昨年、アップル社CEOのティム・クック氏から「世界最高齢のプログラマー」として紹介され、世界からも注目を集めている若宮正子さん。シニア世代や若い世代にとってのテクノロジー活用をどのように考えているのか。いま注目している技術は何か――。若宮さんへのインタビューの中編をお届けします。(前編はこちらから)

 

「リケロウ」が活躍する社会に

―― シニア世代も、パソコンやスマートフォンを使いこなすべきでしょうか?

インターネットにつながることで世界が広がって、人生観も変わってきます。インターネットと、それに簡単にアクセスできるスマートフォンは、現代の生活になくてはならないものだと思います。

例えば、ある地方で火山が噴火したら、気象庁のホームページを見れば緊急速報やその時々の状況がすぐに分かりますが、それに対して「インターネットで火山情報の見方がわからない」というシニアの方がいました。命に関わる情報を、役所の職員が一軒ごとに紙で伝えていくのは時間がかかりすぎます。命が助かるには、ネットにつながっている必要があるということですね。それに、過疎地ほど、役所でも人手が足りていないからこそ、住民の安否確認や地域バスの運行に、ICT(情報コミュニケーション技術)を活用するべきです。

また、足が不自由だったり、外出に困るので車の免許証を返納するのに悩んでいたりというシニアこそ、ネット通販を利用すれば、家にこもりがちな生活が、より便利になると思います。私は、ネットで買ったほうが早い時はネットで買っています。家の中にあるものも、フリマアプリなどを利用して売れば、整理することができますよね。シニアにとって、ネット、スマートフォンの使い方はいろいろあると思います。

―― シニア世代にとっても、日常の中でITを活用することが重要になってきているということですね。

国家的に見ても、そのような取り組みを進めることが大事だと思います。実は私は、安倍内閣の「人生100年時代構想会議」に有識者として呼ばれまして、ITに関してシニアの立場から、「リケジョ」に加え、「リケロウ(ICTなどの理系分野に強い老人)」を増やすということを提案しました。

日本にはICTに携わる人が少ないといわれています。でも例えば、IT知識があるとか、定年退職後も学び続けたいという意欲のあるヤングシニアに、シニア層へのIT活用支援や、IT企業での簡単なパソコン作業を任せるなどすれば、ICT技術者を底上げできるのではないか。それが定年退職したヤングシニアの「脳トレ」にもなり、セカンドライフが充実するのではないか。そんなことをお話しました。

デジタルネイティブな子どもたちとの接し方

―― ちまたで言われる、若者の「スマホ依存」についてはどのようにお考えでしょうか?

スマホが悪いんじゃないんです。昔だって、TVゲームをやっている子どもを、親は叱りつけていたわけですから。いつの時代にも、何かへの依存が「悪」と言われるだけです。

子どものスマホ依存をどうにかしたいと思ったら、親がスマホを子ども以上に使いこなせるようになって、子どもに「これはどう?」「こういう使い方をしてみたら?」などと、言えばいいのです。親が自分より使えるようになったら、子どもはスマホを使わなくなるでしょう。子どもは、親にダメと言われることをやりたがるのですから(笑)。

―― これからの子どもたちには、プログラミングのスキルが必須だという声があります。

2020年から、小学校でプログラミング教育が始まります。子ども向けの初歩的なプログラミングソフトを使って教えるのかと思いますが、個人的には、子どもだからこそ本格的なプログラミングを教えるべきだと思います。

大人だから、プログラミングを難しく感じてしまうんです。子どもだから先入観なく取り組めるのであって、そういう時にこそ、本格的なプログラミングを教えるべきです。今は、「Swift Playgrounds」のように、ゲーム感覚で遊びながら、本格的なプログラミングを体験できますから。

また今は、自分が作ったアプリを、ネットを介して他の人と共有することができます。教室の中で何人かのお友だちだけに見てもらうのではなく、世界中の多くの人に見てもらえれば、褒められたり、改善点を教えてもらえたり、いろんな意見を聞くことができます。面白いものを作れば、良くも悪くも私みたいに世界中から注目されることもあります。ゲームアプリだったら、言葉は関係ありませんからね。

幼児教育と高等教育については、学校側は、志願者を待っているだけでは良い人材を獲得できない。キラリと光る子どもを見つけたら、年齢に関係なく自ら積極的にスカウトして、一流に育て上げるくらいの行動力が必要だと思います。

後編に続く)