楽天のフィンテック(金融)サービスが描く未来 ― データとAIで、お金の体験はどう変わるのか

パシフィコ横浜で開催された楽天グループ最大級のビジネスイベント「Rakuten AI Optimism」。本セッションでは、楽天カード、楽天銀行、楽天証券、楽天インシュアランスホールディングス、楽天ペイメントの各社からキーパーソンが登壇。「フィンテックが世の中をどうエンパワーメントするのか」をテーマに、データやAIを活用したフィンテックサービスの現在地と未来について議論が行われました。
登壇者
小林 重信|楽天ペイメント株式会社 代表取締役社長、楽天グループ株式会社 上級執行役員
福島 祥子|楽天ペイメント株式会社 ペイメント戦略室 戦略部 マネージャー
三澤 達也|楽天銀行株式会社 執行役員 編成本部担当役員
中野 泰夫|楽天カード株式会社 執行役員部長 編成部長
幸﨑 えみ子|楽天グループ株式会社 執行役員、楽天インシュアランスホールディングス株式会社 執行役員、楽天インシュアランスプランニング株式会社 執行役員
土居 裕明|楽天証券株式会社 執行役員 マーケティング推進本部長

楽天のフィンテックサービスの現在地
司会: まずは楽天のフィンテックサービスの概要と現在地について、小林さんからお話しいただけますか?
小林: はい。「楽天カード」「楽天ほけん」「楽天証券」「楽天銀行」「楽天ペイ」と、本当に多くのお客様に日々の生活の中でサービスをご利用いただいており、感謝しています。楽天の創業は1997年で、最初のフィンテックサービスへの進出は2003年の楽天証券でした。そこから各サービスを追加するたびに、雪だるま式にフィンテックセグメントの売り上げは伸びていきまして、2025年度の実績で1兆円に迫るところまで来ました。これもすべて皆様のサポートのおかげです。

司会: 今日ここに集まっているメンバーは、普段からよく一緒に議論されているんですか?
小林: そうなんです。ほぼ毎日8時半からこのメンバーで顔を合わせており、次世代のフィンテックサービスについて日々議論しています。
「楽天だから実現できる価値」とは
司会: ここからは「楽天だから実現できる価値とは?」というテーマでお話を聞いていきたいと思います。まず福島さん、「楽天ペイ」の視点からいかがでしょうか?
福島: 私が挙げたのは「ID・ポイント・データ」です。「楽天エコシステム(経済圏)」には70以上のサービスがありますが、この「楽天ペイ」アプリがエコシステムと日々の生活をつなぐコアアセットだと位置付けています。毎日使われるということが、ID・ポイント・データの価値をさらに高めると考えています。スーパーやコンビニ、飲食店といった加盟店があってこそ、日常使いが実現できるんです。

司会: 最近、大きな提携もありましたよね。
福島: はい。グローバル企業であるUberとのパートナーシップを発表しました。毎日の移動や食事で「楽天ポイント」が最大2.0%貯まります。Uberのニューヨーク本社にも訪問したのですが、世界の中でも成功したパートナーシップの一つとしてとても喜んでいただいています。
司会: 続いて中野さん、「楽天カード」としてはいかがでしょうか?
中野: 私が大切にしているのは「迷わせない」ということです。世の中にモノやサービスがあふれかえっている中で、ユーザーが見たいものをすぐ見つけられて、使いやすい。そういった高品質な顧客体験が、楽天だからこそ実現できる価値だと思っています。
司会: 具体的にはどんな取り組みをされているんですか?

中野: SUS(System Usability Scale)という評価手法を取り入れています。私たちがリリースするアプリやウェブサイトは、この評価で定められたスコアをクリアしなければリリースできません。またユーザーテストも徹底して繰り返し行い、事前の検証と改善を重ねています。さらにデザインシステムも導入していて、UIのコンセプトや共通機能、レイアウト、ボタンの振る舞いなどを統一することで、どの楽天サービスを使っても同じような使い心地を体験いただけるようにしています。
司会: AIの活用も進んでいますか?
中野: はい。調査・分析からアイデア出し、デザイン、コーディングまでAIを活用しています。これまで人だけでは実現できなかったスピードや、限られた期間の中でのより多様なデザイン・体験を生み出せるようになってきました。
司会: 三澤さん、「楽天銀行」としてはいかがでしょうか?
三澤: 「楽天銀行」が持つ価値は「生活を理解する力」だと思っています。給与の入金から、「楽天カード」や「楽天銀行デビットカード」「楽天ペイ」などを通じた日々の決済、口座振替による各種支払い、「楽天証券」との連携による投資まで、お金の出入りにおける一連の流れが集約されたプラットフォームといえます。その生活の全体像をきちんと理解して、お客様一人ひとりに寄り添った体験を提供できるのが「楽天銀行」の強みです。
司会: その「理解の深さ」はアプリにも反映されているんですか?

三澤: もちろんです。今取り組んでいるのが「メリットの可視化」です。「楽天銀行」では、「楽天カード」の口座振替設定や「楽天証券」とのマネーブリッジ設定、「楽天銀行デビットカード」の利用、「楽天モバイル」の利用など、様々なサービスを使えば使うほど普通預金金利が上がる優遇金利を提供しています。これを、アプリを開くとひと目で確認できて、さらに何のサービスを使うと金利が上がるかのシミュレーションもできるようにしました。大変ご好評をいただいています。
司会: 可視化されると、お客様も次のアクションに踏み出しやすくなりますよね。
三澤: そうなんです。さらに直近では、2026年7月28日に「楽天銀行」アプリ上で「楽天カード」の請求金額と獲得予定ポイントを確認できる機能を提供開始しました。お支払い期日が近づいた際に残高が不足している場合は、事前にお知らせする機能も加わっています。
お客様の声から見えてくる未来
司会: 後半は、会場内に設置した「Future Tree」にお客様が書き込んでくださった声を基に議論していきたいと思います。まず「資産運用がもっと簡単になってほしい」という声がとても多かったのですが、土居さんいかがでしょうか?

土居: AIによる集計では、来場者の声の約25%が資産運用に関するお悩みでした。圧倒的に多かったですね。楽天証券はおかげさまでNISA口座数が業界ナンバーワンで、2026年7月に800万口座を達成しました。楽天証券が目指しているのは「資産づくりを応援する伴走者」になることです。
司会: 具体的にはどんなサービスで応援しているんですか?

土居: まず「かぶミニ®」という1株から株式を購入できるサービスがあります。例えば1株で10万円の株を1単元(100株)買うには1,000万円必要ですが、それを1株から買えるようにしました。さらに「かぶピタッ®」というサービスでは、金額を指定して株式を購入できます。100円から株が買える時代になりました。また「iGrow®」というグラフィックで資産状況を直感的に把握できるスマートフォン向けアプリも提供しています。証券用語って難しいんですよ。「指値」(さしね)とか「ザラ場」(ざらば)とか。そういう言葉をできるだけなくして、直感的に分かるようにしたいというのが我々の想いです。
司会: ポイントで投資できるのも楽天ならではですよね。
土居: そうなんです。投資信託も株も「楽天ポイント」で買えます。お金を出して損をすると悔しいですが、ポイントで始めてみると気軽に一歩踏み出せる。とても好評をいただいているサービスです。
司会: 「金融サービスでもっとお得にポイントを獲得したい」という声も多かったですね。幸﨑さん、いかがでしょうか?
幸﨑: 今日は日本初公開のデータをお持ちしました。楽天のフィンテックサービス利用数と、年間のポイント獲得量の関係を示したものです。フィンテックサービスをまだ使っていない方と比べて、1サービスを使っている方は約1.6倍のポイントを獲得されています。2サービスで約9倍、3サービスで約16倍、そして5サービス全部使っていただくと約38倍になるんです。

司会: 38倍!それは驚きですね。なぜそこまで差が出るんですか?
幸﨑: 楽天のフィンテックサービス間での連携が数多くあるからです。銀行と証券の連携やペイ残高での投資信託購入、クレジットカードでの保険料支払いなど、連携しているものほど私たちもポイントを積極的に提供していますので、サービス数が増えるにつれて段階的ではなく加速度的にポイントが増えていく仕組みになっています。
司会: 保険についても教えていただけますか?
幸﨑: 楽天保険グループでは生命保険、医療保険、自動車保険など幅広く商品を取り揃えています。「楽天ポイント」で保険料をお支払いいただけますし、お支払いいただいた保険料に対してポイントが貯まる仕組みもあります。期間限定ポイントも使えますので、保険料支払いの心理的な負担感をだいぶ軽減できるのではないかと思っています。ポイントで保険料を支払えるのは業界の元祖だと思っています。
司会: 一方で、課題もあるとおっしゃっていましたね。
幸﨑: 正直に申し上げると、楽天のフィンテックサービスにはスマホアプリが現在9つあるんです(2026年8月7日時点)。サービスがまだ分断されてしまっている部分があります。それをより滑らかに横断して使っていただくためのカギがAIだと思っています。楽天は30年近くにわたって蓄積してきた膨大なデータがあります。そのデータに裏打ちされたAIは、日本の消費者を深く理解したAIと言えるのではないかと思っていて、そういったAIにドライブされた金融体験をこのメンバーで実現していきたいと考えています。
「発見」を届けるサービスへ
司会: 決済の分野では「払う体験をもっと改善してほしい」という声も5人に1人の方から寄せられていましたね。
福島: はい。その中に「電波が悪いところでも使えるようにしてほしい」というお声もありました。実はiOSではオフラインでも決済ができるようになりましたので、ぜひご活用いただければと思います(2026年8月7日時点)。

司会: もうすでに解決されていたんですね。他には、「一元管理」や「統合」という声も多かったですね。ユーザーからするといろいろありすぎて分からなくなってきますが、今日の話を聞いていると、ちゃんと使いこなせばポイントも38倍になるし、隠れたお得がいっぱいあるなと感じました。
土居: 資産運用に関しても、2027年から「こどもNISA」が始まりますし、iDeCoも2026年末に大きく変わります。資産運用へのニーズはどんどん増えています。先月、楽天証券のセミナーを開催したのですが、会場に4,000〜5,000人、オンラインでも3万人を超えるお客様にご参加いただきました。AIを活用してお客様の悩みに応えていきたいと考えています。
小林:私がやりたいのは「発見」なんです。これだけ多くのユーザー様がいて、一人ひとりのデータを持っているのであれば、例えばUberを使っているのに「楽天ポイント」と連携できていない方に気づいてもらえるよう提案できるサービスを作りたい。三澤さんの話にあったように、今このステージにいる方には次にこれをやるとより便利だよ、とナビゲートできるような、そういうサービスを作っていきたいとよく話しています。
司会: 本気でユーザーの生活や人生をどうやったら良くできるかを毎日話し合っているんですね。
小林: そうです。アプリを開いた時に新しい発見があって、生活が便利になる。そういうフィンテックサービスを目指していきたいと思っています。

幸﨑: 私たちはテクノロジー企業としてのイメージがあるかもしれませんが、どこまで行ってもお客様のニーズがある限り、テクノロジーだけでなく人がしっかりお客様に向き合うことも肝に銘じていきたいと思っています。
中野: 毎朝8時半からのミーティングでは、今の課題だけでなく、本当に未来に向けてどうしていくかを真剣に議論しています。議論するだけでなく、実際にサービスとして届けるところまで進めています。AIは外せない要素ですので、AIを核にしたサービスをぜひ期待していただければと思います。
楽天のフィンテックサービスは、AIとデータを活用しながら各サービスをシームレスにつなぎ、一人ひとりのライフスタイルに寄り添った「発見」と「エンパワーメント」を届けることを目指しています。各社が緊密に連携し、お客様の声を起点にサービスの改善と進化を重ねる楽天。その今後の展開に注目です。




