【開催レポート】奈良県大和郡山市と「リノベーションカレッジ DIY教室」を初開催。地域住民と共に築100年の空き家をシェアアトリエとして再生
2024年6月15日(土)、奈良県北部に位置する大和郡山市のとある空き家に、朝からたくさんの人々が集まっていました。皆さんは、「楽天市場」が実施する「リノベーションカレッジ DIY教室」に参加される地域住民の方々で、その他、講師や協賛企業、共同主催である大和郡山市、大和郡山まちづくり株式会社(以下「まちづくり会社」)、楽天グループ株式会社(以下「楽天」)の担当者が一堂に会しました。
築100年を越える店舗兼住宅をリノベーションし、クリエイターや地域住民が集まるシェアアトリエとして生まれ変わらせようとするこのイベントは、同市における空き家問題解決に向けた取り組みの一環として開催しました。加えて、楽天が主体となりDIYマーケットの健全な発展を目指して1年を通して実施してきた会議体「Rakuten DIY Summit」における、初の実践的な取り組み成果でもあったのです。
本記事では、盛況のうちに終了したイベントの様子をレポートします。シェアアトリエとしての完成に向けて第一歩を踏み出したこの日、空き家の中は、終始楽しげな声で満たされていました。
古民家再生に取り組むイベントの一日に密着!
JR奈良駅から電車で約20〜30分南に下ると、JR郡山駅、近鉄郡山駅に挟まれるようにして奈良県大和郡山市の中心街が広がっています。岡町(おかまち)、洞泉寺町(とうせんじちょう)などからなるこのエリアは、かつて郡山城の城下町として栄えたところ。格子窓が美しい町家建築がいまでも残っており、なかでも登録有形文化財に指定されている木造三階建の遊郭「町家物語館(旧川本家住宅)」からは、花街として栄えた時代の華やかな面影を感じます。
そんな歴史あるこの町で、「リノベーションカレッジ DIY教室」を開催しました。空き家のリノベーションを兼ねたこの実践的なDIY教室は、築100年を越える店舗併設住宅に、クリエイターや地域住民が集まるシェアアトリエとして、新しい命を吹き込む試みです。
午前10時、まずは主催の3者がご挨拶。空き家の利活用に力を入れる大和郡山市の上田 清市長、企画運営の大和郡山まちづくりの代表・大垣 満さん、同じく企画運営の楽天ECコンサルティング部のDerrickさんによるテープカットでイベントはスタートしました。
多数の応募から抽選で選ばれた12名の参加者には、専門家による指導のもと、三つの作業をローテーションして取り組むことが伝えられます。
ペンキを使った塗装作業と、扱いやすい家庭用のクロスを使った壁紙貼りの講師を務めるのは、SNSで活躍するDIYアドバイザーの皆さん。そして、仕切り棚を作る木工作業は、電動工具で世界的に知られるボッシュの社員から道具の扱い方を教わり、アマチュア用の丸ノコやインパクトドライバーなどを使用して、2×4(ツーバイフォー)材のカットや組み立てに挑みます。
「楽天市場」にも店舗を構えるDIY FACTORY、ボッシュ、LABLICO(平安伸銅工業)や壁紙屋本舗、ニッペホームプロダクツ、織田商事、ホームセンターコーナンなどから、クロスや塗料などをご提供いただいたほか、ホームセンター業界大手のコーナンからは木材をご提供いただいたことで、この日のイベントが実現したのです。
水分補給や、地元で定評のあるスパイスたっぷりの「tabi tabi (タビ タビ)」からご提供いただいたカレーで休憩をとりつつ作業は進められ、誰一人体調を崩すこともなく、午後6時頃、無事にイベントは終了しました。
今後は、同市とまちづくり会社によって完成に向けた作業が続けられ、年内にはシェアアトリエ「オカマチ荘」としてオープン予定。参加者からは、自身が携わったオカマチ荘がオープンすることへの期待の声がたくさん聞かれたことが印象的でした。
自治体×地元企業×楽天で推し進める、空き家問題の解決とDIY市場の規模拡大
楽天は、ホームセンター企業や卸売企業、メーカー、EC事業者、ホームセンター業界に精通する有識者などとDIY業界の課題や今後について議論を交わす「Rakuten DIY Summit」(以下「DIYサミット」)を2022年から開催してきました。今年のDIYサミットには15社が集結し、業界が抱えるEC化の加速と課題解決に向けて、それぞれの視点から意見を述べてもらうなど、ECの可能性をさらに広げられるような会議体となりました。
DIYサミットでオーガナイザーを務め、DIY工具などを販売するDIY FACTORYを運営するジャックさんは、現在のDIY市場についてこう話します。
「DIY産業の市場規模は“4兆円産業”とも呼ばれるほど大きなものですが、金額は20年間ずっと横ばい。店舗数だけが増える中で4兆円の奪い合いをするのではなく、業界全体で手を取り合って市場の規模拡大に向けてまい進すべきだと感じていました」
そんなジャックさんの想いもあり、楽天が会議体の主体となり、これまでに5回のDIYサミットを実施してきたのです。
第1回目から議題に上がっていたのは、全国で深刻な課題となっている空き家問題です。国民の衣食住における“住”を支えるホームセンター業界が尽力し、解決へ向けて力を発揮すべきだとする提案がなされました。そしてまちづくり会社の役員・鯛島 康雄さんが今回のイベントを企画し、大和郡山市の協力を得て実現したのです。
大和郡山市では、エリア再生に向けたビジネスプランを作り出す実践型スクール『リノベーションスクール』を19年から開催してきた実績があります。空き家や使われていない店舗など、すでにある町の資産を生かそうとする試みです。
「リノベーションスクール受講者の大垣さんらが立ち上げたまちづくり会社と大和郡山市は連携協定を結び、城下町エリアの活性化に向けて手を携えてきました。おかげさまで空き家の活用件数も少しずつ増えてきています」と話すのは、大和郡山市役所で公民連携空き家利活用推進室の係長を務める小谷 佳世さん。
すでに何件もの空き家のリニューアルを見届け、まちの変化を実感しつつある小谷さんは、「駅からも近いオカマチ荘」の新たな姿に大きな期待を寄せています。
それぞれの想いが重なり合って実現させる、元城下町の新たな灯火
梅雨の始まりを予感させる空気の中で、大型扇風機やスポットクーラーを設置して臨んだDIY教室。快適とはいえない作業場でしたが、皆さんの眼差しは始終いきいきと見えました。
木屑やペンキだらけの作業着の皆さんに、一日の感想をおうかがいします。
「日頃から、段ボールや空のペットボトルなどを使って工作を楽しんでいる」と言う小学校3年生のけんせいくんは、初めて扱うインパクトドライバーも器用に使いこなし「ビスを打つのが楽しかった」と満足げ。「ずっと壁紙貼りに挑戦したかった」と言うお父さんのゆうすけさんは、「講師陣のおかげで、一人でDIYしている時には得られなかった学びがあった」と話します。
ご夫婦で参加された夫のしげるさんは「壁紙貼りの仕上がりは完璧じゃないけれど、古民家だからいい味になるだろうね」と、DIYの醍醐味を堪能。DIYスキルを磨きたい妻のまさえさんは、「初めての経験にとても心が動かされました。体力がもつかどうか心配だったけれど、逆に元気をもらったほど」とにっこりです。
また、大和郡山市出身のあいさんは、「自分たちの手で古いものを生まれ変わらせ、城下町の頃の活気を取り戻したい」と、地元への想いを語ってくれました。
喜びの声は主催者からも。
市内の空き家再生に携わってきた市役所の小谷さんにとってその想いはひとしおです。「たくさんの人の手が加わって空き家が再生されていく過程を目の当たりにして、今日は胸がいっぱいになりました」と感無量のご様子。
本イベントの企画運営に携わり、会場で忙しく駆け回っていた楽天ECコンサルティング部Dianaは、この日のイベントについて「DIYサミットの積み重ねによる成果の一つで、実践編の第一歩」と断言します。「業界の未来に危機感を持つ15社もの企業が集ってくださったのは、とても異例なできごと。関係各社のご尽力はもとより、楽天にしか実現できなかったと考えています」と胸を張る。
「たくさんの楽天市場の店舗様が協賛してくださったのは、楽天との絆の証。楽天のECコンサルタントが、約5万7,000からなる各店舗様の業務サポートをしており、互いに強い信頼感が築けているからだと信じています。DIYサミットにおいては空き家活用などの取り組みを続け、DIY業界のEC化促進や全国で深刻化する空き家問題の解決をけん引する存在になれたら」と、締めくくりました。
これからも地方自治体や企業と手を取り合って、楽天の挑戦は続きます。