AIとモバイルで切り拓くこれからの未来:「Rakuten Optimism 2024」三木谷オープニングキーノート

楽天グループ最大級の体験イベントとして毎年大きな賑わいをみせる「Rakuten Optimism(楽天オプティミズム)」。5回目となる今年は、東京ビッグサイト(東京国際展示場)を会場に、ビジネスパーソンから一般のお客様まで約6万6千人(累計来場者数)にお越しいただき、2024年8月1日(木)から4日(日)の会期にわたり様々なコンテンツで皆様をお出迎えしました。

今年のRakuten Optimismのテーマは「AIとモバイル」。リアル会場とオンライン両方で多くの方々が注目するなか行われた初日の基調講演では、楽天の創業から今日に至るまでの歩みを記録した映像が流された後、三木谷浩史が満を持して登壇。AIとモバイルで切り拓くこれからの未来について熱く語りました。

本記事では、基調講演の内容をダイジェスト版にてお届けします。

楽天が目指す「AIの民主化」:三つのステップについて

楽天グループは、今年で(1997年の創業から)28年目を迎えました。振り返ってみれば、創業当時のインターネットのスピードというのは有線で約14.4kbps(kilobits per second)でした。今は、無線でも1Gbps(Gigabits per second)、場合によっては10Gbpsとなっています。「誰もインターネットでモノを買わない、そもそもインターネットビジネスなんて成功しない」と言われた時代から、あらゆるチャレンジを行ってきたのかなと思っております。

私がその時に感じたのが、ネットワーク自体がインテリジェンスを得ていく時代が来るのだろうということです。AIの登場により、ある意味、今までにないインテリジェンスが出現していってるんだと思うんですね。

人間の脳は、約1,700億個の細胞からできているとも言われ、その脳細胞はニューロンがつないで「伝送」をするので、ある意味デジタルなんですよね。今、インターネットにつながっている、携帯やサーバー、あるいはパソコンなどのデバイスの数が約750億個で、これがどんどん増えていきます。これをニューロンのように、すべての情報を「伝送」して、つなげていくのがインターネットあるいは携帯ネットワークです。

つまり、新しく出現していくAI社会においては、この「伝送」部分を圧倒的に効率化することによって世の中が変わっていくということです。その中心的な役割を担うのが楽天モバイルでありたいと思っております。

今、世界を見ると、情報の国境はなくなり、いろんな課題や競争が生まれています。こうした中、楽天グループとしては、世界中の人がAIを使えるようにする、いわば「AIの民主化」を実現していきたいと考えてます。

具体的にどうやっていくのかということですけれども、ステップ1は「データによるAI技術基盤の拡大」です。楽天グループが保有する豊富なデータを活用することでAI技術をさらに強化します。ステップ2は「楽天グループ社内でAIを徹底活用」すること。社内でAIを実践的に活用して、その成果を基にモデルケースをつくっていきます。そしてステップ3は「Rakuten AIを社外へオープン化」していくことです。

楽天グループは今、AIの分野において世界中の企業から大きな注目をいただいています。私たちが開発している生成AI活用サービスや大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)はもとより、それらのモデルに学習させるための豊富なデータをもった会社はないということです。大規模なサーバーリソースを保有するハイパースケーラー(Hyper Scaler)と呼ばれる企業でさえもこれだけ “幅広くて深い”データは持っていないと思っています。さらに、今般ここにモバイルのデータが加わりました。

我々は「楽天エコシステム(経済圏)」の中で、どういうことが起きているかの把握や、それに合わせたパーソナライゼーションはできていました。しかしその外までは見えていませんでした。そんな中、楽天モバイルのユーザーは現在750万人弱に達しており、これらのデータを安全に活用することで私たちのAI技術はさらに強化されるのです。

AIの社内外活用と、生活を豊かにするコンシェルジュサービス

楽天のAI戦略というのは二つあります。

一つ目はOpenAIをはじめとする生成AI、大規模言語モデルの企業との深いパートナーシップ。彼らがなんで深いパートナーシップを組みたいかというと、先ほど申し上げた楽天の非常にリッチなデータやビジネスモデルの発展性ということかなと思います。

それと二つ目は、楽天グループ独自の大規模言語モデルの開発があります。独自開発モデルの「Rakuten AI 7B(エーアイ・セブンビー)」は特に日本語の処理において、世界トップクラスの高いパフォーマンスを発揮しています。

そして、楽天グループ内では、「トリプル20(トゥエンティ)」というプログラムをつくっています。これは、AIを活用して社内のマーケティング効率を20パーセントアップする、オペレーション効率を20パーセントアップする、という「楽天グループ社内でAIを徹底活用」するステップ2の取り組みです。また、ステップ3「Rakuten AIを社外へオープン化」する取り組みの一環として、「楽天市場」の出店店舗様などお取引先様のオペレーションにおける効率(クライアント効率)を、20パーセント向上させるという非常に挑戦的な目標を立てています。

今後、皆様のビジネスのやり方は根本的に変わっていくだろうと思います。AIは、画像の分析や作成、あるいはマーケティングやプロモーションの最適化において中心的な役割を担っていきます。また、海外への展開に向けた翻訳機能、お客様のサポート、流通の在庫管理、価格設定など、様々な分野に広がっていくでしょう。

ステップ3の取り組みの一例として、今後楽天グループが提供するユニバーサルなコンシェルジュ機能をご紹介します。この機能は、たとえばお客様が「楽天市場」でお買い物をする際に、「このお菓子を作りたいけど、必要な材料は何か?」や「小麦粉を500円以内で購入したい」といった質問に対し、コンシェルジュが対話型で最適なリコメンドや提案を行います。お買い物にとどまらず、「楽天エコシステム」内のサービスをシームレスに横断し、ユーザーの悩みや相談をすべて拾って、幅広く対応することも検討しています。

「楽天モバイル」のプラチナバンドと衛星接続

ここで、楽天グループがモバイル事業に注力している理由についてご説明します。

従来のモバイルネットワークは、古い専用ハードウェアを使って、人力によってネットワークを構築していました。楽天はこれを不可能と言われた、ソフトウェアベースに移行してみせました。このアプローチの最大のメリットは、単純にコストを安くできるというだけでなく、AIがネットワーク全体を設計・管理できる点にあります。設計から構築、運用監視、セキュリティ、さらには処理・増設までもAIがサポートしてくれます。

このような取り組みで通信コストを大幅に削減することに成功し、「楽天モバイル」では「Rakuten最強プラン」のご提供を通じて、携帯料金を約20%下げることに貢献しました。これは年間約4兆円規模の家計節約効果があったと試算できます。これで家計の節約につながり、皆さんが自由に使えるお金が増えたのではないでしょうか。

また、より快適な通信環境を実現すべく「プラチナバンド」(700MHz帯)での商用サービスも開始しています。また「楽天モバイル」が展開する全国の5G(Sub6)ネットワークの8割以上では、通信環境の安定化と高速化のために、従来の5Gアンテナではなく、圧倒的なアンテナ数を誇る「Massive MIMO(マッシブ マイモ)」を採用しています。これにより、従来の通信インフラでは実現し得なかった高速かつ広範なネットワークの構築を実現できます。

そして2026年には、「AST SpaceMobile」との衛星からの直接通信サービスもスタートします。通信インフラが届きにくい過疎地や山間部でも安定したインターネット接続が可能となるこのサービスは、災害時においてもインターネットにつながるようにします。

こうした通信環境の整備だけでなく、我々は店舗や法人のお客様へのデジタル変革(DX)支援にも力を注いでいます。日本の今後の課題の一つとして、全体の労働力不足が挙げられます。その中で、どうやって業務効率を落とさないかが重要になってくるわけですけれども、それにはDXやAIの活用しかないということで、OpenAI社の最新モデルを搭載した法人向けAIチャットサービス「Rakuten AI for Business」を提供していきます。

「楽天モバイル」のネットワークは世界最先端のAIベースのネットワークだと考えています。これを海外でも提供していくべく様々なソフトウェアを開発し、ご利用いただくことで、世界中の人がネットワークにつながっていく。仮想社会、仮想ネットワークっていうのは、もう実社会よりも重要になりつつあるかもしれないとすら思います。インターネットやモバイルが非常に表層的だと考えられていましたが、今や仮想経済の上に実経済があるということなんじゃないかなと思っております。では、その仮想経済を支えるのは何かというと“情報ネットワーク”であり、その中核がモバイルネットワークだと。そのネットワークの革命を、楽天グループは行っているということなのかなと思っています。

楽天グループはもともとインターネットの通信スピードが無茶苦茶遅い時代に、「インターネットなんて、そんなもん誰がやるんだ?」と言われながらもスタートした会社です。その後、「インターネットでトラベルなんて、なんでやるの?」「インターネットで金融なんて、なんでやるの?」「社内公用語を英語化なんて、なんでやるの?」「モバイルなんて、なんでやるの?」と、これまで「なんでやるの?」の連続でした。しかし、我々の役割としては、少しだけ先の未来を見て、そこに向かって果敢な挑戦をしていくことによって道を切り拓いていくことだと考えています。

AIによって世の中は本当に根本から変わっていくでしょう。楽天も、AIを活用しながら様々なサービスを通じて、皆様と共に日本の経済全体がさらに良い方向に行けるように、「Walk Together」を合言葉に頑張っていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

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