全ての人が楽しめる旅行を:楽天トラベルカンファレンス2025でインクルーシブな旅行を推進

※本記事は、以下の「Rakuten.Today(英語版)」で掲載された記事を抄訳したものです。
https://rakuten.today/blog/empowering-travel-for-all-2025-rakuten-travel-conference-inspires-greater-inclusivity.html
2025年2月から3月、オンラインで配信された「楽天トラベルカンファレンス2025」には、全国から7,000軒以上の宿泊施設様が参加し、旅行業界の最新戦略やイノベーションについて議論を交わしました。オープニングでは、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史が、施設様に向けてメッセージを伝えました。続いて楽天トラベルの事業を統括する髙野芳行をはじめ、開発部門の鬼本康博、マーケティング部の八日市屋隆、営業部門の幅屋太といった各セクションの責任者が、楽天トラベルの未来への展望を語りました。
カンファレンスのハイライトの一つは、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏と髙野芳行が登壇した「ホスピタリティ業界におけるブランディングの価値」に関する対談でした。
また、数々の講演の中で、インクルージョンへの画期的なアプローチで際立っていたのが、「ダイバーシティトークセッション:ダイバーシティの視点からインバウンドビジネスを理解する」でした。このセッションでは、楽天トラベルカンファレンス初の試みとして、イスラム教徒やLGBTQ+の旅行者のニーズと課題を深く掘り下げました。本記事では、このセッションを企画した楽天トラベルで多様性・ダイバーシティの推進や、インバウンドの責任者を務める長松泰樹(楽天グループ トラベル&モビリティ事業 グローバルカントリーマネジメント部 ヴァイスジェネラルマネージャー兼ダイバーシティ推進室オフィスマネージャー)へのインタビューによる解説を交えながら、セッションの様子や、楽天トラベルのインクルーシブな旅行推進への取り組みについて紹介します。
多様な旅行者のニーズに集点を当てる
長松さんは、楽天トラベルのリーダーに対して開催したダイバーシティに関する社内研修をきっかけに、楽天トラベルカンファレンスでも多くの方々に、ダイバーシティの重要性を届けたいと考えました。このダイバーシティトークセッションは、宿泊施設様に、多様なニーズについて理解を深めていただきながら、よりインクルーシブな環境づくりにより生まれる潜在的なビジネスチャンスを探ることを目的に開催されました。

セッションで紹介されたコンセプトの一つは、楽天トラベルが提唱する「メガマイノリティ」です。「メガマイノリティ」とは、「総人口は大きいものの、周囲の無理解などにより軽視されがちな集団」のことを指します。現時点では、イスラム教徒、ヒンドゥー教徒、LGBTQ+、障がい者、ペットオーナー、子連れファミリーを、日本の旅行・観光分野における「メガマイノリティ」として定義しています。長松さんは、「多くの企業は従業員のインクルージョンに重点を置く傾向がありますが、楽天トラベルはそれを超えて、(サービスをあらゆるユーザーにとって利用しやすいものにしていく)サービス・インクルージョンに焦点を当てています。それが『メガマイノリティ』という言葉につながります」と説明しました。
「メガマイノリティ」の人々は、日本を旅行する際、大変な想いをすることが多々あります。たとえば、イスラム教徒であれば、食事、祈祷、入浴に関する課題に直面することがあります。これは主に、日本にはイスラム教徒の居住者が少ないため、快適に過ごすための配慮が広く知られていないことが原因のひとつです。また、LGBTQ+の旅行者も、旅先でさまざまな困難を経験することがあります。(1)トランスジェンダーやノンバイナリーの人々に対応していないトイレや、公衆浴場などのインクルーシブでないアメニティ、(2)LGBTQ+カップルにとって、記念日などの節目を祝うのが難しい、といった問題が挙げられます。
見過ごせないのは、「メガマイノリティ」の総人口が非常に大きいことです。たとえば、イスラム教徒とLGBTQ+の人々はそれぞれ、世界人口の25%と11%(注)を占めると推定されています。
このセッションでは、「メガマイノリティ」について理解し、積極的に取り組むことへの重要性が強調されました。さらに理解を深めていただくために、イスラム教徒とLGBTQ+のコミュニティから、有志を募った上で楽天社員をセッションに迎え、それぞれの個人的な経験を共有してもらうとともに、一部の宿泊施設様からも取り組みをお話いただきました。こうした直接的な経験談は、旅行者の具体的なニーズや懸念に関する貴重な視点を提供するとともに、宿泊施設様が、旅行者の皆様にとって快適な環境を作るための実践的な提案にもつながりました。
長松さんは、ダイバーシティ推進の意義をこのように語ります。「楽天トラベルでは、従業員と宿泊施設様のダイバーシティへの理解を深めてもらうことで、従業員と、サービスを利用する旅行者の双方へインクルージョンとなることを目指しています。これは、楽天トラベルのコアバリューである『イノベーションと多様性を通じて旅の力を高める』につながります。私たちの価値観は多様であり、宗教、国籍、言語、障がいの有無等に関わらず、誰もが世界中の旅を楽しめる環境づくりを推進していきます。」
サービス・インクルージョンに向けた具体的なステップ
楽天トラベルは、サービス・インクルージョンを目指す活動として、今回のようなカンファレンスの機会だけでなく、マイノリティとされる旅行者に関する情報や知見を、宿泊施設様に継続して提供していきます。多様な旅行者に対する環境づくりに取り組まれている宿泊施設様の成功事例や、実践的な手法を紹介するカスタマーサービスハンドブックとビデオを展開します。また、社内の多様なコミュニティのメンバーからの直接的な意見を取り入れながら、宿泊施設様が直面する可能性のある課題に対し、具体的な解決策を提供することを目指します。
長松さんは、「サービス・インクルーションへの対応は、宿泊施設様が継続的に取り組まれることが必要です」と強調しました。楽天トラベルは、こうした実践的なツールや継続的なサポートを提供することで、日本の旅行者にとって、より快適な旅行体験を創出し、すべての人にとってよりインクルーシブな場所へと変えていくことを目指しています。
「私は日本が大好きで、インバウンド旅行者の数が増えているのは素晴らしいことだと思います。一方で、この国には旅行先として、まだ多くの可能性があるとも感じています。多様性の観点を通じて日本の旅行分野における可能性を広げ、日本をすべての人にとって少しでも楽しみやすい旅行先にする手助けをできればと考えています。」
(注)Ipsosによる次の調査によると:https://www.ipsos.com/sites/default/files/ct/news/documents/2024-05/Pride%20Report%20FINAL_0.pdf