楽天の最強AIエコシステム:「Rakuten AI Optimism」三木谷オープニングキーノート

「Empowering the Future」をコンセプトに、パシフィコ横浜で開催された楽天グループ最大級のビジネスイベント「Rakuten AI Optimism」。2026年8月5日(水)〜8月7日(金)の開催期間中、会場とオンラインを合わせて約4万人もの方々にご参加いただき、大きな盛り上がりを見せました。
初日の基調講演には、楽天の代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史が登壇。楽天が推し進めるAIの取り組みについて語りました。本記事では、基調講演の内容をダイジェスト版でお届けします。
いかにAIを使うか。加速するインフラに対抗
様々な意味で、経済状況が大きく変わろうとしています。特に日本においては円安がなかなか止まりそうにない。普段の生活でもビジネスにおいても、どんどん値上がりをしている状況になっています。
物価は6年間で13.6%上昇。私の予想では、ここでは止まらないと思っています。今後、メモリーがAIによって不足していく。エネルギー需要もどんどん増えていく。加えて国際紛争の状況を考えていくと、物価高は減速ではなく加速していくと考えざるを得ない。それに対抗すべく楽天グループは、家計の大きな部分を占める通信費を下げようということで、「楽天モバイル」というプロジェクトを進めてまいりました。
ところが通信費も、サーバーの値段などコストが上がってくる中で、残念ながら少しずつまた上がり出している。これからの経済を考えていくと、電気代が上がっていく、調達コストが上がっていく、人件費が上がっていく状況になっていく中で、いかにAIを使うか、いかに新しい販路を作っていくかが極めて重要ではないかと思っています。

進化し続ける「楽天モバイル」。楽天エコシステムの中核に
通信の分野でも、AIがどんどん入ってきています。楽天では、いわゆるネットワークの管理はAIによって大部分を行っています。もう一つ、楽天グループにとっては流通総額の押し上げの大きな部分が「楽天モバイル」の契約者から来ています。「楽天モバイル」に入ると「楽天市場」のショッピングが51.3%、「楽天トラベル」の利用が21.6%、楽天カードの利用が33.3%増えるということで、「楽天モバイル」抜きには楽天のエコシステムはもう語れなくなりつつあります。

加えて、どんな事態が起こっても通信がつながることがライフラインとして極めて重要です。AST SpaceMobileと我々が進める衛星通信のプロジェクトでは、使用しているアンテナはサイズが巨大ですから、携帯電話と直接ブロードバンド接続ができるということで、他社との差別化になっているのかなと思います。そういう意味で「楽天モバイル」はこれからも進化をし続ける、「楽天エコシステム(経済圏)」の中核になっていくということをお伝えします。
AIは誰が勝つのか。世界で凌ぎを削る開発競争
インターネット革命とこのAI革命が同質なのか、それとも全く違うのか。単純に何かを効率化するということ以上のインパクトがある。あらゆるものが再定義されるのかどうか、ということだと思っています。
AI革命のスピードは、私の想像をはるかに上回っています。我々の業界にはムーアの法則というものがあります。半導体の性能が進化するスピードは1年半で2倍、3年で4倍、6年で16倍。凄まじい加速度でスピードは上がってきました。
AIの進化は、そのムーアの法則をはるかに上回るスピードで進化をしていると思っております。AIエージェントの性能は7カ月ごとに倍増しています。1年間で約4倍、2年間で約16倍のことができるようになる。これはさすがにAIには無理だろうと思っていたことができるようになるということだと思います。リアルな人間がやっているのか、そうじゃないのかわからないというくらいになってきました。
2025年、楽天グループでは255億円のAIによる利益が生まれました。なぜ他社に比べて有利かというと、AIというのは基本的には処理アルゴリズムなんですよね。データがダイヤモンドの原石であり、データがどれぐらい充実してるかということが重要であるということです。一般的な質問をしてそれに答えてくれるのは、当然データが世の中のウェブ上にあるから。そこに特定のデータがなければAIの活用はできないということです。

楽天グループは、毎月約5,000万人がショッピングをしたり、取引をしたり、何らかの経済活動をしていただいております。3兆を超すくらい巨大なデータを持っています。一つのデータのプラットフォーム上ですべてが動いているということであり、そのデータを活用して、様々なサービスを提供することができます。

楽天がおそらく日本の中で数少ない、本気でAIの開発をしている企業の一つです。現在、楽天グループが開発しているAIは4つあります。また日本語は極めて特殊なので、日本語ベースのAIを開発していかなくてはいけないと思っています。日本語スコアで言えば、楽天グループのAIは世界的なAI企業に対抗ができていると思います。楽天グループの戦略というのは、OpenAI、GoogleのGemini、Anthropic、Microsoft、こういったものを使いながら独自のAIを組み合わせていく。これによってコストを下げるだけでなく、サービスの品質を上げていきたいと思っています。

「Rakuten AI」はエージェントからスーパーエージェントへ
我々のサービスをいくつかご紹介させていただきたいと思います。一つは「AIコンシェルジュ」。私も「夏になったから、楽なサンダルが欲しい」とか、AIを使って買っています。もう一つ、関心や興味という意味では、ディスカバリーファンクション(発見機能)。無限にスクロールしていくことによってショッピングのエンターテインメント性を高めていくことができる。
そして、今進めているのが「AI店長」です。楽天にとっては店舗の皆様が大切です。これから何が起こるかと私は思っているかというと、より「人」が大切になってくる。でも人の処理能力には限界がある。店舗の店長さんをアバターにしていただいて、お問い合わせ、質問、商品購入のお手伝いができる「AI店長」というものの開発を始めております。人間には24時間365日、何万という処理はできない。「人」のプロファイルを読み込んだうえで、「AI店長」を導入するということをやっていきたいと思っております。

他のサービスをご紹介させていただきますと、「楽天モバイル」の「Rakuten Link」で電話していただくと、会話内容をAIで簡単に要約をしてくれる機能があります。今後はリアルタイムで通訳をするようなエージェントがモバイル通信の中に入ってくるということになってくるでしょう。
広告へのAI活用もどんどん進んでおりまして、統合的なAIをプラットフォーム化することによって、例えば北海道にスキーに行っている人にスキーのグッズを紹介しましょうとか、こういう食べ物が好きな人には「楽天市場」のふるさと納税を紹介しましょうということを行っていく。「Rakuten AI」はエージェントからスーパーエージェントへと進化していきます。
AIがサービスを進化させていく。その中で重要なのは、「人け」(人の気配)をどうやって大切にしていくかです。インターネットショッピングは自動販売機ではないと、ずっと掲げてきています。人間というのは、「人間味のあるAI」を必要としているのではないでしょうか。
ショッピングエージェントとしてのAIエージェントというのは、単純に買い物のトランザクションを遂行するだけじゃなく、汲み取って「こういうのはどうですか」というようなことを、それぞれの店舗の特徴を生かしながら行っていくことが大切。楽天らしいAIエージェントをさらに進化させて、皆さんと共に進めていきたいと思っております。





