モバイル主体の「楽天市場」ができるまで
モバイル主体の「楽天市場」ができるまで
楽天が携帯電話(フィーチャーフォン)向けの「ケータイ版楽天市場」を開始したのは、2000年9月。携帯電話の公式メニューで本格的なECサービスを開始したのは、「楽天市場」が最初でした。しかし、当時のインターネットショッピングといえば、まだまだパソコン経由が主流でした。それから数年経っても、「ケータイ版楽天市場」の流通総額は、楽天市場全体の1%にも満たない時代が続きました。
2006年、「楽天市場」の出店者を対象とした戦略共有のための大型イベント「楽天EXPO」のメインテーマに掲げたのは「モバイル!! モバイル!! モバイル!!」。ここで楽天会長兼社長の三木谷は、「モバイル端末経由でのECマーケットは、パソコン版をしのぐ巨大なものになる」とモバイル端末対応の重要性を説き、「将来的には、『楽天市場』の流通総額の50%はモバイル経由になる」と予測しました。今では当たり前のことに思えるかもしれませんが、スマートフォン自体がほとんど普及していなかった当時は、聞いていた多くの店舗様や楽天のスタッフですら、そんな日がくるという確信を持てなかったと言います。
同時期に、社内では三木谷とモバイル対応を進めるチームメンバーで、モバイル経由の流通目標について議論していました。チームリーダーが示した目標数値は、リサーチ会社によるマーケット予測から綿密にはじき出されたものでした。しかし、三木谷は、そのマーケット予測をはるかに超える目標を提示し、「そもそもこの予測は『楽天市場』がこれからモバイル流通を伸ばしていくことを知らずに立てられている。『楽天市場』が伸びればマーケット規模は広がるのだから、この予測を基に議論するのは意味がない」と一蹴しました。マーケットの中でいかに戦うのかではなく、自分たちがマーケットを創るという思いだったのです。
2015年、「楽天市場」の流通総額の割合はついに、モバイル経由がパソコン経由を上回ります。そして2016年12月にはスマートフォン経由だけでも月間流通総額が全体の6割を超えるまでになり、「楽天市場」は今ではモバイルを主体とするECサイトになっています。
現在、スマートフォンアプリのダウンロードを促進するキャンペーンのほか、SNSと連携したメッセージ発信、そしてビッグデータを活用したパーソナル・マーケテング施策もあり、モバイル経由の流通は継続的に伸びています。モバイルECの可能性はますます広がっていくでしょう。
こぼれ話①:携帯世代の若手たちがつくったモバイル経由流通拡大の快進撃
2004年当時、「楽天市場」事業部のほぼすべてのリソースは、パソコン経由の流通総額拡大のために注がれ、モバイル担当チームは細々と運営していたと言います。しかし、携帯世代である当時20代のチームリーダーは、給料日直後から一気に伸びていくパソコン経由の流通総額が、月半ばの数日間だけ伸び悩む期間があることに気づき、「その1日だけでいいからモバイルに特化したキャンペーンを打たせて欲しい」と上司に交渉しました。それが、その後10年間ほど続いた「毎月10日はケータイの日」キャンペーンの始まりでした。その後、2009年11月11日、チームメンバーたちは「ケータイ版楽天市場」の流通総額が1億円を超えるのを目の当たりにします。自分たちが時代を動かしていることを実感し、歓喜で飛び跳ねたそうです。
こぼれ話②:モバイルでのロングページ
スマートフォン上のページデザインはシンプルなものが主流という中、「『楽天市場』のロングページは、モバイルには向かない」と言われていました。しかし、実際にモノを売る人のストーリーや商品愛などが目いっぱい表現された、人間味あふれる商店街のようなページこそ、お客様の楽しい買い物体験へつながるという「楽天市場」流の考え方は、モバイル版でも変えることはしませんでした。むしろ、シンプルさや使いやすさとの共存を図ったのです。ロングページであっても、ページ表示に時間が掛からずサクサク見られるようにするなど、様々な工夫が施されています。