奈良の『食の魅力』を再発見!楽天と自治体が協力して取り組む地域創生事業
楽天創業時から取り組んでいる「地域創生」
楽天グループは、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」という企業理念のもと、創業時から「地域創生」にも取り組んできました。日本各地の44の自治体(2023年2月時点)と包括連携協定を締結するなど、自治体と共に地域課題の解決に向けた取り組みを行っています。今回は、奈良県と取り組んだ「食の魅力を活用した誘客促進事業」をご紹介します。
奈良の魅力を紐解くヒントに ―「ガストロノミーツーリズム」とは?
皆さんは、ガストロノミーツーリズムという言葉をご存知でしょうか?ガストロノミーツーリズムとは、「その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズム」のことです。地域の伝統や多様性をサポートするだけでなく、文化の発信、地方経済の発展、持続可能な観光の実現等にも寄与します。
近年は世界的にも注目が高まっており、UNWTO(国連世界観光機関)は2015年から毎年「ガストロノミーツーリズム世界フォーラム」を開催しています。同フォーラムは、世界の観光や食文化への理解促進に関する情報と、歴史的・文化的な固有の食文化を発信する貴重な場となっており、2022年12月には第7回目にして初めて日本国内で開催され、その地に選ばれたのが奈良県でした。
奈良県でのガストロノミーツーリズムの機運の高まりを背景に、奈良県と楽天では、奈良県の新たな食の楽しみを掘り起こし、食をきっかけとした観光誘客を図ることを目的とした事業に取り組んでいます。今回は、その一環として、2023年2月20日に東京・新橋にある奈良県ブランドショップ「奈良まほろば館」にて「奈良の『食の魅力』再発見!学生と考える次世代のガストロノミーツーリズム」というイベントを開催しました。
奈良県および東京都の大学から合わせて20名以上の学生が参加したこのイベントは、知識を学ぶだけではなく、味覚を含む五感を通じて、奈良の食文化に対する理解を深めていただけるような二部構成で行われました。まず「学びを得る第一部」として、国内や奈良県におけるガストロノミーツーリズムの変遷についてのセミナーや、大学生による奈良県内での取り組み事例の紹介、実際にガストロノミーツーリズムを活用した誘客アイデアを検討するワークショップなどが行われました。そして、「食文化を体験する第二部」では、ガストロノミーツーリズムを体感すべく、この日のためにシェフがメニューを考案した、奈良県産の食材を使ったスペシャルコースの実食を皆さんで楽しみました。
第一部では、まず奈良県 観光局 観光プロモーション課の職員の方と、楽天グループ株式会社 地域創生事業 共創事業推進部の谷口博紀が、奈良県の歴史や伝統に由来する食の魅力や商品力について紹介し、今回のイベントを今後の事業に生かしていきたいという強い思いを語りました。
続いて、株式会社ぐるなびの杉山尚美氏が登壇し、存続が危ぶまれていた「和食」がユネスコ世界無形文化遺産に登録されてから10年経ったこと、そして2017年の「文化芸術基本法」の改訂など、日本において食が「文化」として認識されるようになっていった経緯を紹介。また、ガストロノミーツーリズムを推進している奈良県への観光旅行において、食事についての注目も高まっている現状を説明しました。
さらに、奈良県立大学 地域創造学部の学生から、奈良県御杖村(みつえむら)のもつ課題を、食で解決することを目指すレストランの取り組みが紹介されました。
レストランでは、村で採れた食材だけを使用した料理のほか、地元の方々からヒアリングした御杖村特有の慣習や風景をメニューに盛り込み、御杖村に関する情報も一緒に提供しました。御杖村の風景を表現するため、学生自らが陶芸家の指導を受け、料理を提供する器を作成して紹介することで、お客様の満足度や土地への興味・関心の向上につながったそうです。
セミナーを踏まえて、誘客施策を検討
その後、学生たちは4チームに分かれて、20代に向けて食をテーマにした奈良県への観光誘客施策を検討するワークショップに移行しました。テーブルの上に奈良県のお菓子「鹿サブレ」「神鹿最中」が置かれている中、熱心な意見交換が進められていました。
ワークショップ中には、「ミシュランガイド奈良特別版2022」に二つ星として掲載されたレストラン「akordu (アコルドゥ)」の川島 宙シェフと、ぐるなび杉山氏のトークセッションが開かれました。
「akordu(アコルドゥ)」とは、バスク語で「記憶」を意味する言葉。川島シェフは、食文化だけでなく、歴史や景色なども料理を通じて体感して、”記憶”してもらうことが重要であると語りました。また、香りや見た目が奈良の空気と調和し、伝統文化を想起させるストーリー仕立てのメニュー作りを意識しているそうです。
シェフのお話をヒントとして、さらに議論をブラッシュアップさせた学生たちは、それぞれ検討したアイデアを発表しました。60分という短い時間だったものの、様々な観点からの意見が飛び交い、充実したディスカッションが行われたことがうかがえる内容でした。
発表後は、「奈良まほろば館」内にあり、川島シェフが監修し運営受託している、「ミシュランガイド東京2023」に一つ星として掲載されたレストラン&バル「TOKi」に移動し、川島シェフによる調理デモンストレーションを見学しました。
「大和野菜」として認定を受けている、奈良県の特産野菜「大和きくな」のソースの調理工程をキッチンで見て、出来立てのソースを試食することで、伝統野菜の持つ風味を感じ、素材を活かす業と奈良の食文化への理解が深まったようです。
いざ!奈良を感じるスペシャルコース(6 品)を試食
第二部の実食体験では、冬の終わりから春への移り変わりを香りで感じられるスペシャルコースが振舞われました。それぞれのメニューには、奈良県で生産されているだけでなく、歴史・風俗・季節などのストーリーを感じられるように意図した食材を使用したり、奈良で焼かれた器を選んでいたりなど、奈良を疑似体験しているかのような仕掛けが感じられます。
『メニューを構築するテーマ』
1.奈良の景色と歴史
2.万葉集・古今和歌集
3.日本の節気と奈良の伝説
4.伝統行事で巡る奈良
5.素材で季節を感じる
<コース内容>
・海の香りの奈良 奈良の香りの海
・醤酢(ひしおず)に蒜(ひる)つきかてて鯛願う
・まめくら豆と下北春まな
・大和牛のアサード 燻した香りとその次に在るもの
・古都華(ことか)苺のジェラート 奈良とスペイン
・奈良サンド
メニューの中でも、万葉集に編纂されている、「醤酢と蒜で和えた真鯛を食べたい」というメッセージが込められた歌から着想を得たという「醤酢に蒜つきかてて鯛願う」が特に印象的でした。古代調味料の醤(ひしお)と酢を使ってネギを和えた真鯛にトリュフの香りをまとわせ、そこにレバーコンフィが添えられた料理で、真鯛に想いを馳せた歌い手の気持ちが伝わるようなインパクトに残る一品でした。
食後には、川島シェフと学生たちによるディスカッションが行われました。月ヶ瀬の和紅茶と、奈良漬けを使用したクッキー「奈良サンド」に舌鼓を打ちながらの意見交換を通じて、参加した学生たちはそれぞれこの日の体験を反芻しているようにうかがえました。
地域創生を目指して
これまで、奈良県の「食の魅力を活用した誘客促進事業」では、楽天インサイトを利用したアンケート調査や、その調査結果などを踏まえて「楽天トラベル観光体験」で体験プランを作るなど、楽天のサービスを活用した施策を行ってきました。また、今回のイベントでは、学生たちに「奈良の食」に対しての学びや体験の機会を提供しました。今後も、楽天では様々な自治体と連携し地域をエンパワーメントできるような活動を続けていきます。
これからの楽天の地域創生事業にぜひご注目ください!