【Rakuten AIの裏側】渡邉 秀文が語る、AIによる消費者理解の深化

※本記事は、以下の「Rakuten.Today(英語版)」で掲載された記事を抄訳したものです。
https://rakuten.today/blog/inside-rakuten-ai-hidefumi-watanabe-on-how-ai-unlocks-deeper-consumer-understanding.html
本シリーズでは、楽天の AI 開発に携わる責任者や、「AI の民主化」を目指す楽天のビジョンを推進するキーパーソンに話を聞き、AI という革新的なテクノロジーにまつわる様々なトピックについて深く語っていただきます。過去のブログはこちらからご覧いただけます。
また、楽天グループの YouTube チャンネルでは、「Rakuten AI の裏側シリーズ」として本記事を含むインタビュー動画を公開していますので、ぜひご視聴ください。
第5回目となる今回は、楽天インサイト株式会社の代表取締役を務める、渡邉 秀文に話を聞きました。
―自己紹介をお願いします。
渡邉: 楽天インサイト株式会社の代表取締役を務めています渡邉 秀文です。もう1つ、楽天インサイトグローバル株式会社という海外事業を展開している組織の代表取締役も務めています。
「楽天インサイト」はマーケティングリサーチ業界に属しており、ユーザーインサイトや消費者インサイトをクライアントに提供するビジネスを行っています。特に新しい商品を市場に出されるクライアントや、これから広告展開を考えている企業に対して、どう届いたのか、どのようにどう使っていただけたのかといった、ユーザーサイドから見た情報を提供しています。こうした情報は企業にとって非常に不可欠です。「楽天インサイト」では、モニター組織を活用して、こうしたビジネスを展開しています。
企業の重要な意思決定を支えるエビデンスのある高品質なデータをしっかり提供することをミッションとして、大事にしています。

―今まで顧客のどのような悩みを解消し、どのような成果を上げてきたのでしょうか?
渡邉: 「楽天インサイト」には業界最大級の、約220万人のモニターがいます。これだけの人数がいることで、細かいニッチなセグメントやターゲットに対するアンケートも実施でき、しっかりとしたアンケート結果を提供することができます。
もう一つ新しいサービスとして「R-ブランドリフトサーベイ」があります。これは広告を見た人と見ていない人に同じ質問を投げかけ、広告接触の有無でどう違いが出るかをデータで取得するサービスです。従来はアンケートで「この広告を見ましたか?」と聞いていましたが、「R-ブランドリフトサーベイ」では実際のログデータで広告接触の有無を判定しています。今までは「広告を見た」と回答しているモニターがいても、真偽がわからず、品質を担保することが難しかったのですが、ログデータによりデータの品質が大きく向上しました。
また、業界最大級のモニター数があるため、ニッチな広告でも十分なサンプル数を確保できます。例えば、他社では10~15サンプルしか集まらなかった調査でも、「楽天インサイト」では30サンプル以上集め、定量調査として成立させることができた、という声もいただいています。

―「R -ブランドリフトサーベイ」はいつから始まったサービスなのでしょうか?
渡邉: 約5年前から提供しています。動画広告の市場が伸びてきたことで、動画広告が増えるほど、実際に広告に接触した人にアンケートを取りたいというニーズが増えています。メディア側も、こうしたデータを使って自社広告商品の価値を広告主に示すことができるようになりました。ログデータを使った調査の需要は、動画広告市場の成長とともに広がっています。
―AIを活用した取り組みについて教えてください。

渡邉: 我々のサービスの柱は3つあります。1つはインターネットリサーチ(ウェブアンケート)、2つ目が先ほどの「R-ブランドリフトサーベイ」、3つ目がインタビュー調査です。従来のインタビュー調査は人間が行っていましたが、「AIチャットインタビュー」というサービスを開発しました。
インタビュー調査は、アンケート調査と比べて「なぜそう思ったのか」「理由は何か」といった深掘りした質問ができる点が最大の強みです。例えば「この商品を買いましたか?」という質問はアンケートでも正確に取れますが、「なぜ買ったのか」「どんな気持ちだったのか」といった理由や背景を聞く場合、アンケートの短いテキストボックスでは十分に表現しきれないことが多いです。文章力や表現力の差も出てしまい、表面的な回答にとどまることもあります。
インタビュー調査では、対面やオンラインで直接やりとりすることで、回答者の本音や深いインサイトを引き出すことができます。特に、理由や背景、感情などを掘り下げて聞くことができるため、クライアントが求める「なぜ?」にしっかり応えられるのが大きな特徴です。
ただし、従来の人間によるインタビュー調査は実施できる人数に限界があり、コストや時間もかかります。1対1のデプスインタビューであれば1人、グループインタビューでも30~40人が限界で、数百人・数千人規模で実施するのは現実的ではありません。
そこで、AIがユーザーに対して質問を投げかけることで、同時に数百人規模のインタビューが可能になり、文字起こしを即座に行うことができるので納品も早くなります。「AIチャットインタビュー」は、従来のアンケート調査の弱みや、人間によるインタビューの限界を補うことができます。昨年後半にローンチし、最初は新しいコンセプトだったため浸透に時間がかかりましたが、クライアントからも徐々に好評を得はじめており、2025年3月には売り上げが同年1月の10倍以上に伸びました。

―AIの精度向上のためにどのような工夫をしていますか?
渡邉: 従来はAI系のプロダクトを作る部門がプロンプトツールを開発していましたが、インタビュー調査のプロがプロンプト作成に関わるようになりました。人間のインタビューのノウハウをAIのプロンプトに落とし込むことで、精度が大きく向上しています。
―「AIチャットインタビュー」のユーザーからの反応はいかがですか?

渡邉: 病気に関するインタビューなど、パーソナルでセンシティブなテーマでは、人間同士だと遠慮が生じ言葉にするのも難しい場合があったのですが、「AIチャットインタビュー」だと警戒感が薄れ、プライバシーが守られていると感じていただけるようです。また、短納期で大量のインタビューができる点も高く評価されています。
―今後のAI活用やビジョンについて教えてください。
渡邉: AIの活用が進んでいるのは、組織のカルチャーによるものだと考えています。私以上に積極的で熱量をもって取り組んでくれるメンバーが多く、私たちの事業であるデータ分析ビジネスとAIの相性も良い。そのAIを活用していくというカルチャーそのものを強化していきたいなと考えており、これこそが組織を強く、競合優位性が高い事業にしていく上で最重要だと感じています。また今後は、調査プロセスだけでなく、クライアントの意思決定プロセス全体にAIを活用し、より質の高い意思決定を支援したいと考えています。
最終的には、マーケティング領域においても、データがクライアントの意思決定に直接インパクトを与えるような仕組みを作りたいと考えています。
―最後に伝えたいことがあればお願いします。
渡邉: 我々はマーケティングリサーチ業界で、インターネット調査を通じてイノベーションを起こすことをミッションと捉えていました。従来は電話や紙、郵送、訪問で行っていた調査も、今はほとんどインターネットに置き換わりました。次はAI活用で業界のフロントランナーを目指し、しっかりと事業を推進していきたいと考えています。





