世界データが再発見!伊集院 光氏と考える「楽しい組織」のつくり方

パシフィコ横浜で開催された楽天グループ最大級のビジネスイベント「Rakuten AI Optimism」。本イベントの最終セッションでは、「世界データが再発見!伊集院光と考える『楽しい組織』の作り方」をテーマに、タレントの伊集院 光氏、楽天グループ株式会社 常務執行役員 アド&メディアカンパニー プレジデントの松村 有晃、楽天グループ株式会社 プラットフォーム戦略統括部 戦略企画部 ジェネラルマネージャーの池田 千代和が登壇しました。

世界各国の様々なデータを基に、日本人の幸福や働き方、仕事への熱意などを読み解きながら、「日本をもっと元気にするためには何が必要なのか」「楽しい組織をつくるために何ができるのか」を議論しました。

本記事では、セッションの内容をダイジェスト版でお届けします。


日本人は本当に「幸せ」なのか


松村:
今日は、日本をどうやったらもっと元気にできるかということを、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。楽天は「日本を元気にする」ということを掲げていますが、最近の日本を見ると、元気なところもある一方で、ちょっと調子が悪いんじゃないかなと思うこともあります。

それを感覚だけで捉えるのではなく、ちゃんとデータで分析して、本当にどこに課題があるのかを特定し、みんなで解決策を考えていくことが必要だと思っています。

楽天グループ株式会社 常務執行役員 アド&メディアカンパニー プレジデント 松村 有晃


池田:
世界各国の2,000を超えるデータを、「幸福」と「経済成長」という観点から見ていきました。その中で見えてきたのが、社員の熱意やリスクテイク、自分で意思決定すること、女性活躍など、日本がもう少し取り組んだ方がいいんじゃないかという課題です。

この中でいくつかフォーカスしてお話しさせていただこうと思います。



伊集院:
データって、断片的なものや大ざっぱなものだけを、そのまま飲み込んでしまうのは違うと思うんですよね。例えば「幸福度が低い」というデータだけを見るのではなくて、その中で何が起きているのかを細かく見ていく。いろいろなデータを組み合わせていくと、今まで自分たちが感じていた答えが、実はそうとも言えないと分かることがあります。

もちろん、データを全部集め終わって現実を全部分析できたとか、未来を完全に予測できるということは一生ないと思います。これを過信して途中で考えることをやめてしまうことが、間違いに陥る可能性は高い。だからこういう多面的で細かいデータを見るのは、すごくワクワクしますね。


日本で「熱意のある社員」は8%


池田:
経済活動をシンプルに「消費」と「生産」に分けてみると、日本人は買い物が好きで、消費については世界でもトップクラスです。一方で、生産する側、つまり社員の熱意を見ると、日本はかなり低い水準にあります。

アメリカの調査会社Gallupのデータでは、日本で「熱意のある社員」の割合は8%です。世界では5人に1人くらい、アメリカでは3人に1人くらいが熱意を持って働いています。


伊集院:
僕は、このデータを見る時に、日本人の特性も少し考えた方がいいと思うんです。例えば「あなたは幸せですか?」と聞かれた時、日本人って「私は幸せです!」ってあまり言わない気がするんですよね。幸せを感じていたとしても、ちょっと低めに答える。

仕事についても、「自分は熱意を持って頑張っています」と言うより、「僕なんかまだまだです」「熱意が足りません」と答える傾向があると思います。

ただ、それを何度も言っているうちに、「自分には熱意がない」「自分はそれほど幸せではない」ということが、本当に現実になっていってしまうところもあるんじゃないかと思うんです。「やる気あります」と言うのは格好悪いとか、仕事なんてちょっと斜に構えている方がクールだ、みたいな意識が、本当にやる気をなくす方向に働いているとしたら、そこは考えた方がいいと思います。

松村:
実際、就職する会社を選ぶ時の価値観も変わってきています。以前は「これをやりたい」「こんな仕事がしたい」ということが会社選びの大きな理由でした。それが徐々に下がってきて、今は「安定している会社」「給料の良い会社」といった条件を重視する傾向が強くなっています。

伊集院 光氏



「仕事は楽しい」と思える組織をどうつくるか


松村:
ただ、この流れを変えられないわけではないと思っています。私が10年ほど前に初めて部長になった時、自分の部署の従業員満足度は35%くらいでした。3人に2人くらいは嫌々仕事をしているのかと思うと、申し訳ない気持ちになりました。

そこで、従業員満足度を自分のKPIの一つにして、楽しい職場をつくることに取り組みました。「仕事って楽しいものだよ」ということを掲げて、「楽しい職場にする」ことに、リーダーである自分自身の役割としてコミットしました。

色々な施策を試していった結果、1年半くらいで従業員満足度を85%まで上げることができました。その中で分かってきたのが、従業員満足度やモチベーションにすごく効いてくるのは、「自分がやっていることで世の中が良くなる」と感じられることなんです。

自分の仕事が社会にどうつながっているのか。それがイメージできる役割をみんなが担っていると、モチベーションは上がっていきます。データを見ても、人生に目的を感じている人ほど、仕事への熱意も高い傾向があります。

ただ、日本では15歳の時点で、「人生の意味が分からない」という人がとても多い。「何のために勉強するのか」「何のために仕事をするのか」という目的を考えるより、「とにかくやりなさい」と言われてきたことも、背景の一つにあるのではないかと思っています。



AI時代、人間に残るのは「心」かもしれない


松村:
これからAIの時代になると、この話はさらに重要になってくると思います。人間には「頭」「心」「体」があると考えると、「体」の部分は機械に置き換わってきました。そして今は「頭」、記憶だけではなく思考の部分までAIが担えるようになっています。

そうすると、将来的には「心」の部分が、人間ならではのものとして残っていくんじゃないか。だからこそ、単に学力を高めるだけではなく、「心」の部分をどう育んでいくのかが大切になると思っています。



伊集院:
僕が師匠から教わったことで、今でもすごく覚えていることがあります。「子どもの頃、まだ何も分からなかった時に、時間を忘れてやっていたことってあっただろう」と言われたんです。それに社会性をつけて仕事にしていけば、一生食っていけるんじゃないかと。

僕は、それってすごくいいことだと思うんです。最初に理屈で好きになったものは、多分、理屈で嫌いになることもできる。でも、「なんだか分からないけど、この人が好き」とか、「なんだか分からないけど、これをやることが好き」というものは、最後まで残るんじゃないかなと思います。

何でもタイムパフォーマンスとかコストパフォーマンスで考えてしまうと、そういうものがどんどん「ばかばかしい」と思えてしまう。それによって、人が持っているエネルギーまで失われているんじゃないかと思うんですよね。



「社会より自分」「未来より今」になっている?


池田:
データを見ていくと、日本人の価値観にも変化が起きています。「他人や社会と比べて、自分の方が大事」と考える人の割合が上がっています。時間軸についても、長い未来より「今、この瞬間」を重視する方向に変わってきています。

つまり、空間的にも時間的にも、自分が大切にする範囲がどんどん身近なところに縮まってきている。日本人が少し「縮こまってきている」と見ることもできると思います。




伊集院:
今は、コツコツ努力していけば最後にはうまくいくというパターンだけじゃなくて、そうじゃない人がうまくいくパターンもたくさん見えますよね。場合によっては、コツコツ努力した人が失敗するところまで見えてしまうこともある。

そうすると、遠い未来のために今努力しようと思えなくなる人がいるのも分かるんです。もしそれが今の日本がうまくいっていない理由の一つなら、経営者側は、「今頑張ったらこういう喜びがある」というものと、「長く頑張ったらこういう喜びがある」というものを両方つくってあげる必要があると思います。それはお金でもいいし、お金じゃなくてもいい。むしろ僕は、お金じゃないものもかなり大事だと思っています。

僕はラジオを30年やっていますけど、長く続けるためには、初めて参加した人が得られる喜びと、ずっと参加してきた人だからこそ得られる喜びの両方が必要なんです。会社でも、「長くいるとこういう喜びがある」というものを、給与とは別につくれないかなと思うんですよね。



小さな「うれしい」と大きな社会をつなぐ


池田:
今のお話にもあったように、自分の身近な幸せと、自分が頑張ることで会社や社会が良くなるという大きな幸せを、どうつなげるかが大事だと思っています。自分が仕事をして、企業や社会の課題を解決する。それによって会社が良くなり、日本全体が良くなって、最終的には自分たちにも返ってくる。本来、仕事ってそういう循環だと思うんです。

ただ、その循環が大きすぎたり、自分の貢献が遠くなりすぎたりすると、なかなか実感できない。だからこそ、もっと身近に感じられる「小さなサイクル」が必要なんじゃないかと思っています。

その一つが、楽天でいうと「楽天ポイント」です。キャンペーンにエントリーしてポイントをもらう。これは一つの小さな喜びです。でも、その外側では皆さんが買い物をして、商品が届いて、消費が生まれています。その消費によってお金が回り、その先で日本経済という大きなサイクルにつながっていく。ポイントという小さなものが、そうした大きな循環を回す最初のきっかけになっていると思っています。

楽天グループ株式会社 プラットフォーム戦略統括部 戦略企画部 ジェネラルマネージャー 池田 千代和


伊集院:
僕、草野球チームをやっているんですけど、うちでは雑用係の取り合いになるんですよ。なぜかというと、用具を買った時の「楽天ポイント」をその人がもらえるから(笑)。

そうすると、「ボールの縫い目が減ってきましたよ」とか、「今キャンペーンをやっているから、試合球を補充した方がいいですよ」とか、自分から用具をチェックしてくれるようになるんです。「楽天ポイント」に限らず、「何かがたまる」ということが、やりがいになることってあると思うんですよね。

さらに、それが自分だけじゃなくて、例えば実家のお母さんに送れるとか、誰かのためになる仕組みにできたら、もっと違うモチベーションになるかもしれない。直接お金をもらうこととは違うところで、「自分がやったことが誰かのためになった」と胸を張れる仕組みがあると、活動の中にもう一つ活力が生まれる気がします。


「感謝」が仕事への熱意につながる


松村:
最後に、もう一つ紹介したいデータがあります。仕事への熱意と相関が高かったものが、「感謝」です。会社や社会など、色々なものに自分は生かされていると感じて、感謝している人ほど、仕事への熱意も高いということが分かっています。



一方で、日本とアメリカを比較すると、アメリカでは3人に2人くらいが日々感謝を感じているのに対して、日本では3人に1人くらいです。さらに、日本の若者は「自分は責任ある社会の一員だ」と考える割合や、社会課題を解決したいという意欲も低い。社会課題について会話する機会自体も少なくなっています。



個人は基盤(社会)の上にいて、そこで育まれている。恩があってそれを認識して感謝して恩返しすることで基盤が継続していく“Succession”(継承)というのが社会・人類がやってきたこと。最近は、受恩はあるけれど恩を忘れて返さない消費型“Consumption”のマインドセットが増えてきている。こうなると社会はどんどん弱くなっていってしまいます。



だから、まず私たちが始められることは、会話をすることだと思っています。大きな課題が身近にあるのに、大きすぎるから見ないふりをして、自分の机の上だけを見てしまう。それではなかなか社会は変わりません。今日紹介したデータを職場や家庭に持ち帰って、「これってどういうことなんだろう」「自分たちには何ができるんだろう」と話してほしいと思っています。

伊集院:
ただ、経営者側からは「恩を感じなさい」とは言えないですよね。それを言ったら、恩着せがましくなっちゃう。だから、「彼らが恩を感じてくれるためにはどうしたらいいのか」「会社がみんなの恩や社会貢献であふれるためにどうしたらいいのか」。自然に感じてもらうために、会社側が何をすればいいのか。そこまで考えることが、「楽しい組織」をつくる上では大切なんじゃないかなと思います。

松村:
データを見ながら課題への理解を深めて、それを一人ひとりが自分ごととして受け取っていく。課題解決はみんなで取り組んでいくしかないと思っています。ぜひ、皆さんで一緒に日本を元気にしていきましょう。

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