世界3万人以上の従業員をつなぐ社内報「Rakuten News Network」の力とは?
楽天グループの社内報は、主に動画で制作しています。世界中にいる3万人以上の従業員を対象にほぼ毎日配信している「RNN(Rakuten News Network)」は、動画だからこそ実現できる圧倒的な視覚情報量とスピード感のあるニュース性によって、従業員の関心を常に引きつけてきました。また、動画記事の多くを社外にも掲出することによって、楽天の事業や文化を広く発信しています。
国境を越えて従業員同士の共感と連帯感を育む役割を担ってきた、このRNNを運営するのは社内広報課です。本記事では、社内広報課に所属するメンバーの中でも、Koichanさん、Tatsuさん、Dragoさん、Elleさんの4名に、運営の裏側や日々の挑戦、そして未来に向けたビジョンについて詳しく話を聞きました。
ほぼ毎日、3万人以上の従業員へ動画を発信! 楽天グループの社内報「RNN」
——楽天の社内報「RNN(Rakuten News Network)」について教えてください。
Koichan: RNNは、動画を軸とした社内報です。世界中にいる3万人以上の従業員に向けて、各事業の最新ニュースや楽天文化の紹介、ノウハウ共有などをほぼ毎日配信しています。こうしたデイリー配信は、オフィス内に点在するスクリーンで放送するほか、社内ポータルや、コミュニケーションアプリ「Viber(バイバー)」など、好きなメディアや好きなタイミングで視聴できるようにいくつかの選択肢を用意しています。また、重要度の高いニュースなどは、楽天クリムゾンハウス(本社)で毎週開催している全社員参加の会議「ASAKAI(朝会/あさかい)」でも放送しているんです。
——社内報を毎日配信するにあたって、大切にしていることは何ですか?
Tatsu: 配信までのスピード感ですね。早い場合は、撮影したその日のうちにニュースを届けることもあるんです。こうした素早い対応を実現できるのは、社内で内製できる体制を整えているからだと思っています。私たち社内広報課のメンバーが、ニュース動画のプロデューサーとして企画・構成表を作成し、オフィスに常駐するクリエーターの方々が撮影・編集してくれています。
——スピード感を実現するために、運営体制のほかにも工夫していることがあれば教えてください。
Drago: 撮影前の事前準備が進行の鍵を握ります。動画制作のプロセスは大きく分けて、インタビュー対象へのヒアリングとネタ収集、構成表の作成、撮影と編集、そして配信準備の四段階があります。動画制作の関係者は、インタビュー対象者はもちろん、主幹事業の責任者や対外広報担当者、チーム内はナレーション担当者やウェブページ制作担当者まで多岐にわたっており、やりとりも多くて内容も複雑です。ですから、事前に構成表を作成し、スケジュール管理を徹底しながら関係者全員と連携することによって、すべての工程をスムーズに進行させています。
——世界中に拠点を持つ企業の社内報として、特別に配慮していることはありますか。
Tatsu: 情報の伝え方には細心の注意を払っています。従業員の約2割が外国籍で、サービス展開拠点は30カ国・地域からなる楽天グループですから、文化や背景の違いに気をつけなければいけません。例えば、先日「楽天モバイル」はプラチナバンドの商用サービスを開始しましたが、これは日本特有の呼び方です。単にPlatinum Bandと伝えるだけでは、日本国内で暮らしている外国籍の従業員ならまだしも、海外の拠点で働く従業員には「プラチナバンド=障害物に強く広い範囲に届く携帯電話の電波のこと」だとすぐにはわかりませんよね。ですので、ナレーションや注釈で説明を追加したり、文脈で理解できるよう動画を構成したりしています。日本国内で「当たり前」とされるモノ・コトをそのまま伝えてしまわないよう、常に頭の中で推敲するようなイメージでニュースに向き合うようにしています。
5秒で伝わる現場の熱量:動画で加速するRNNの情報伝達力
——楽天の社内報はいつからスタートしたのでしょうか。
Koichan: 2005年に紙の社内報を毎月発行したことが始まりです。2009年にはウェブ形式のデイリーニュースに変更し、2015年から動画ニュースを開始。2019年頃からは一部の内容を社外にも公開し始めました。動画に移行した背景には、楽天グループの事業や従業員の構成が多様化し、グローバル化が進んだこと、そして公用語が英語になったことがあります。動画は情報量が多く、また伝達スピードも速く、各地や各事業の熱量や状況を伝えるのに適していますから。
——Koichanさんは社内報の立ち上げから業務に携わっていますが、紙と動画では伝えられる内容に違いを感じますか。
Koichan: そうですね。フィジカルなイベントや現地の雰囲気の伝わり方については、特にその差が大きいと感じています。紙媒体の時には、写真とテキストで工夫して表現していましたが、動画なら5秒でその魅力を伝えることができます。また、ドキュメンタリーのように深い理解が必要なコンテンツは、見せる「場」に工夫が必要です。そうしたものはウェブページよりも、ASAKAIのように会場に皆さんが集まり、一斉に動画を流せる「場」を活用します。多くの従業員が同じ時間を共有して共感を生む時間を作ることが重要だと考えているんです。例えば、ASAKAIの中に設けられたパラリンピックの選手壮行会でドキュメンタリー動画を放送したところ、従業員から大きな拍手が起こり、選手たちを盛大に送りだすことができました。またグループの重要戦略である「AI活用」は、その好事例を生み出した従業員の活動内容や具体的な効果を紹介した動画を度々放送しています。その後に登壇したAI担当役員や三木谷が続いてその重要性を説明することもあり、全社的にAI利用の機運を高めることができたと思います。
——動画の社内報ならではの強みを感じた具体的なエピソードはありますか?
Drago: 記憶に深く残っているのは、実際に登山をし山頂から動画を撮影し配信したことです。世界中の楽天グループ役員が一堂に会す毎年恒例の「リーダーシップサミット」では、三木谷と役員らが1日かけて山登りをして結束を強めます。このユニークなイベントに私も撮影隊として同行して、往路の様子を撮影しました。山頂に着いたタイミングで、その場で動画を編集してオフィスにデータを送り、アップロードしてもらったのですが、参加者たちの息遣いや体感温度さえも感じられそうな臨場感のあるニュースをすぐさま届けられることは、動画の強みだと思います。
——そんな山登りを含め、RNNでは多様な社内イベントを紹介していますが、イベントを取材する際のコツはありますか?
Elle: 取材する私たちが、オープンな姿勢で臨み、誰よりもそのイベントを楽しむことです。例えば、毎年秋に仮装を楽しむイベント「Rakuten Halloween」や浴衣姿で仕事をする「浴衣デー」などでは、自分たちも仮装したり浴衣を着て、そのイベントの魅力を肌で体感することです。そうして自分たちが従業員たちの輪の中に入り込むことによって、インタビューに応えてくれる方々も前向きな姿勢で協力してくれるように感じますし、その場の雰囲気や空気感を観る人に届けられる良い動画に仕上がると感じています。
楽天の魅力を知り尽くした社内広報課。彼らの展望は?
——RNNを運営するにあたって、課題に感じていることはありますか。
Tatsu: 私のチームでは直近の目標を、デイリー配信を行っている従業員向けのViberチャンネルの登録者数拡大としています。このチャンネルは任意登録制で、現在約1万人の従業員に登録していただいていますが、より多くの方にリーチできるようしたい。そのために、Viberチャンネルでは、カジュアルな投稿やショート動画、登録キャンペーンを活用し、登録者数の獲得を目指しています。さらに投票企画やクイズ企画などを実施して高いエンゲージメントを保っています。当然ながら、ニュースの品質向上による信頼性の確保も、ひきつづき重要な取り組みです。
——そうした課題もある中で、今後のRNNのビジョンや、チームもしくは個人として挑戦したいことをお聞かせください。
Elle: 私が社内広報課のメンバーとして目指すのは、従業員の皆さんが、「楽天で働けて良かった!楽しい!」と感じ、仕事に誇りを持てる社内文化を醸成することです。そうした試みは、社外にも楽天の魅力を広く知ってもらうことにもつながると考えています。動画の制作やSNSなども絡めた発信方法の工夫によって、RNNをより広範なメディアへと成長させていきたいですね。
Tatsu: 私たちのチームは、楽天に関するトピックを世界で最も多くカバーしているメディア集団だと自負しています。ですから、中長期的には社外にも影響力を持つコンテンツ制作を目指し、社外報部門との連携を強化したいと考えています。
Drago: すべての従業員は、魅力のあるストーリーを各々が持っていると私は信じています。一見興味をそそられない内容でも、ストーリーとして磨き上げることで輝かせることができるはずです。従業員の皆さんの仕事や、皆さん自身が、楽天にとってどれほど重要なのか、ほかの従業員にどのような良い影響を与えるのかをしっかりと伝えていきたいですね。それは、プロデューサーとしての手腕が問われるところだと思っています。
Koichan: 社内広報課として、日進月歩するテクノロジーの最前線に立って、その時代に適した伝達方法を模索し続けることが重要です。そのために、私たちは常に学び続けなければならないと感じています。なぜなら、ここ10年だけで見ても、世界的にメディアの在り方、視聴環境や視聴者の意識など、どんどん変化しています。これらに適応できなければ、どれほど良いコンテンツであってもしっかりお届けすることができなくなってしまいますので。しかしながら、技術的なことだけに追われるのでなく、チームのみんなが幸せで仕事にやりがいを持てなければ、良いコンテンツなんて作れるはずもないとも思っています。なので、チームのリーダーとして仲間を大切にしながら、これからもまい進していきます。
いかがでしょうか?楽天の社内広報課はこうしている間にも、取材や制作を続けてくれています。彼らの制作した動画の一部は、以下のサイトからご覧いただけますので、ぜひご覧ください。
コーポレートサイト:
https://corp.rakuten.co.jp/innovation/