくり活動を行っています。
代表理事&事務局長の神谷 未生さんは、国際看護師として途上国医療に携わる経験を持ち、2011年の東日本大震災後に大槌町に派遣されたことをきっかけに移住されたのだそう。若い世代の町民と、神谷さんのようなスパイス役の「よそ者」が混ざり合い、大槌の未来を造る活動を担っています。
自分事として受け止めて、サービスや経験を通じて課題解決を目指す
今回、楽天との協働テーマは、コロナ禍により対面で実施することが難しくなってしまった震災伝承事業やワークショップなどのコンテンツを、オンラインで実施できるように最適化しマネタイズを目指すこと、そして団体設立10周年の節目に10周年誌を作成することでした。
協働チームは、震災・津波被害の体験と教訓を語り継ぐ「語り部事業」や「あなただったら、どうする?」と”被災”を自分事として受け止め、自分自身の思いと行動を見つめ直すワークショップ「震災疑似体験プログラム」に着目。
これらをオンラインガイドツアーとしてマネタイズするために、モニターとなった楽天従業員の様々な視点からのアイデアや意見も参考に、オンラインでの見せ方を工夫し、実施方法を確立していきました。今後は日本語と英語プログラムの販売方法を、楽天が運営する旅行体験予約サービス「楽天トラベル 観光体験」とも連携して検討されていくそうです。10周年記念誌の作成においても、楽天の広報部で過去に記念誌制作に関わった従業員たちから情報共有が行われました。
チームに参加した楽天従業員の1人は協働の感想を次のように話しました。
「神谷さんとのコミュニケーションを通じて、東日本大震災の経験から生まれた“あなたならどうする?”という人類への問いかけを世代や地域を越えて伝えることの難しさを感じました。そういった課題をサービスや経験を通じて解決していくんだという本質に触れられたことが私たち従業員の財産になりました」
支援情報マッチングデータベースの構築を準備:「岡山NPOセンター」
行政の支援を受けようと思い立ち、市区町村のHPやインターネットで検索しても、情報や申請手続きが複雑で申請を諦めてしまった…そんな経験はないでしょうか。特にコロナ禍においては様々な方への支援が必要とされています。
岡山県を拠点に活動する「岡山NPOセンター」は、生活困窮家庭の子どもの学費支払いや、障がいのある子どもを持つ親御さんの相談など、子育てに関する“困りごと”を抱える家庭が利用できる行政制度や相談できる場所などが分かる、一元化された検索システムの構築に取り組んでいます。しかし、その構築には膨大な量の情報収集が必要とされていました。
北内さんを中心とする協働チームは、通称「使える制度がわかるシステム」構築プロジェクトと題して、複雑な制度をより理解しやすく、アクセスできるようなシステム構築のための情報収集に取り組みました。
“困りごと”があっても、制度の存在を知らなければ申請・利用することはできない
どこにどんな支援制度があって、どの窓口に相談すればよいのか。まずチームが取り組んだことは、岡山県内27市町村の困りごとを抱える親子が利用可能な支援制度、問い合わせ窓口情報を探し、それらの情報を開発中の検索システムに掲載できるように集約することでした。2カ月以上の間、週2回オンラインで集まり、情報収集活動をチームで行いました。その結果、20市町村の支援制度と約1,274カ所の問い合わせ窓口情報を調べ上げ、どんな人がどんな制度を利用できるかといった情報をシステムに入力することができました。
利用したい制度のキーワード、居住地、家族構成などの情報を入力することで、利用可能な制度の検索結果が表示されます。入力データやフィードバックはその都度蓄積され、今後改善されていくそうです。
「最初は1,000以上の制度の調査を2人だけでやろうとしていたので、皆さんに助けていただいたことが本当にありがたかったです」と北内さんは、チームメンバーへ感謝を述べました。
チームに参加した楽天従業員からは、「岡山NPOセンターの方々と出会えたことで、住んでいる地域に自ら興味を持ち、地域の課題で自身ができることに参加することで、身近な暮らしを変えていくことが可能なのだと知りました」、「このシステムが困っている方に届くことを楽しみにしています」などの感想が述べられ、今後の全国展開が期待されました。
教育の未来を共に考える:「NPO法人だっぴ」
中学や高校の時、進路や将来について漠然とした不安や悩みを抱えていませんでしたか?当時、もっとたくさんの大人の生き方や考え方に触れ合う機会があったのなら、将来の可能性についてより良く考えることができたのではないでしょうか。
「NPO法人だっぴ」は、「『若者の可能性と実現力を開拓する』ことをミッションに掲げ、岡山県内外の15市町村30校以上の中学校・高校で、若者と大人の対話の場づくりを行っています。また、その対話をきっかけに、若者が多様な大人や社会とつながることのできる地域づくりにチャレンジしています」と、代表理事を務める森分 志学さんは地元岡山での活動について話します。
学校授業のほかにも、学校と実社会の中間点で中高生の居場所となるユースセンターの運営や、オンラインでも若者と大人がつながれるウェブサイトやイベントなどの運営・企画など、「NPO法人だっぴ」は様々な対話の場づくりに尽力されています。
楽天の協働チームは、若者が多様な大人の生き方について知ることのできるオンラインメディア「生き方百科」に関して、PR強化とオンラインイベントの企画・運営をテーマに2チームに分かれて取り組みました。
2つに分かれたうちの1チームは、オフラインで開催されたイベント後も、参加した中高生の熱意の受け皿となり、次に何をすれば良いかなどの情報を得られるように、メールマガジン「自由帳」の作成に取り組みました。どのようなニーズがあるか、高校生へのヒアリングやアンケートを実施。現地の協力高校に「自由帳」をテスト配信したり、現地大学生と共にSNS運用プランについて検討しました。楽天グループ全体のデザインを担当するクリエイティブデザイン戦略部の楽天従業員が、「自由帳」のデザインといったクリエイティブ面でサポートしました。また、メルマガのコンセプト開発、特集企画などに取り組んだ結果、「生き方百科」ウェブサイトのPV(ページ閲覧数)とUU(個別ユーザー数)、コンテンツ記事本数の倍増に貢献することができました。
もう一方のチームは、開始から間もない「NPO法人だっぴ」が運営するオンラインイベント「生き方百科ずたんっ!」のゲスト選定やイベントごとの運営を見直し、将来は大学生自身でイベントを運営できるよう仕組化にも取り組みました。両チームに参加した従業員たちは、協働の感想を次のように語りました。
「高校生、大学生は、世の中のことをちゃんと自分で考えて進路を選んでいたり、社会に今何が必要なのかという視点で進路を考えていたりしていたので、自分自身もたくさんのことを学び、日々刺激を受けていました」
「今まで培ってきた、自身の専門スキルを役立てることができました。自分の強みを感じることができ、メンバーそれぞれの強みも生かしながら関わり合いができたのは良い経験になりました。普段あまり関わる機会のない学生や社外の方との出会いから学び、会社内での横のつながりもできました」
成果報告会総括
2021年の「Rakuten Social Accelerator 2021 Wrap-up Meetup」オンライン成果報告会、その総括として楽天の常務執行役員 CWO (Chief Well-Being Officer) である小林 正忠は次のように話しました。
「取り組まれているプロジェクトは様々だと思いますが、皆さんがより良い社会をつくろうとする方向性は、25年前に楽天を創設した時の方向性と一致していることに改めて気付かせていただきました。参加した楽天従業員から『知らないことがいっぱいあった、楽天でつながってない人とつながることができた』という感想を聞いて、昨年のコロナ禍で我々が提言した『コレクティブウェルビーイング』を思いました。皆がウェルビーイング(well-being: 良い状態)をつくっていくために、『仲間』、『時間』、『空間』という3つの『間』に余白をいかにデザインするかという考えです。身近な仲間だけでなく、その仲間の中にも余白をつくれば新しい仲間を取り込むことができます。目の前のことに全力で取り組むことも大事ですが、その中でも、いろんな違うことをするための時間を意図的につくることや、コロナ禍で制約はあるものの現地を訪れたりして空間のなかにも余白をつくることをすれば、人はウェルビーイングな状態になるのだと思います。目の前のことに全力で取り組めることはとても素敵なことですが、壁にぶつかった時などに挫折してしまわないよう、ほかにも居場所があることがとても大事です。協働団体の皆さんが我々を受け入れてくださったことで、楽天の従業員たちは新しい居場所を手に入れることができました。『Rakuten Social Accelerator』に関わった従業員は、間違いなくウェルビーイングだったと思います。また、協働団体の皆さんにとってもウェルビーイングにつながっていれば良いなと思います。本当にありがとうございました」
今回紹介できなかった他の5チームにおいても、メンバーたちは社会課題解決に取り組むことで互いに学び合い、新しい視野を発見していました。
普段の仕事で培った強みを活かしながら社会課題解決のための行動を起こすことができる、そんな可能性を感じることができる第4期成果報告会でした。
2022年も、楽天のソーシャルイノベーションプログラムにぜひご期待ください!
HP:https://corp.rakuten.co.jp/sustainability/social-accelerator/
■2021年度「Rakuten Social Accelerator」参加団体:
・一般社団法人まるオフィス(宮城)
協働内容:ONLINE探求ラボを通じた高校生の伴走
・NPO法人だっぴ(岡山)
協働内容:「生き方百科」を魅力的にしよう!
・特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会(東京)
協働内容:「ステナイ生活パートナー」制度のパイロット版作り
・おらが大槌夢広場(岩手)
協働内容:東日本大震災の経験を伝えるワークショップのオンライン化・団体の「これまで」と「これから」を伝える10周年記念誌の制作
・龍郷町(鹿児島)
協働内容:e-bikeを使った島の魅力を伝えるプログラム作り
・NPO法人中之作プロジェクト(福島)
協働内容:空き家再生の輪を広げ共感者を増やす、広報・発信強化プロジェクト
・岡山NPOセンター (岡山)
協働内容:支援情報マッチングデータベース「使える制度がわかるシステム」を一緒に作ろう!
・琉球frogs(沖縄)
協働内容:社会課題をテクノロジーで解決しようとする学生へのフィードバック