ニューノーマル時代の社会課題解決への挑戦~「Rakuten Social Accelerator online 2020」を開催~

新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの生活は大きく変化しました。その中で、ボランティア活動をはじめとした、社会貢献活動にも変化が訪れています。

そのひとつが、2018年より開始した、楽天のテクノロジーやビジネスアセットを活用し、社会課題の解決に取り組む団体を支援するアクセラレータープログラム「Rakuten Social Accelerator」。このプログラムは、楽天の有志で集まった社員が社会起業家や地域団体などと共に、より良い社会の実現を目指し協働するというもの。約半年の協働期間を通じて、互いに学び合い、時には意見をぶつけ合いながら、毎年様々な社会課題の解決に取り組みます(前回のレポートはこちら)。

新型コロナウイルスが全国的に感染拡大し、社会的な変化が起こる中、対面でのコミュニケーションは取りづらいものとなりました。本プログラムの運営チームでは、ニューノーマル時代における社会貢献活動の在り方について議論し、2020年は「Rakuten Social Accelerator online 2020」(以下、「RSA online 2020」)として完全オンライン形式で開催することを決定。

私たちの生活が大きく変化した中で、「RSA online 2020」を通して、各チームは何を学び、何を生み出すことができたのでしょうか?

本記事では、2020年12月のオンライン成果報告会に参加した「岐阜県飛騨市」、「おかやま親子応援プロジェクト」、「一般財団法人世田谷コミュニティ財団」の3団体と楽天による2020年度の協働プロジェクトについてご紹介します。

飛騨市に関わる人やファンを増やすためのプログラム「ヒダスケ!」とは?

まずはじめに紹介するのが岐阜県飛騨市との取り組みです。

「ヒダスケ!」は、飛騨市の関係案内所として、関係人口(注)増加に向けて設立されました。飛騨市の方々が、様々なプロジェクトを登録でき、市内外から仲間を募集できるプラットフォームです。この取り組みを通して、飛騨市のファンや関係人口の増加を目指しています(「ヒダスケ!」のHPはこちら)。

「RSA online 2020」では、飛騨市の皆さんと楽天の社員が協働して、「ヒダスケ!」をさらに盛り上げることをテーマに、主に2つの活動を実施しました。

(注)「関係人口」とは、移住した「定住人口」や観光に来た「交流人口」以外で、地域の外に住みながらも、その地域や地域の人々と多様に関わる人々。

オンラインプラットフォーム、地域電子通貨を活用したキャンペーン

ひとつ目の活動は、「飛騨市のシェア得~みんなで幸せのおすそ分け~」の取り組みです。

飛騨市では人口減少や少子高齢化が進む一方で、近年大人気アニメ映画の舞台として使用されたこともあり、多くの方々が観光に訪れていました。しかしながら、新型コロナウイルスの影響を受け観光客が減少し、飛騨市の観光産業においても、地元の飲食店や観光地を中心に、売上の減少が見受けられました。そこで、飛騨市内の事業者の売上増加とファン獲得に向けて、「おすそ分け」をコンセプトにした「飛騨市のシェア得~みんなで幸せのおすそ分け~」キャンペーンを実施。

本キャンペーンでは、市内の事業者が提供する対象商品を、購入者が友人や知人へおすそ分けできるように、おまけ商品を付けて販売します。さらに、飛騨市に関するアンケートに答えると、飛騨市の地域通貨である「さるぼぼコイン」100円分のプレゼントや、抽選で飛騨牛5,000円分が当たります。

今回のキャンペーン企画段階では、「楽天市場」のマーケティングなどを担当する楽天社員が、キャンペーン実施に向けてそれぞれのノウハウを提供し、コンセプト作りからキャンペーンの実施まで、企画立案部分でのサポートを中心に、飛騨市の皆さんと協働しました。

その結果、合計20の飛騨市で飲食・観光などの事業を展開する方々が参加し、開始10日で1,000件以上の商品が購入され、飛騨市のファンクラブ会員も約120名増加。その効果もあり、市内の事業者の売上向上と「ヒダスケ!」の認知拡大に貢献したプロジェクトになったようです。

伝統工芸を通じて地域の魅力をアピール

そしてもうひとつの活動では、また違った切り口で地域の魅力を発信。

「和ろうそく」をはじめとする飛騨市に根付く伝統工芸品を、より多くの人に知ってもらい、その魅力を伝えることで飛騨市の関係人口増加を目指すプロジェクトです。

飛騨市の伝統工芸品である「和ろうそく」。飛騨市の魅力を伝えるだけでなく、今回のプロジェクトでは、後継者不足に直面している伝統工芸の認知拡大への貢献も目指し、より多くの人に「和ろうそく」を知ってもらうことを目的に実施しました。

伝統工芸の魅力をオンラインで発信!

まず、「和ろうそく」について知ってもらうために、「和ろうそくの炎で癒されナイト」というオンラインイベントを開催。YouTubeのライブ配信で、約4時間かけて「和ろうそく」に火が灯っている様子とその音を放送し、当日視聴と録画視聴をあわせて600回以上も視聴いただいています。続いて、「あなたの知らない和ろうそくの世界」と題し、和ろうそくの歴史や作り方、西洋のろうそくとの違いを中心に、職人の方から詳しく和ろうそくについて教えていただくイベントを、現地とオンラインで同時に開催しました。

これらのイベント終了後には、SNS上で「和ろうそく」の魅力を訴求するアンバサダーを募集。アンバサダーを通じて実際に「和ろうそく」を使ってみた感想や魅力を、広めてもらったことで、さらに新たな「和ろうそく」ファンを獲得することができたそうです。

楽天側の協働メンバーたちは、「和ろうそく」の訴求に向け、主にオンラインイベントのノウハウ提供やイベント実施に向けた運営のサポート、SNSなどでの情報発信を中心に協働し、プロジェクトをサポートしました。

これら、2つの活動を中心とした協働を通して、「ヒダスケ!」への登録者は約2.3倍まで増加。プロジェクト全体を統括する飛騨市側のメンバーである上田さんは、「楽天の皆さんには、地域外の視点でアイデアをいただいたり、事業化まで協働していただいたりしたことが嬉しかったです」と報告会で感想を述べました。

オンラインを介してでも、飛騨市の魅力を多くの人に伝えることができ、地域外の人にも地方の魅力を発信できる――オンラインによる社会課題解決の可能性を感じられる協働内容となったようです。

オンラインだからこそできること。「おかやま親子応援プロジェクト」

続いて紹介するのが、「おかやま親子応援プロジェクト」との取り組みです。新型コロナウイルスの影響下で様々な課題に直面する子どもたちや家庭に対して、色々な体験の機会を提供したり、学習支援をしたり、必要な物資を家庭に届ける「おかやま親子応援プロジェクト」。岡山県内で活動する子どもや親子支援を行う約30の民間組織が連携し、支援活動を通して子どもや各家庭を「ひとりにしない」ことを目指しています(「おかやま親子応援プロジェクト」のHPはこちら)。

今回、「RSA online 2020」では、コロナ禍においてコミュニケーションの機会が減少する中で、多世代間の交流の場を提供する取り組みと、おかやま親子応援プロジェクトをより多くの人に知ってもらう情報発信サポートを行いました。

年齢も場所も離れていても、前を向く

具体的な活動内容としては、オンライン会議システムを使い、岡山県に住む学生(小学生から大学生)と東京にいる楽天社員との交流会を実施。

交流会といっても学習指導や楽天の会社説明ではなく、学生生活や普段の生活について、ざっくばらんに話をする「オンライン交流会」です。また、進路や将来の夢、日常生活など、様々な学生の悩みが相談できる「勉強以外のことを相談するオンラインな会」も実施し、計2回、学生と交流する機会を持ちました。

参加した学生からは「社会人の方と話す機会が欲しいと思っていたので嬉しかった」や「来年中学生になるため、少し不安があったが、楽天の社員さんと話すことができて解消された」といった感想が寄せられました。楽天社員からは、「自分たちが何かを教えてあげるというよりは、高校生たちから与えてもらうことの方が多かった」といった声がありました。

また、情報発信サポートとして「おかやま親子応援プロジェクト」の呼びかけ人や、支援活動を行っている団体へのインタビューを行い、メディアプラットフォーム「note」に取材記事をアップ。また、クラウドファンディングの支援者に届ける活動報告書を作成するというプロジェクトに、作成段階から参画しました。

報告会の最後、参加メンバーからは「地方のNPO団体の方と話すことで、地域課題をより身近に感じることができました。ゆるやかなつながりでも、一人が動くだけで力になる。コロナで気が滅入っているときに誰かと関わることができ、仕事以外での経験もできて良かった」と前向きな感想が聞かれました。

楽天社員にとっては、様々な方々との交流を通じ、不安定な世の中でも次に進むモチベーションにつながる機会となり、団体の皆さんにとっては、いつでも相談できる安心感や伴走者がいる心強さにつながったようです。

コロナ禍における情報発信を促進!「世田谷コミュニティ財団」

最後にご紹介するのが、東京都で初の本格的な都市型コミュニティ財団である「世田谷コミュニティ財団」との協働プロジェクトです(「世田谷コミュニティ財団」のHPはこちら)。

「世田谷コミュニティ財団」は、社会課題の解決や新たな価値の創造につながる公益活動を広く支え、必要な資源の仲介役を担い、「まちを支える生態系」を育むことを目指し活動を行っています。

今回の協働では、財団メンバーが感じていた情報発信に関する課題にフォーカス。参加した楽天社員は、財団の活動やアクティビティを実際に体験し、メンバーとの対話を重ねながら互いの理解を深め、発信力の強化に向けた具体策を共に考えました。

どう伝えるか、深く考え、メッセージを磨く

オンラインでの協働の中で、最も大きな割合を占めたのが、公式ウェブサイトのリニューアルです。楽天サービスのUI/UXチームに所属する楽天社員を中心に、ターゲットとなるユーザーの確認や必要なコンテンツの洗い出しをしました。細かいディスカッションを重ねることで、リニューアルのゴールを明確にし、発信したいメッセージを磨いていきました。また寄付者やプロボノへのインタビューも楽天社員が担当し、財団のステークホルダーからの期待や、求められている役割について、考えを深める時間を持ちました。

さらに、「note」を活用し、世田谷コミュニティ財団との「RSA online 2020」での協働内容の発信を開始しました。報告会が終わった現在は、世田谷コミュニティ財団メンバー自身が独自のコンテンツを作成し、配信しています

新しいウェブサイトは2021年の春頃にお披露目予定です。以下の現状のウェブサイトがどのように生まれ変わるのかご期待ください!

▼「一般財団法人 世田谷コミュニティ財団」公式HP
https://scf.tokyo/

最後に、「世田谷コミュニティ財団」の代表理事である水谷衣里さんは、「今回の協働は、楽天社員の皆さんから我々がエンパワーメントされる機会となりました。同時に協働した社員の皆さんからは、財団との協働に力を貰った、という声をいただき、とても嬉しかったです。コロナ禍の中で、対面でのコミュニケーションが減り、財団としても模索が続いた2020年でしたが、オンラインでの協働がエネルギーになり、気持ちを後押ししてくれました。また世田谷のことを知れて嬉しい・楽しい、といった楽天社員の皆さんの声を聞き、財団を運営していて良かったと思いました」と話してくださいました。


2020年は「RSA online 2020」の他にも、オンラインまたは在宅でできるボランティア活動を様々な団体の皆様と共に行ってきました。この日のイベントでは、2020年のボランティア活動に関わった社員や団体の皆様が参加し、今後の社会とのつながりについて話し合うワークショップも実施。

「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」をミッションとする楽天。今年の参加メンバーたちは、新型コロナウイルスの影響下でも、オンラインでのコミュニケーションや活動の可能性を試行錯誤し、新たな社会貢献の在り方について手応えを感じているようでした。

楽天では引き続きニューノーマルに対応した活動の形を模索し、「Rakuten Social Accelerator」をはじめとするプログラムを通じて、地域・社会の多様なプレーヤーの皆さんと協働していきます。今後の展開にぜひご注目ください!

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