第二期「Rakuten Social Accelerator」成果発表会を開催 〜楽天×社会起業家で社会課題の解決に挑む!〜

私たちが住む社会には様々な社会課題が存在します。少子高齢化や地域格差、環境問題などについては、テレビや新聞、インターネット上で目にすることも多いと思います。

「より良い社会になるよう何かしたい」と感じながらも、どのように関われば良いのか分からず、心の片隅にモヤモヤを抱える人も少なくないのではないでしょうか。

「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」という企業ミッションを掲げる楽天にも、同じような気持ちをもった人が沢山います。

一昨年スタートした「Rakuten Social Accelerator(楽天ソーシャル・アクセラレーター)」は、楽天のテクノロジーとアセットを使って、社会起業家と共に社会課題の解決に本気で取り組む半年間のアクセラレータープログラムです。(前回のレポートはコチラ!)

楽天からは、社会課題解決のために何かしたいという気持ちをもった有志社員が参加。第二期となる今年は、様々なバックグラウンドをもった楽天社員85名が集まり、社会起業家5団体と協働5チームを結成しました。メンバー同士が本気で向き合い、共に悩み、喜びを分かち合った協働時間は約8,000時間。

本記事では、その集大成となる成果発表会の様子をレポートします!


2年目の開催、さらなる成長と可能性の広がり

会場は、楽天本社の隣にある二子玉川ライズ「iTSCOM STUDIO & HALL」。会場内の各チームのブースには、事業紹介や協働の内容をまとめた資料などが展示され、興味をもってスタッフに質問する人の姿が多く見られました。

楽天のアセットをフル活用するアクセラレータープログラム

企業が社会起業家の活動を支援するアクセラレータープログラムの形式は様々ですが、IT企業である楽天が実施するアクセラレータープログラムの強み、魅力とは何なのでしょうか?

楽天は、「知る」、「創る」、「伝える」、「解決する」、「管理する」、「守る」といった大きく分けて6つの要素を、プログラムにおける提供価値として挙げています。それらは成果発表会で行った各チームのプレゼンテーションの中で、“楽天の強み”を生かした具体的な解決策として具現化されていました。

ここからは、いくつかのチームの取り組みに焦点を当てながら、楽天のアクセラレータープログラムをご紹介します。

認知を拡大し、理念への共感を重視した会員制度をつくる

協働開始後、各団体が抱える困りごとに「認知度が足りない」、「事業の理念を共感できる会員ユーザーを増やしたい」ということが挙げられるケースがありました。

戦後、大量に建てられた木造賃貸アパートを重要な社会資源と捉え、再生のための様々なプロジェクトを実践している特定非営利活動法人「モクチン企画」の協働チームもその一つ。それらの木造アパートは現在、老朽化や空き家化、住人の高齢化などの問題を抱え、未活用の空間として多くの街に存在しています。

日本において建物が建てられ、壊されるサイクルの平均期間は約30年。全国の空き家率は13%になり、東京23区内だけでも20万戸以上の機能不全の建物が存在している現状を、「モクチン企画」代表理事の連(むらじ)勇太朗氏(以下写真中央)はスピーチの冒頭に紹介しました。

「モクチン企画」は、8戸に1戸が空き家となり未活用の空間が街にほとんど放置されたままの現状、住まいや街を消費しつづける問題に着目し、このような建物を魅力的な社会的資源として転換することをミッションに掲げています。

そのミッションを実現するのはウェブサイト上で提供するデザインツールの“モクチンレシピ”という仕組み。築年数の古い賃貸物件のオーナーや不動産会社を対象に、ボロボロの廃屋アパートなどを安価に、そして魅力的に改修するためのアイデアが掲載されています。

モクチンレシピのHP画面。料理のレシピのように、どのように改修すれば良いかを、具体的な事例や図面と共に紹介

「モクチン企画」と楽天社員の協働チームが、プロジェクトのゴールとして設定したのは、“モクチンレシピ”の「メンバーズ会員」を増やす仕組みを改善すること。

協働開始当初について、楽天社員メンバーの大山は「『メンバーズ会員』を増やすというシンプルな目標を設定したときに、『メンバーズ会員』制度の認知不足、価値やサービスの利用方法が(ユーザーに)伝わっていなかったことを課題として洗い出しました。そこで、会員制度の価値を伝えるプロモーションチームとウェブページのUI/UX改善チームの2チームに分かれて協働をスタートしました」と話しました。

チームは、現状調査・把握に始まり、「モクチン企画」におけるプロダクトの独自価値を定義・言語化してコンセプトを作り上げ、認知拡大に向けた戦略を立案しました。既存と見込み客がどこにいるかなども洗い出し、ターゲットの人物像や伝えたいことを明確化していきました。

そのような作業を進める中で、メンバー内に生まれた意識の変化について大山は、「ただやみくもに『メンバーズ会員』を増やすというよりは、悩みや課題意識を共にする。理解・共感のあるオーナーさんを集め、つながり、共に前進したいという考えが生まれました」と話しました。

結果、企業の理念や思いが言語化され、ターゲットが明確にされたメッセージやキャッチコピーなどを打ち出し、HPや広報資料などに反映。「メンバ―ズ会員」ページは、コンテンツがより理解されやすいよう、的確にレイアウトされ、提供サービスへの導線を効率化。

“つながる”訴求を強化することでUI/UX機能が改善されました。その他にも共感を生み出すコンセプトページやオウンドメディアの開設など、協働後の持続的な資産も創りました。

最後に連(むらじ)氏は、生まれ変わった会員制度と今後の抱負について「今までの仕組み、そして新しい会員制度の仕組みを通して、素敵な物件オーナーが増える、繋がれる、そういうサイクル、エコシステムをつくりたいと思っています。これからも会員数を増やし、お互いをエンパワーし合えるような不動産オーナーのコミュニティをつくっていきたい」と話しました。

ITスキル・人材の不足

社会起業家の方たちが「Rakuten Social Accelerator」に応募する理由の一つに、「事業やサービスを成長させるための人的リソースや、ITの専門的知識・経験がないため、本プログラムに応募した」という理由がありました。

「専門的知識経験をもつメンバーが少数精鋭で運営する団体では、ビジネスが急成長するため、新しく発生する専門外の作業や、次のステップのための準備にかける人的リソースが不足しているようだった 」と、社会起業家についての印象を話す楽天社員の声もあります。

応募当時、日本国内においては2名だけで活動し、壁に当たっていた状況を語ったのは、カンボジアで女性の自立支援とサステナブルなものづくりに取り組む「SALASUSU(サラス―スー)」共同代表の横山 優里氏。

横山 優里氏(写真中央)。「(オンラインでのサービス改善や開発をしたくても)スタッフがウェブの専門的な知識をもっていなかったり、必要なスキルをもっていない。マンパワー不足のため、スピード感のある仮設検証に弱みを持っていました」と少数で活動することの難しさを打ち明けました。

カンボジアでは経済発展が著しく進む一方、若年層の出稼ぎ、低い高校進学率、高い絶対貧困率などの社会課題が存在します。そのような状況の中、「SALASUSU」は2008年に現地の村に自立をサポートする学校 兼 工房を設立。「作り手も使い手も、関わる人全てが幸せなサイクルを、ものづくりを通じて実現する」というミッションのもと、経済的困難をもつ家庭の女性に対して、生きる上で大切なライフスキル教育、ものづくり、就職のための自立支援事業を行っています。

工房の女性たちがつくるサステナブルな商品は、すべての商品に作り手の名前スタンプが押されており、「ものの裏にはひとがいる」ことを伝えるものづくりをしています。女性たちが作った商品は、HP内にあるECサイトで販売されており、作り手と使い手のつながりを大切にする姿勢を感じ取ることができます。EC事業の他にも、企業や学校に対するSDGs研修や世界各国からの訪問者に対して工房訪問ツアーなども展開しています。

そんな「SALASUSU」が協働前に抱えていた困りごとは、各国から年間2,000名もの工房ツアー参加者がいるにも関わらず、ツアー後の参加者とのつながりが途絶えていることでした。それを解決すべき課題として、楽天社員との協働チームでは3つのゴールを設定しました。

1.マーケットリサーチを通じて顧客を知る
2.新規アクションを通じてつながり生み、作る
3.ツアー参加者とのオンライン上のつながりを維持・強化

これらを実現し、仕組化させるために、様々な専門スキルをもった12名の楽天社員と「SALASUSU」の協働がスタートしました。

楽天社内の専門家によるマーケティング講義や、マーケティング・リサーチ事業を行う「楽天インサイト」による1万名を対象としたオンライン調査、サービス利用者に対するデプスインタビューを実施。マーケティングリサーチを様々な角度から行うことで、サービス利用者のペルソナ像や、企業理念に共感してくれるであろう潜在顧客層や見込み客のいる分布などを明らかにしていきました。

潜在的な顧客との新しいつながりをつくるために、楽天社員 とカンボジアの工房スタッフが協力して、工房周りの観光スポット特集フライヤーを作成。協働期間後もカンボジアへの興味関心を高め、新しいつながりを生み出せるようなアセットをつくりました。

つながりをオンライン上でも強化するため、「楽天市場」のECノウハウを持つ社員による講義を受け、ウェブサイトのデザイン・機能改善を実施。クリック率改善と売上アップをゴールに設定し、ページデザイン分析、メルマガやSNS活用、キャンペーンやフォローアップメール施策などを行いました。目標達成に向けたKPI(重要業績評価指標)を正しく把握できた結果、サイト離脱率が減り、メルマガのクリック率を向上させることに成功したと、協働メンバーは話します。

協働を加速させるため、実際にカンボジアまで行き、工房を視察した楽天社員メンバーもいました。

彼女は、「現地の作り手の女性に直接会い、インタビューをさせていただき、生の声を聞きました。かわいいポーチを作ってくれた女性たちに、直接ありがとうと言えたことは、本当に嬉しかったです。現地を視察してきたからこそ、より具体的に、リアルに『SALASUSU』が抱える課題を感じることができました。そして、現地で感じたことを(帰国後に)チーム内でシェアしたことで、具体的な協働のスコープが決定しました」と話しました。

最後に横山氏は、12名の仲間と共に様々なトライ&エラーを重ねた協働期間を振り返り、「短期支援でなく、これから持続的に事業を成長させていけるように、沢山の種まきをしていただきました」と今後の成長に向けた手応えを感じていました。

他にも、医療現場における判断を助けるため、医師同士の質問解決プラットフォームを提供する「アンタ―株式会社」、厳しい難民認定の日本で、一人ひとりがキャリアや人生の目標を追求できる未来を、多様なセクターとの協働を通じて目指す「特定非営利活動法人WELgee」、高卒就職する学生に対し、「高校生が豊かな選択肢の中から意志をもって進路を決められる」機会を提供する「株式会社アッテミー」の国内3団体、ゲストとして、インドから来日した食糧支援、野生動物保護、盲目の人に対する生活支援をする3団体が、プレゼンテーションを行い、社会課題に立ち向かい、共に新しい未来を築こうとする思いとその実現プランを会場の参加者に届けていました。

【各団体HPはこちら】(五十音順)

・アンター株式会社 「医療支援」
代表取締役:中山 俊 URL:https://antaa.jp/

・特定非営利活動法人WELgee 「日本の難民問題」
代表:渡部 清花  URL:https://www.welgee.jp/

・株式会社アッテミー 「高卒就職」
代表取締役:吉田 優子 URL:https://atteme.com/

・特定非営利活動法人SALASUSU 「途上国/女性/エシカル」
共同代表:横山 優里 URL:https://salasusu.com/

・特定非営利活動法人モクチン企画 「地域活性・空き家問題」
代表理事:連 勇太朗 URL:https://www.mokuchin.jp/

“協働のホントのトコロ”

1日の最後は、社会起業家と楽天社員がホンネを語り合うトークショー「協働のホントのトコロ」を開催!

会場に笑いが溢れる人気の番外企画です。プレゼンテーションでは緊張していた登壇者とメンバーたちも、テレビ番組さながらの演出でリラックス。互いの第一印象から「協働期間中に起きたヤバかった瞬間」などのお題に対して、互いのホンネを打ち明け、ステージのメンバーだけでなく会場内に笑いを巻き起こしていました!

2年目の開催も盛況と感動の内に終了した「Rakuten Social Accelerator」。
参加された社会起業家の方たちは、明るく、エネルギッシュな人ばかりでした。そして、普段の職場にはない知識や経験に感動する楽天社員たちも、彼らと同じくらい素敵な笑顔で輝いていました。

今後も、楽天と社会課題に取り組む様々なプレーヤーとのコラボレーションにご期待ください!

Rakuten Social Accelerator:
https://corp.rakuten.co.jp/sustainability/social-accelerator/

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