ドローンやロボットが当たり前になる未来に!無人ソリューション事業部の挑戦(後編)

楽天のドローンや自動配送ロボットに関するサービスを提供する無人ソリューション事業の「これまで」と「これから」をひも解くインタビューの後編になります。前編をご覧になっていない方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。

トップランナーとして産業をけん引する「無人ソリューション事業部」

-- 人手不足解消の強力な手立てとして注目を浴びる無人化ソリューションについて、前編では規制緩和による運用促進についての期待感をお話いただきましたが、ここに至るまでの道のりは平坦ではなかったと思います。

Hiro: そうですね。ロボットによる配送サービスをスタートしたのは2019年ですが、当初は自動配送ロボットが公道を走行することがまだ法律で認められていませんでした。ですから私たちは、2019年から大学公園などの私有地での実証実験を重ねていったんです。それらの実績が認められて自動配送ロボットの公道実証実験が許可制で行えるようになり、21年には神奈川県横須賀市馬堀(まぼり)海岸の住宅地において、スーパーマーケットからの商品配送サービスを期間限定で実施しました。自動配送ロボットが公道を走行してスーパーの商品を配送するのはこれが国内初の事例でした。そして2022年5月からは茨城県つくば駅周辺地域にて、飲食店や小売店からの商品配送サービスを実施しています。

-- 実証実験や試験運用を重ねて、現在はつくば市でサービスを定常的に運用している段階なんですね。ドローンはいかがでしょうか。

Tadashi: ドローン事業も配送サービスからスタートしました。一般消費者向け配送サービスの第1弾は2016年で、千葉県御宿町にあるゴルフ場内にて飲食物の配送を行っています。2021年には三重県志摩市の本土から離島・間崎島(まさきじま)までの配送、同年に千葉県市川市に位置する超高層マンションへの配送、2022年には埼玉県秩父市の山間部において物資の配送を実施するなど、今日まで業界の最前線を走ってきました。

-- なるほど。ドローンによる定常的な配送サービスも、いよいよ実現間近といった感じがします。

【ロボット】2022年から、茨城県つくば市にてロボットによる配送を実施
【ドローン】三重県志摩市の本土から離島・間崎島までの配送

組織の変遷と再編成: ロボット配送事業とドローン事業の合流

-- ドローン事業は配送サービスからスタートしていますが、合弁会社の設立やM&Aによる買収、組織再編などが行われたことによって事業内容がさらに広がっていますね。

Tadashi: はい。ドローン事業はサービスの提供を開始した当初から、安全で円滑な飛行を行うため、有人機でいうところの航空管制の必要性を感じていました。そのため配送業務を軸とするドローン事業とは別の組織として、2017年にドローン空域管理において世界で中心的な存在であったアメリカのAirMap(エアマップ)社との合弁会社「楽天AirMap」を設立しています。「楽天AirMap」では、地方自治体などの空域管理者とドローン操縦者の間でドローンの飛行に関する申請や情報提供が可能なプラットフォームを提供していました。

その後、「楽天AirMap」は一定の役目を終えたとして会社を解散したのですが、2022年には、ドローンスクールの運営や操縦士のクラウドソーシング(人材マッチング)などにいち早く取り組んでいたSKY ESTATE(スカイエステート)社を完全子会社化してドローン業務を大きく拡大しました。2023年1月にはSKY ESTATEという社名を楽天ドローン株式会社に変更しています。

この時、ロボット配送事業も無人ソリューション事業部に合流しました。

-- 複雑な変遷を経て、ロボットやドローンのサービスすべてが無人ソリューション事業部として合流したということですね。

Tadashi: そうですね。再編意図としては、無人化・省人化のソリューションによって人手不足を解決するというミッションが共通していたからです。これによって、より強力に社会課題の解決に取り組む体制にシフトしました。メンバーの知見も広がって、より前向きなアイデアを創出できるようになったり、建設的なディスカッションができるようになったと感じています。

-- 使用するロボットや活動領域は違えども、目的を一つにする同志と共に活動できることはとても心強く感じられます。

ロボットやドローンによって“人々と社会をエンパワーメントする”未来

-- 人手不足という喫緊の課題に対して大きな変革が求められているなか、無人化ソリューションを活用してどのような社会を実現したいとお考えでしょうか。

Hiro: ロボットやドローンが、いつでもどこでもモノを運んできてくれる、そんなことが当たり前になる社会を作っていきたいです。そうした想いもあって、2022年2月には楽天が発起人の一社となり「一般社団法人ロボットデリバリー協会」を発足し、ロボット配送の普及に向けた環境を整えてきました。このたびの道路交通法改正にあたっては、安全基準とガイドラインの策定や、審査の仕組みづくりも行なっています。

Tadashi: 私もHiroさんとまったく同じ意見で、ロボットが日常生活で活躍する未来が楽しみでなりません。特に、重労働であったり、危険な場所での作業を伴う業務はまだ世の中にたくさんありますから、そうした業務の無人化・省人化によって社会に大きく貢献していきたいですね。チームメンバーのみんなには、無人ソリューション事業部の仕事は社会へ大きなインパクトを与えるという、とても価値のあるものであることを理解し、またその業務に携わっていることを少し大げさですが喜びや誇り、仕事へのモチベーションとしてもらえるととても嬉しく思います。

-- なるほど、無人ソリューションが切り開く新しい未来への期待感が膨らみますね。では最後に、お二人の個人的な野望があればぜひ教えてください。Hiroさんはいかがでしょうか。

Hiro: 配送に関して、ロボットやドローンが街の中の“当たり前のインフラ”になればいいなと考えています。ECのラストワンマイルやフードデリバリーのみならず、クリーニングの依頼や受け取り、図書館の本の貸し借り、BtoCだけでなくCtoCも含めて色々な活用が考えられます。そんな風にして、ロボットが街なかのあらゆる配送を担い、人々の生活をより便利にする存在になったら嬉しいです。

-- ロボット配送のインフラ化によって街を活性化させるというビジョンは、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」という楽天グループのミッションにも通じるものですね。Tadashiさんはいかがですか。

Tadashi: 私はロボットなどとの連携に期待しています。例えば、ロボットがラストワンマイルを配送して、マンションに備え付けられたドローンがそれぞれの部屋の窓やドアの前まで配達する……。そんなことが実現できたらとても便利だと思いませんか。

-- すてきですね。人手不足による山積みの社会課題に対して、ロボットが道路を駆け巡ってドローンが滑空する景色が当たり前になる日を夢見つつ、意外とそんな未来があっという間に来てしまうかもしれませんね。

本日はありがとうございました。

※文中の内容・肩書などはすべて掲載当時のものです。

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