野球観戦のチケットを買うと東北で海藻が育つ…?「ブルーカーボンオフセット」とは


来る7月4日に東京ドームで東北楽天ゴールデンイーグルス(以下、楽天イーグルス)対オリックス・バッファローズ戦を楽天グループの冠協賛試合「楽天スーパーナイター」として開催します。今回、そこで楽天グループはカーボンニュートラルの取り組みとして、試合で排出されるCO2(温室効果ガス)を「カーボンクレジット(炭素排出権)」の購入によって相殺(オフセット)する、「カーボンオフセット」の施策を実施することに!

今回の「カーボンクレジット」の提供者は、国内最大量のブルーカーボンを保有する岩手県洋野町(ひろのちょう)。今回の取り組みは、環境・社会・経済に配慮した持続可能なグリーンな社会を目指す「Go Green Together」プロジェクトの一環として行うもので、株式会社楽天野球団と楽天グループ株式会社(以下楽天)、楽天エナジー株式会社、そして洋野町が連携して行います。

楽天イーグルスは『がんばろう東北』というスローガンを掲げて、東日本大震災の復興や支援活動を行ってきました。また楽天でも、楽天イーグルスと共に東北での支援に取り組んでいる中で、ブルーカーボン創出というイノベーティブな事業を通じて海洋保全に取り組む洋野町を知り、その活動に共感したことから、このたびのコラボレーションが実現しました。

本記事では、今回の取り組みに携わる洋野町、楽天、楽天エナジーの三者へのインタビューをお届けします。イベントにかける意義や想い、「カーボンオフセット」の概要、洋野町の創出する「ブルーカーボン」についてお話を聞きました。

[ お話いただいた方 ]

板橋寿彦(いたばし・としひこ)氏/岩手県洋野町 水産商工課長。ウニが育つ洋野町の藻場(もば/海底の海藻が茂る場所)を利用して、ブルーカーボン事業の推進に力を入れている。2022年に洋野町ブルーカーボン増殖協議会設立。同協議会事務局長。

Naoさん/楽天グループ株式会社ブランドパートナーシップアクティベーション部 所属。スポーツやエンターテインメントのイベントを通じたブランディング活動に携わっている。本件では、ブランディング戦略やマーケティング戦略の立案、イベントのプロジェクトマネージメントを担当。

Moetさん/楽天エナジー株式会社カスタマーエクスペリエンス部 所属。エネルギー領域における脱炭素やサステナブルサービスの企画、運営などに携わっている。本件では、クレジットの精査、調達と企画に対するサポートを担当。

オンラインインタビューの様子。(左上から時計回りに)岩手県洋野町 水産商工課長 板橋寿彦氏、楽天エナジー カスタマーエクスペリエンス部 Moetさん、楽天グループ ブランドパートナーシップアクティベーション部 Naoさん。

野球の試合で発生するCO2を、東北のカーボンクレジットで相殺

- 7月開催のイベントにおける環境保全につながる取り組みについて、ご説明をお願いします。

Nao: 2023年7月4日(火)に開催される試合において、楽天が来場者1人当たり1kgのカーボンクレジットを洋野町から購入することで、試合で排出されるCO2をオフセットする取り組みです。

楽天グループ主催の「楽天スーパーナイター」とは、本拠地東北まで足を運ぶことが難しい方にも楽天イーグルスの一軍公式戦をお楽しみいただけるように東京ドームで開催する冠協賛試合。2019年以来、4年ぶりの開催。

- これまでも楽天グループとして、野球観戦などを通してカーボンオフセットに取り組んできたと思いますが、カーボンオフセットとは具体的にどんな仕組みなのでしょうか。

Moet: 地球温暖化を抑制するため、CO2などの温室効果ガスの削減努力が世界中で行われています。温室効果ガスの「排出量」から、植林や森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、全体で実質的にゼロにするという考え方がカーボンニュートラルです。

そして、「カーボンオフセット」とは、カーボンニュートラルを達成するための一つの手段であり、削減しきれない温室効果ガスの排出量を CO2の吸収に関わる活動への取り組みや投資を行うことなどによって相殺するものです。この時、排出削減量を売買可能にしたものが「カーボンクレジット」と呼ばれています。

- 本企画では、野球の試合でやむなく排出されるCO2排出量を、洋野町の藻場が創出するカーボンクレジットを購入することでオフセットするとのことですが、試合当日のカーボンクレジットの購入見込みはどのくらいになりますか。

Nao: 1人当たりの一日のCO2排出量は、約5kgと言われている(注1)のですが、観戦時間の約3時間や前後の移動を含めて来場者一人当たり1㎏と算出しました。ですから、来場者数×1kgのカーボンクレジットを楽天が調達する計算になります。さらに、本活動に賛同いただける野球ファンの皆様に向けて、1枚につき5kgのCO2のオフセットに貢献できる特別なチケット「ブルーカーボン・オフセット付きチケット」の販売も行います。いずれにしても、調達したカーボンクレジットは、洋野町の藻場の創出や保全活動に役立てられる予定です。

日本が誇るウニの漁場であり、ブルーカーボンでも新たな価値を見出した「増殖溝」

- カーボンクレジット制度とは排出削減量を売買可能にする仕組みとのことでしたが、カーボンクレジットにはどんな種類があるのでしょうか。

Moet: 今回、私たち楽天エナジーが調達するのは「ブルーカーボン」というもので、これは海草や藻、マングローブ林といった海洋生物に取り込まれた炭素のことを指します。陸の森林がCO2を吸収するように、海洋生物がCO2を吸収して長期にわたり海底にとどめることによって、大気中からのCO2が貯留されるという仕組みです。一方で、陸上の植物によるものは「グリーンカーボン」と呼ばれています。

ブルーカーボンの仕組み。藻場などの海洋生態系に取り込まれた炭素のことを指す。大気中のCO2は藻などに吸収され、流れ藻となって長い期間海底に閉じ込められるという。

- なるほど。洋野町のブルーカーボンは、どんな海洋生物から創出されるのでしょうか。

板橋: 洋野町においては、藻場に生息する昆布、わかめが主な海洋生物です。これらの海藻は、光合成をすることでCO2を吸収しながら成長し、内部に炭素を蓄えます。その一部が海底に沈んで、何百年とCO2がため込まれ、CO2の固定に長期的な効果が期待できると考えられています。洋野町種市の沿岸部には南北約20kmに断続的に岩盤地帯があるのですが、ここに人工的な溝を掘り、ウニなどの漁場として活用している「増殖溝」周辺での取り組みが、昨年ブルーカーボンとして認定されたのです。

- 岩盤の藻場がウニの餌になるということですね。上空からの写真では、広大な岩盤に何本もの溝が見えます。

板橋: そうなんです。これは岩盤に溝を掘った「増殖溝(ぞうしょくこう)」というもので、ウニやアワビを育てるために人工的に作られたものです。浅瀬の岩盤地帯が干潮時に干上がってしまうため漁業には不向きだったこの地域が、今ではウニの水揚げ量全国二位を誇る漁場として発展したのは、50年前に先人が増殖溝を掘って水を流れ込むようにしたからなんです。

- 洋野町に豊かな資源をもたらしてくれたこの増殖溝が、ブルーカーボンとして新たな価値を生み出してくれたということなんですね。

藻場から得たクレジットを活用し、その収益を藻場の保全に

- 藻場によって創出されるブルーカーボンクレジットの売買で得た収益は、洋野町でこれからどのように活用されていくのでしょうか。

板橋: 藻場の創出や保全活動資金などに充てていきます。ブルーカーボンの制度自体がスタートしたばかりということもあり、洋野町ブルーカーボン増殖協議会を設立して具体的な使い道を協議している最中なのですが、増殖溝にたまった砂の除去に活用できたらと考えています。砂が蓄積して溝の効果が薄れると、ウニが育たなくなってしまいます。とはいえ、そのための経費を町の財源だけで捻出することがほぼ不可能ですから。

また、個人的な野望としては、未来を担う子どもたちに向けて、漁業に興味関心を寄せてもらうための教育資金として活用できたら、大変嬉しく思います。

- 藻場によって得られたクレジットが藻場や地域の人々に還元されるなら、こんなに素晴らしいことはないですよね。では最後に、7月開催の「楽天スーパーナイター」におけるカーボンオフセット企画をきっかけにして、これからどんなことを実現していきたいかについてそれぞれ教えてください。

Nao: 本年は、楽天がグループ全体として掲げる『2023年カーボンニュートラル』達成目標年(注2)です。また、楽天はスポーツをきっかけに、多くの方の「もっと良い未来」を創っていくことを目的に、「スポーツとともに、もっといい未来へ。A BETTER FUTURE TOGETHER」をテーマにした活動を行っています。スポーツ観戦などを通して気軽に環境保全に貢献できるような取り組みを、さらに加速させ強化できたらと考えています。

Moet: 今回の企画のようにスポーツ分野における施策はもちろんのこと、他の楽天のサービスともコラボレーションし、様々な場面で実施できる環境保全の機会をお客様に提供していきたいです。

板橋: これをきっかけとして、環境保全の意識がより幅広い人々に定着するといいなと願っています。また、このたびの野球観戦を通して洋野町にもご注目いただき、それがゆくゆくは漁業者の増加、持続可能な水産業が保たれることにもつながることを期待しています。今後もぜひ、このような取り組みを継続できたら大変嬉しく思います。

- 本日は、ありがとうございました。


楽天はグループ全体で、安心して暮らせる社会を次の世代へとつなぐために、環境に配慮したグリーンな未来を呼びかける 「Go Green Together」プロジェクトを2022年より始動しています。楽天のあらゆるサービスを通じて環境問題やサステナブル消費などを考えるきっかけを創出し、環境・社会・経済に配慮した持続可能なグリーンな社会の実現を後押ししています。

また、楽天は2022年9月に「2023年カーボンニュートラル」達成目標を発表し、2023年中に、連結子会社を含めた楽天グループ全体の事業活動における温室効果ガス排出量(注3)を実質ゼロにする、カーボンニュートラルの達成を目指しています。

(注1)出典: 全国地球温暖化防止活動推進センター「一人当たりの二酸化炭素排出量(2020年度)」の年間排出量を基に算出。
https://www.jccca.org/download/65505

(注2)楽天グループのプレスリリース:楽天、「2023年カーボンニュートラル」達成目標を発表
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2022/0928_01.html

(注3)温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)の排出量を算定・報告する際の国際的な基準である「GHGプロトコル」に沿って算出・第三者保証を取得した、Scope 1排出量(自らによる温室効果ガスの直接排出量)とScope 2排出量(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出量)の合計。

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