楽天ソシオビジネスで「骨格筋量測定」のアルゴリズムを開発!特許取得の背景をご紹介

皆さんは「楽天ソシオビジネス」をご存じでしょうか?国籍・文化・ジェンダー・LGBTQ+などあらゆる側面でダイバーシティ&インクルージョンを推進している楽天グループにおいて、特に障がい者雇用の面でその推進に大きな役割を果たしているグループ会社です。企業のビジョンとして「多様な人が、多様なまま、多様に活躍できる社会の実現」を掲げています。

そんな「楽天ソシオビジネス」は楽天グループのアウトソーサーとして、グループ各社から名刺などの印刷業務や総務・人事に関する業務、Webのクリエイティブ製作やデータ分析など、幅広い仕事を請け負い、多くの障がいのある方々が活躍しています。その中でも「テクニカルサービス部」は、高い技術力を持ったエンジニアメンバーで構成されており、RPA開発や財務基幹システムの改修など、業務改善におけるシステム開発を強みとしています(注1)。

そうした技術力を活かし、視覚障がいを持つ方には操作が難しいとされるRPA開発に参画できる技術を部内で開発しました。この技術開発は、公益社団法人企業情報化協会より、2020年度第38回IT賞「特別賞(社会課題解決領域)」を受賞(注2)するなどし、注目を集めました。

(注1)RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション): ソフトウェアロボットと呼ばれる概念に基づく事業プロセス自動化技術の一種

(注2)プレスリリース:楽天、公益社団法人企業情報化協会より、2020年度第38回IT賞「特別賞(社会課題解決領域)」を受賞

そして2022年9月には、「楽天ソシオビジネス」に所属するKimiさんが、「骨格筋量測定」の支援が可能なプログラムを開発し特許を取得しています。今回は、その新しいプログラムの特許取得にまつわるストーリーをご紹介します!

「骨格筋量測定」の支援が可能なプログラムとは

そもそも、「骨格筋量測定」の支援が可能なプログラムとはどのようなプログラムなのでしょうか。

現在、骨格筋に影響を及ぼす様々な疾患を診断・診察する際は、専門医が「医療用(CT/MRI)画像」から骨格筋組織の状態を目視で判断しています。骨格筋量の減少をみて症状の進行具合を判断するのですが、画像処理が手作業であることに加え、目視で行うため専門医によって診断や診察結果に相違が発生する可能性がありました。

そこで、骨格筋組織に疾患をもつ当事者としての視点から、この課題解決方法を着想し、持ち前のシステム開発技術でKimiさんは、この支援プログラムを作成!

今までは手作業で、CT画像データ上の骨格筋以外の部分(=不要データ)を除去していたところを、「骨・筋肉・脂肪」に分けられた画像をこのプログラムにより処理することで、自動的に不要データを除去できるようになりました。

これにより骨格筋の量がより正しく定量化され、より正確な診断や診察が可能になるとともに、作業時間の劇的な削減により、同じ時間で大量のデータを取り扱うことを可能にしました。

この研究に参画した当初、Kimiさんは「楽天ソシオビジネス」には所属しておらず、Kimiさんの主治医が携わっていた「骨格筋量測定」の定量化に関する臨床研究に協力していました。しかし、「骨格筋量測定」という臨床研究テーマが「病状の診断をはじめとして広く社会に貢献できる可能性をもった壮大なテーマである」という点、また 「無所属の個人のままであるよりも、組織に所属したほうが研究協力活動の継続がしやすい」という観点から、自身の活動のサポートを得られる組織を探します。

そこで所属を決めたのが、医療分野にも携わっており、法務・知財部門の体制が充実している楽天グループの会社でした。「楽天ソシオビジネス」としても、楽天グループのミッションである「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」こととの親和性もあり、この研究テーマの価値に賛同。企業として臨床研究に貢献できるよう、Kimiさんの研究活動のバックアップをするための研究開発の専門チームを設立し、特許認定に関するサポートを行いました。

Kimiさんはどのような想いでこのプログラムを作成したのか。インタビューを行いました!


―「骨格筋量測定」支援プログラムを開発したきっかけを教えてください。

私は10数年前に、筋肉に影響を及ぼす疾患を罹患しました。その診断をしていただいた先生が偶然にも厚生労働省の研究班で「医療用画像による骨格筋量測定」の臨床研究をされていました。私がSIer(システムインテグレーター)でシステム開発の経験があることを知った先生が、画像プログラムの相談を私にされたことが最初のきっかけです。

その後、研究班からの画像分解アプリの業務委託開発など、画像処理の分野で臨床研究に協力をさせていただきました。臨床研究自体はまだ続いていますが、一つの成果として脚の骨格筋組織別の画像の処理方法と非対象物消去方法をロジック化し、支援プログラムとして開発しました。

―「骨格筋量測定」支援プログラムを開発して反響などはありましたか?

開発した支援プログラムを利用した「骨格筋量測定」を2019年の日本筋学会で発表する機会がありました。それにより、特殊な装置がなくても今までの医療用画像から骨格筋量を定量化できることから、製薬会社を中心に医療関係の多方面から実用化の目処に関する問い合わせをいただきました。

現在も骨格筋組織の非対象物の自動除去率の向上に関心が高まり、厚生労働省研究班の臨床研究テーマとして継続採用されています。臨床研究の継続により新たな気づきも多く、支援プログラムの進化が期待されています。

―プログラムの開発に関して、楽天とどのように連携して進めましたか?

法律的な観点での各医療機関や企業との臨床研究契約の取り交わしや特許申請について、楽天グループの法務・知財部門より全面的なサポートをいただきました。特に特許申請では、法務・知財部門にサポートいただいたことにより、研究結果発表後1年間で申請しなければならないという制約の中で特許申請を実現することができました。

楽天には、臨床研究の社会的意義や今後期待される社会貢献の可能性に理解をいただき、楽天グループの一員として臨床研究を継続できていることに大変感謝しています。また私自身の疾患と障がいに対する理解や配慮をいただいていることにも感謝しています。

―今後このプログラムがどのように社会で使われてほしいですか?

現在も骨格筋組織非対象物の自動除去率の向上を目指して臨床研究が継続中です。汎用的なAI部品を新たに開発し支援プログラムを進化させる予定です。これにより、さらに正確な「骨格筋組織の非対象物の自動除去」が完成され、骨格筋組織の定量化が実現(臨床研究が成功)できれば、様々な医療分野や介護福祉の分野で社会貢献ができることを期待しています。また進化したプログラムを汎用化して、異分野に横展開したいとも考えています。


現在は、製薬会社を中心に医療関係の多方面から実用化目処に関する問い合わせをいただいているとのこと。実際に障がいを抱える当事者が自らのアイデアによってイノベーションを起こし、社会に貢献していく姿は素敵ですよね。

「楽天ソシオビジネス」をはじめ楽天グループでは、これからもダイバーシティ&インクルージョンを促進し、すべての従業員が自分らしく、それぞれの能力を最大限に発揮できる環境づくりに取り組んでいきます!

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