【技術解説】オートノマス・ネットワーク:楽天モバイルの研究員たちが作る通信の未来

【技術解説】シリーズは、楽天モバイルのネットワークに導入しているテクノロジーや今後注力していく分野について解説する連載記事です。今回は、「オートノマス・ネットワーク」、自律的なネットワークについて取り上げます。

楽天モバイルは、世界初となる完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク(注)を構築しており、この革命的なネットワークをさらに発展させるために、国際色豊かな人材が独自のアイデアを持ち寄っています。

今井ピエールさんとPaul Harveyさんは現在、楽天モバイルに新しく設立されたRakuten Mobile Innovation Studioにおいて、楽天モバイルの新たなネットワークにおける「真の自律性」を実現するための研究を進めています。

今井:私たちが作りたいのは人工のエンジニアです。長期的な目標ですが、本物のエンジニアのようにネットワークを管理できる人工知能(AI)をネットワークに組み込みたいと思っています。

メンバー13人の似顔絵

今井さん(中央)とHarveyさん(右上から2番目)を含むオートノマス・ネットワーキング・リサーチ&イノベーション部門のメンバー

 

真に自律したネットワークは「進化するネットワーク」である

今井:近年のネットワークで見られる「自律」と名のつく技術の多くは、実際には自動化の技術で、「真の自律」ではありません。私たちが求めている「真の自律」は、すべてのオペレーションを単独でこなせるネットワークのシステムです。

Harvey:人が関与しなくても、システムが通常とは異なる挙動、意味のない挙動をしていないかなど自分自身に起きている問題を理解し、また自己解決できるようになる必要があるのです。
ネットワーク自体が進化していくことが、「自律」と「自動化」の違いです。

Harvey:例えば、自動運転車が陸上を走っている途中で、事故を起こして川に落ちてしまったらどうなるでしょうか?車は水の中で何もできません。誰も事前に想定していなかったので、状況の変化に対応できるよう設計されていないのです。
しかし、ネットワークは24時間365日常に稼働し、その中で様々な技術を組み合わせて、多様なサービスをお客様に同時に提供しています。このように変化の激しい状況で、ネットワーク自体が考え、環境に順応しなければなりません。

今井:想定外の変化に対処するために進化する能力がとても重要になります。「進化」とは、試行錯誤しながら、どうすればうまくいくのかを見つけていくことです。

様々な機能を組み合わせ、新たな能力を獲得して進化していくネットワークを、工具のグレードアップに例えている説明図。

今までは専門知識のある人間が手作業でネットワークの運用を行っていたが、ネットワーク自体が進化することで、様々な環境に適応するための能力(この図で言えば工具の機能)を自律的に獲得することができる

 

なぜネットワークは自律する必要があるのか?

では、オートノマス・ネットワークによって、ユーザーにはどんなメリットがあるのでしょうか?

今井:ユーザーのニーズに合わせたネットワークを作ることができるため、お客様の利便性を向上することができます。

モバイルネットワークに対する要求はますます多様になっているため、今井さんとHarveyさんは、人間のエンジニアによる手作業では対応しきれなくなる未来が来ると予測しています。

今井:10年前には、携帯電話がコンピュータのようになる通信ネットワークの未来なんて、誰も想像していなかったでしょう。今では、ほぼすべての人が手のひらサイズのコンピュータを持ち、常に通信を行うようになったのです。
ネットワークへアクセスする人々の数が爆発的に増えているだけでなく、アプリケーションやデバイスの種類が増えるなど利用方法も多様化しているため、現在はエンジニアがネットワークを管理するために常に待機している必要があります。オートノマス・ネットワークなら独自に最善のソリューションを考え出し、多様なニーズに対応できるのです。

Harvey:世界中で完全仮想化のモバイルネットワークの構築に取り組んでいますが、私たちはすでにそれを実現しています。楽天モバイルは他社よりも一歩先んじて、自社のネットワークをより良いものにするために、次は何ができるかを模索しているのです。

 

未来の世代に感謝されるものを作る

Harvey:より高レベルの自律性を実現し、各種の運用をそれぞれのシステムに任せていくにつれ、実際のネットワークがどのような進化を遂げるのか、とても興味深いことになるでしょう。

今井さんは将来の技術にも対応できるシステムの構築に意欲的です。

今井:過去に設計された仕組みに固執することなく、何が起きるかわからない将来においても、私たちのニーズに適応し続けられるシステム作りが重要となります。研究者は預言者ではないので、未来のネットワークを見通す力は持っていません。ただ、今日の努力により未来を創り出せると信じています。

(注)大規模商用モバイルネットワークとして(2019年10月1日時点)/ステラアソシエ調べ

 

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